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» 2012年11月20日 13時42分 UPDATE

ISSCC 2013 プレビュー:日の丸半導体の先行開発は脱・民生へ、“半導体のオリンピック”概要が公開

半導体回路技術で世界の企業・研究機関がトップ性能を競う国際会議「ISSCC」。2013年3月に開催される「ISSCC 2013」の概要が明らかになった。日本は国・地域別の論文採択数で米国に次ぐ第2位に返り咲いた。日本からの採択論文の内容を見ると、先端領域の研究開発で“脱・民生アプリケーション”を探る傾向がある。

[薩川格広,EE Times Japan]
60周年を記念

 半導体集積回路技術の国際会議「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)」は、2012年11月19日に東京都内で記者会見を開催し、2013年2月17〜21日に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催する「ISSCC 2013」の概要を発表した。さらに同日(米国時間)、事前プログラム(Advance Program)もWebサイトで公開した(PDFファイル)。

 ISSCCは、「半導体集積回路技術の分野で最も権威ある国際学会」(ISSCC 2013のFar East Chairを務める東京大学 大規模集積システム設計教育研究センターの池田誠氏)であり、今回で第60回目の節目を迎える。アナログやミックスドシグナル、無線/有線通信、高性能デジタル、メモリ、イメージセンサーといった10前後の分野それぞれにおいて、世界の企業や研究機関がトップの性能を競うことや、毎年、世界の地域別の採択論文数が話題になることなどから、「半導体のオリンピックとも呼ばれている」(ISSCC委員)。

会見の様子 東京都内で2012年11月19日に開催した記者会見の様子である。ISSCCのInternational Technical Program CommitteeのFar East Regional Subcommitteeのメンバーが「ISSCC 2013」の概要や注目論文について説明した。

地域別ではアジアの勢いがさらに拡大、欧州は減速

 ISSCC 2013の投稿論文数は629件と、前回(ISSCC 2012)の628件と変わらない。採択論文数も209件で前回の202件とほぼ同じである。採択率は33.2%で、前回の32.2%と同水準を維持しており、「論文の質を保っている」(ISSCC Far East Vice Chairで岡山県立大学 情報工学部情報システム工学科の教授を務める有本和民氏)。

 地域別の採択論文数は、アジア地域(Far East)の企業や研究機関を筆頭著者とする論文が84件で全体の40%を占め首位に立った。アジア地域は前回、73件(全体の36%)の採択論文を出し、ISSCCの発足以来ずっと首位を堅持してきた米州(Americas、実質的には北米)を逆転しており、今回はその勢いをさらに拡大した形である(参考記事:「ある意味、事件だ」 ―― “半導体のオリンピック”でアジア勢がアメリカを逆転)。今回は米州が74件(36%)で、前回の68件(34%)から微増しており、その分、欧州が51件(24%)で前回の61件(30%)から減らしている。

ISSCC_2013_Tokyo_Press_Fig01.jpgISSCC_2013_Tokyo_Press_Fig02.jpg 左の図はISSCCの論文数とその推移を示している。採択率は常に30%台で、投稿者にとっては狭き門である。右の図は3つの地域(欧州、米州(図中では北米と表記)、アジア)別の採択論文数とその推移。出典:ISSCC (クリックで画像を拡大)

日本が採択論文数で第2位に返り咲く

 このアジア勢の拡大に特に貢献したのは日本である。国・地域別の採択論文数で30件を記録し、米国の73件に次ぐ第2位につけた。前回は米国が65件、韓国が30件、日本が25件という順番で、日本は第3位に転落していたが、今回は定位置に返り咲いた。

 「日本の半導体産業は今、事業運営の観点では苦境にあり、ISSCCの採択論文数で見ても一時、企業の力は低下していた。しかし、“次”に向けた研究開発は進んでおり、国家プロジェクトや産学連携のプロジェクトで取り組んだ研究開発の成果が見えてきたところだ。日本からの採択論文数が今後も増えていくのを期待したい」(有本氏)。

ISSCC_2013_Tokyo_Press_Fig03.jpgISSCC_2013_Tokyo_Press_Fig04.jpg 左の図は国・地域別の採択論文数である。各国・地域の直後に表記された数字(例えばJapanは30)がISSCC 2013の実績値で、その横のかっこ内に表記された3つの数字が、左から順番にISSCC 2012、同2011、同2010の実績値を示している(例えばJapanは25/24/31)。右の図は、日本と米国、韓国それぞれの論文の採択件数と採択率の推移である。出典:ISSCC (クリックで画像を拡大)
ISSCC_2013_Tokyo_Press_Fig05.jpgISSCC_2013_Tokyo_Press_Fig06.jpg 左の図は組織別の採択論文数。韓国のKorea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)が前回に続いてトップに立つ。前回にKAISTと同数でトップだったIntelは今回、上位から姿を消した。日本勢は上位20組織に5組織がランクインしている。右の図は、ISSCC 2013の分野別採択論文数。かっこ内の数字は前回(ISSCC 2012)の実績値であり、それほど大きな変化は見られない。出典:ISSCC (クリックで画像を拡大)

日本の先行開発は脱・民生へ

 日本からの採択論文である30件の内容を見ると、「その応用分野が、これまで日本の企業が強かった消費者向け民生機器から他の分野へと、シフトし始めている。企業は“次”の事業領域を探っており、これからは今回の成果をいかに事業化するかというステップに進んでいく」(有本氏)という。

 具体的には、クラウドコンピューティングの普及でデータ伝送速度の向上が急務になっている基幹系システムを想定した有線通信技術や、ビッグデータ時代のセンサーネットワークに向けた有線/無線通信技術、それらを高いエネルギー効率で実装するために不可欠な自律的なエネルギー制御技術などを有本氏は挙げている。

 例えば有線通信技術の領域では、富士通研究所がバックプレーン伝送用に28nm世代のCMOS技術で製造した32Gビット/秒の受信チップを発表(講演番号は2.5)する他、日立製作所がボード間の光インタフェースの受信部に向けて65nm世代のCMOS技術を適用し、25〜28Gビット/秒対応の高感度TIA(トランスインピーダンスアンプ)を4チャネル作り込んだチップを発表(講演番号は7.2)する。

日本企業の論文の例 この他に日本の企業が発表する論文の例である。さらに今回は、基調講演に日本からパナソニックの常務取締役でCTO(最高技術責任者)を務める宮部義幸氏が登壇し、「Smart Life Solutions from Home to Cities(家庭から街までスマート生活に向けた解決策)」と題して講演する。出典:ISSCC

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