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「A9」でも「A15」でもない? 「iPhone 5」のプロセッサコアはAppleが独自設計かビジネスニュース

アナリストによると、Appleの「iPhone 5」のプロセッサコアは、ARMの「Cortex-A9」や「Cortex-A15」ではなく、Appleが独自に設計したARMコア互換のプロセッサコアを集積している可能性があるという。

» 2012年09月28日 10時49分 公開
[Peter Clarke,EE Times]

 米国の市場調査会社であるThe Linley Groupで主席アナリストを務めるLinley Gwennap氏は、同社のWeb記事の中で「Appleの最新スマートフォン『iPhone 5』のプロセッサ『A6』は、ARMがライセンス供与する『Cortex-A15』ではなく、独自設計のARM互換プロセッサコアを集積している」という見解を示した。

 同氏の見解は、野村証券の市場調査部門が先日発表した報告書の内容と相反している。野村証券は、同報告書の中で「A6は、デュアルコアのCortex-A15を採用している。Samsung Electronicsが製造を請け負い、32nm世代の高誘電率膜/金属ゲート(HKMG:High-k/Metal Gate)プロセス技術を適用する」と記していた(関連ニュース)。

A6のダイ写真。配線層を捉えたところ。出典:UBM TechInsights

 Gwennap氏は、SamsungがA6の製造を担っている可能性については否定していない。ただし、「Appleは、ARMのアーキテクチャライセンスを取得することで、2008年に買収した組み込みプロセッサベンダーのP.A. Semiの技術を補完して、A6を独自設計した」と主張している点が野村証券の見解と異なっている(関連記事:「Appleの最新プロセッサ「A5」、倍増したチップ面積の謎に迫る(前編)」)。

 Gwennap氏は件の記事の中で、iPhone 5のアプリケーションをARMの新しい命令セットアーキテクチャ「ARMv7」向けにリコンパイルしなければならない点を指摘し、「この事実は、A6がカスタムプロセッサコアであるという私の見解を裏付けるものだ」と主張している。同氏は、「A6が『A5』と同じ『Cortex-A9』を採用していないことは確かだ」と述べている。

 ARMv7は、Cortex-A5/Cortex-A7/Cortex-A15と互換性があると伝えられているが、Gwennap氏は、「このことからも、A6がカスタムプロセッサである可能性が高いことが分かる」と述べている。

 Gwennap氏によれば、「A6はカスタムプロセッサであるが、Cortex-A15やQualcommの最新プロセッサ『Snapdragon(開発コード名:Krait)』とほぼ同等の性能を有している」という。Appleは、「iPhone 5は、A5を搭載する従来機『iPhone 4S』の2倍の性能を実現した」としている。「この情報から、A6には、クロック周波数が約1.2GHzのCPUがデュアルコア構成で集積されていると予想される」とGwennap氏は述べている。

 Qualcommは、ARMのアーキテクチャライセンスを取得しており、SnapdragonはCortex-A15と同等の性能を有している。SnapdragonはQualcommの独自設計プロセッサだが、ARMv7と互換性がある。

 Appleは2008年4月に、P.A. Semiを2億7800万米ドルの現金で買収した。ARMは、その直後に「“ある戦略的機器メーカー”との間で、アーキテクチャライセンスの契約を交わした」と発表している。当時、「ライセンシー(ライセンス利用者)はAppleではないか」とうわさされていた。

 Gwennap氏は、「Appleは2008年に、P.A. Semiを2つのプロジェクトに分割したと思われる。その2つとは、ARMからプロセッサコアのライセンス供与を受けて『A4』プロセッサを開発する“短期開発チーム”と、アーキテクチャライセンスを取得してA6を開発する“長期開発チーム”だと考えられる」と述べている。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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