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iPhone対Androidの特許係争、AppleとHTCの和解後もまだ続くビジネスニュース

Appleは台湾のHTCと、スマートフォン関連の特許のクロスライセンス契約を結んだ。だが、ある2人の専門家は、「MotorolaやSamsungといったAndroidメーカーとAppleの特許係争が終結に向かうことを示すものではない」との見解を示しているという。

» 2012年11月15日 12時11分 公開
[Rick Merritt,EE Times]

 2012年11月10日、AppleはHTCと、「現在係争中のすべての訴訟を取り下げ、10年間のライセンス契約を結ぶことで全面的に和解した」と発表した。ただし、和解の詳細については明らかにしていない。2010年3月2日、AppleがHTCに対して特許侵害の訴訟を起こしたことは、その後の一連の携帯電話の特許訴訟の引き金となった。最終的には、訴訟と対抗訴訟は100件を超えるまでになっていた。

 今回の和解は、Appleの法的戦術が訴訟からライセンス許可に移行したことを示している。業界の観測筋は、「こうした動きは、訴訟への嫌悪を公の場でたびたび示してきたAppleのCEO(最高経営責任者)であるTim Cook氏の方針に沿ったものだ」とみている。Appleの共同創始者である故Steve Jobs氏は、Androidスマートフォンを“iPhoneの模造品”だと主張し、Androidスマートフォンメーカーに対して「核戦争を仕掛ける」とまで宣言していた。

 報道では、Appleは今回の和解により、HTCが販売する端末1台につき約7米ドルを受け取るとしている。年間で最大2億8000万米ドルもの利益を得ることができると推測されている。

 ただし、2年半にわたったAppleとHTCの特許係争に密着してきた2人の専門家は、Appleが、HTCよりも規模の大きい競合先とも同様のライセンス契約を結ぶことについては懐疑的だ。専門家らは、HTCの市場シェアが最近大きく落ち込んでいることや、HTCがライセンス契約に以前より前向きになっており、Microsoftとも同様の契約を結んだことに言及している。

 米スタンフォード大学法科大学院で教授を務めるMark Lemley氏は、「今回の和解は、スマートフォン関連の特許係争を緩和するよいきっかけになるだろう。今後は、訴訟や対抗訴訟を繰り返すのではなく、早々に和解するケースが増えるかもしれない」と述べた。

 さらにLemley氏は、EE Timesとの電子メールのやり取りの中で、「HTCは、Appleに対して特許訴訟を起こしたものの、メーカーとしての規模は小さい。Appleにとっては、Samsung ElectronicsやMotorola Mobilityの方が“争うべき相手”なのだろう」との見解を示している。

 実際に、2012年8月、米カリフォルニア州サンノゼの陪審員団は、「Samsungの多くの携帯端末がAppleの意匠特許および実用特許を侵害している」という判決を下し、Appleは10億5000万米ドルの損害賠償を受け取るという画期的な勝利を収めた。

 携帯端末の特許係争に密着してきたブロガーのFlorian Mueller氏は、「近い将来、もしAppleがAndroidスマートフォンメーカーとさらにライセンス契約を結んだら、その時こそ、『Appleは、Jobs氏の時代よりもライセンス契約を優先するようになった』とみなすことができるだろう」と述べている。

【翻訳:平塚弥生、編集:EE Times Japan】

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