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未来の移動体通信に2つのホットな話題、「ローカルエリアアクセス」と「デバイス間通信」無線通信技術 LTE-B

エリクソン・ジャパンが2012年8月30日に開催した報道機関向け技術説明会に同社CTOの藤岡雅宣氏が登壇し、LTE-Advancedに続く未来の移動体通信方式を考える上で重要な2つのキーワードを紹介した。

» 2012年08月31日 18時26分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 世界各地で導入が進みつつある最新の移動体通信方式であるLTEや、次世代規格であるLTE-Advanced――。さらにその先の移動体通信方式はどのような姿になるのか? エリクソン・ジャパンが2012年8月30日に開催した報道機関向け技術説明会で、その片りんが明らかになった。

 技術説明会に登壇した同社CTOの藤岡雅宣氏は、2012年6月に開催された「3GPP リリース12 ワークショップ」の内容を紹介しつつ、今後ホットになるであろうキーワードとして、「ローカルエリアアクセスの拡充・強化」、「デバイス間通信の導入」という2つを挙げた。

図 エリクソン・ジャパンのCTOを務める藤岡雅宣氏

パフォーマンス改善や新たな利用形態への対応

 「ローカルエリアアクセス」、「デバイス間通信」というキーワードの意義を理解するために、移動体通信方式の現状を押さえておこう。前述の通り、中国やインド、米国、欧州、日本などの世界各地でLTEを商用化する動きが加速している。規格としては、LTEの次世代に相当するLTE-Advanced(3GPP リリース10、およびリリース11)の仕様もほぼ固まりつつある。LTE-Advancedは、マルチアンテナの拡張やキャリアアグリゲーション、異種ネットワーク(ヘテロジニアスネットワーク)、基地局リレー機能、基地局間協調(CoMP)といったさまざまな手法を使い、データ通信の高速化や、基地局のカバー範囲の端部での安定化を進めていることが特徴だ。

図 LTEやLTE-Advancedの次の移動体無線方式について言及した

 このLTE-Advancedに続く、新たな移動体通信方式が「LTE-B」である。前述の藤岡氏は、「パフォーマンスの改善や機能拡充、新たな利用形態への対応といった観点でLTEは継続して進化する」と述べた。ローカルエリアアクセスや、デバイス間通信というキーワードが目指すのが、まさにパフォーマンスの改善や新たな利用形態への対応だ。

 まず、ローカルエリアアクセスとは、マクロセルがカバーする広い範囲に比べて、ごく狭い領域をカバーする通信システムのこと。このシステムの拡充・強化が必要な理由は、モバイル端末の利用者の急激な増加がある。モバイル端末の増加は、大多数の利用者が局地的に存在する場所(ローカルスポット)や、モバイルトラフィックが集中するホットスポットを生み出す。このようなローカルスポットやホットスポットのデータトラフィックを処理するには、ローカルエリアアクセスを拡充、強化することが不可欠になるというわけだ。

 異なる側面として、新たに移動体通信に割り当てられる周波数帯は3.4GHz以上の比較的高い周波数になるという点もある。周波数が高くなるほど波長が短くなるため、広いエリアをカバーするというより、狭い領域(ローカルエリア)をカバーするのに向く。

今後の移動体無線方式の進化のイメージ(左)と、2012年6月に開催された「3GPP リリース12 ワークショップ」における2つのホットな話題(右)

 ローカルエリアアクセスの拡充・強化を進める際に重要になるのが、「小セル技術」だ(関連記事“小さな基地局”、携帯インフラで大きな存在へ)。2012年6月の3GPP リリース12 ワークショップにおいても、小セル技術に関して、「マクロセルと小セルの周波数分割」、「小セルへの高周波数割り当て」、「マクロセルによる小セルのアシスト」といった技術内容が議論されたようだ。

 エリクソンは、ローカルエリアアクセスを拡充する手法として「Soft Cell」と呼ぶ基地局技術を提案している。これは、広いエリアをカバーするマクロセルと、これからの制御信号を受け取って動作する受動的なピコセルで構成したもの。ピコセルは、制御信号を受け取り動的に稼働することで、ローカルエリアのデータトラフィックの変動を吸収する。

図 2012年6月に開催された「3GPP リリース12 ワークショップ」の概要

デバイス間通信で、多種多様なデバイスに対応

 もう1つのデバイス間通信がホットな話題と語った理由は、今後現れるであろう多種多様な通信デバイスの存在がある。ここ最近注目が集まっているM2MやIoTといった市場領域の通信デバイスの特徴は、その多様性だ。コスト、遅延、信頼性、データ量、消費電力量といった観点で、さまざまな通信デバイスが市場に登場する見込みである。

 このような通信デバイスの急増に対応し、データをうまくハンドリングするには、基地局に端末がつながるという既存の構成だけではなく、ネットワーク支援という観点でデバイス間通信も必要になるという考えである。なお、ここでいうデバイス間通信とは、マルチホップでデータを端末から基地局に送るというシステムではなく、基地局からの制御信号を基に端末間が何らかのデータをやり取りするシステムを想定している。

移動体無線方式を進化させる上で考えるべき課題(左)と、デバイス間通信の導入イメージ(右)。

 ローカルエリアアクセスやデバイス間通信に関しては、「IEEE 802.11」や「IEEE 802.15.4」といった国際標準化の舞台で、さまざまな規格が策定されている。3GPPの移動体通信方式という枠組みで、ローカルエリアアクセスやデバイス間通信を扱う理由について藤岡氏は、電波法で割り当てられた周波数帯(ライセンスドバンド)を使うことで、高い品質のサービスを提供できると説明した。

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