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HDDの記憶容量が5倍に、米大学が磁性材料を使わない新技術を開発メモリ/ストレージ技術

DSA(誘導自己組織化)は、半導体製造プロセスにおいて光リソグラフィに代わるパターニング手法として注目を集めている技術である。このDSA技術を応用することにより、米大学の研究グループが、HDDの記憶容量を従来の5倍に高めることに成功した。

» 2012年11月30日 13時00分 公開
[Dylan McGrath,EE Times]

 米University of Texas at Austin(UT Austin)の研究グループは2012年11月、ブロック共重合体のDSA(Directed Self-Assembly:誘導自己組織化)を用いることで、HDDの記憶容量を従来の5倍に高めることを可能にする新技術を開発したと発表した。

 通常、HDDでは、金属/ガラス表面上の磁気ドットによって0、1のデジタル情報を記録する。しかしUT Austinの研究グループによれば、「この手法は記憶容量の面では既に限界に近づいている」という。より多くのドットをさらに高い密度で配置すると、隣接するドットが相互に磁場の影響を受けてしまうからだ。

University of Texas at Austinで化学エンジニアリングを学ぶ大学生、Leon Dean氏。今回の研究チームの一員だ。

 UT Austin研究グループのC. Grant Willson氏は、「現在の技術で実現できる記憶容量は、1平方インチ当たりで約1テラビットのレベルだ」と述べている。それに対し、磁性材料を使わずにドットを相互に分離することができれば、安定性を損なうことなく高密度化を実現することが可能になる。同研究グループによれば、「ディスクの表面上にブロック共重合体の膜を形成して適切な刺激を与えると、自己組織化により、室温下において極めて規則正しいドット/ラインパターンを形成することができる。膜を形成する表面上にあらかじめ何らかのエッチング処理を施しておけば、HDDに必要なドット/ラインパターンを正確に形成できるはずだ」という。

世界最小のドットを高速に形成

 DSAは、もともと米University of Wisconsinと米Massachusetts Institute of Technology(MIT)が開発したものだ。この技術をベースとし、UT Austinは今回の研究成果を得た。現在の半導体業界では、波長が193nmのレーザーを使った光リソグラフィが主流の技術として用いられている。DSAは、一部の用途において、この光リソグラフィ技術を置き換えることができる有望な技術として、少なくとも過去2年間にわたって検討が進められてきた。

 Willson氏によると、UT Austinの研究チームが研究に着手した当初、一般的には、DSAを使えば、HDDの記録密度を2倍に高めることができるとされていた。しかし同チームは、ドットを縮小してさらなる高密度化を進めるとともに、高い生産性をも実現する手法を開発するに至ったという。

 UT Austinの研究チームは、自己組織化によって世界最小規模のドットを形成可能なブロック共重合体の合成に成功した。また、ある条件下では、わずか1分間足らずで正確かつ高密度なパターンを形成できる技術も開発した。さらに、ブロック共重合体用の特殊なトップコート処理も開発した。自己組織化が行われている最中に熱を加えるだけで、このトップコートがブロック共重合体を覆い、表面上での正確な配列が可能になるものだという。

開発したトップコートを塗布した場合と、塗布しなかった場合(右上)において、ブロック共重合体の配列を比較している。どちらも、210℃に熱したホットプレートの上で1分間、加熱して自己組織化を行った。ホットプレートにふたはしていない。 出典:University of Texas at Austin

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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