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» 2012年12月17日 15時20分 UPDATE

無線通信技術 ミリ波:スマホ内蔵向けの製品化は「業界初」、HD映像の無線送信LSIを米社が投入

スマートフォンに格納したHDコンテンツをテレビに無線で伝送して楽しむ――。そんな視聴スタイルを実現する「WirelessHD」規格対応の60GHz無線送信チップをSilicon Imageが製品化した。同規格に対応する無線チップは既にテレビなど据え置き型機器用が製品化されているが、モバイル機器向けは「業界初だ」という。

[鈴木啓一,EE Times Japan]

 画像インタフェース技術を手掛ける米国の半導体ベンダーSilicon Image(シリコンイメージ)は2012年12月14日、東京都内で報道関係者向け説明会を開催し、「WirelessHD」規格に対応する無線送信LSIの新製品「UltraGig 6400」の実動デモを披露した。WirelessHDは、60GHz帯を使ってハイビジョン(HD)映像を非圧縮伝送する無線通信方式の1つ。新製品はスマートフォンやタブレットPCへの内蔵に向けたもので、同規格対応の無線送信LSIとしては「業界初だ」(同社)という。

WirelessHD対応の60GHz無線送信LSI「UltraGig 6400」 WirelessHD対応の60GHz無線送信LSI「UltraGig 6400」を実装したモジュールである。(クリックで画像を拡大)
コンテンツ送信側の構成 実動デモで使った、コンテンツ送信側の構成である。Amazon Kindle Fire HDと WirelessHD 送信ユニットの試作機を組み合わせた。(クリックで画像を拡大)

WirelessHD 1.1準拠でフルHDコンテンツに対応

 UltraGig 6400は、WirelessHD 1.1準拠の無線送信LSIで、1080pのフルHD解像度をサポートする。スマートフォンやタブレットPCなどのモバイル機器に格納したHDコンテンツを60GHz帯の無線で送信し、WirelessHD対応のテレビで受信して視聴するシステムを構築することが可能だ。すなわち、有線接続用のHDMIケーブルを置き換えるような使い方ができる。

報道関係者向け説明会の様子 報道関係者向け説明会の様子である。Silicon Imageのプロダクトマーケティング副社長でワイヤレス部門副社長・事業部長を務めるTim Vehling氏が登壇した。(クリックで画像を拡大)

 WirelessHDは60GHz帯を利用するので、2.4GHzや5GHz帯を使う無線LANとは互いに干渉せず、共存が可能である。さらに60GHzの無線はコンクリートの壁を通さないので複数のユーザーが部屋ごとに別々のビデオコンテンツを楽しむ使い方にも向く。また、UltraGig 6400はアンテナアレイを内蔵しており、それを活用して電波の指向性を制御するビームフォーミングが可能だ。これにより、同じ部屋の中で複数のWirelessHDの電波を共存させることもできる。一方、無線LANは部屋をまたぎ、家中でインターネット接続を共有するような使い方に親和性が高い。従って、WirelessHDと無線LANは「すみ分けができる」(同社)という。

 Silicon Imageによれば、UltraGig 6400はスマートフォンやタブレットPCに加えて、携帯型ゲーム機にも応用が可能だという。「端末操作から表示までの遅延時間(レイテンシ)が5ms以下と、アクション系のゲームにも十分耐えられる」(同社)。

フルHDのゲーム画面 フルHDのゲーム画面。WirelessHDの信号を受信し、HDMI経由でテレビに表示している。(クリックで画像を拡大)

microSDより小型のパッケージに無線HD伝送の機能を統合

 UltraGig 6400は寸法が10×7mmの小型パッケージ封止で、microSD規格のメモリカードよりも小さい。このサイズに、高周波回路やベースバンド処理回路をはじめとする、無線送信用の主要な機能を統合した。さらに、パッケージ内にアンテナアレイも実装済みだ。外部に別途アンテナを接続する必要がないため、60GHz帯のアンテナ設計のノウハウがない機器メーカーでも取り扱えるという。ただし、機器内部における送信LSIのレイアウトやシールドに関しては、機器の設計時に配慮が必要だという。

WirelessHD送信ユニットの試作機 送信ユニットの試作機である。「UltraGig 6400」は基板の左下に実装されている。(クリックで画像を拡大)

 UltraGig 6400は、もともとはSilicon Imageが2011年に買収したSiBEAMが開発を手掛けていたものだ(参考記事)。標準的なCMOSプロセスで製造する。また、消費電力を500mW以下に抑えており、「スマートフォンに搭載されている液晶パネルやWi-Fiモジュールよりも電力消費が小さい」(Silicon Image)という。

 さらにUltraGig 6400は、MHL(Mobile High definition Link) 2.0準拠の高速ビデオインタフェースを搭載しており、無線伝送するHD映像コンテンツのソースとの接続に使用できる。また、一般的なモバイルアプリケーションプロセッサ向けのビデオおよび制御のインタフェースも備える。

 Silicon ImageはすでにUltraGig 6400を機器メーカーに向けてサンプル出荷しており、2013年の夏には量産に入る予定だ。UltraGig 6400を内蔵した機器は、早ければ2013年の後半から年末にかけて市場に登場する見込みだという。

WirelessHDの普及に向けて

 Silicon Imageは、HDMIやMHLの規格策定や普及促進の中心になってきた企業として知られるが、さらに昨年SiBEAMを買収し、WirelessHDのような無線伝送のエリアにまで進出し注目を集めている。WirelessHDとよく似た無線通信規格にはIntelなどが主体となって標準化を推進する「Wireless Gigabit Alliance(WiGig)」があり、Silicon ImageはWiGigにも積極的に関与している。

 今回この説明会のために来日したSilicon Imageのプロダクトマーケティング副社長でワイヤレス部門副社長・事業部長を務めるTim Vehling氏によると、同社は両規格に積極的に関与しているが、現時点で市場のニーズが顕在化しているのはHDビデオの伝送と考えていて、WiGigが目指すコンピュータネットワークよりも優先して半導体チップの製品化を進めているという。

 WirelessHDに対応した機器はまだ市場に出始めたばかりで、例えばシャープの送受信アダプタや、エプソンのプロジェクタ、DELLのノートPCなどの製品化事例がある。今後の普及について、同氏は、まずスマートフォンメーカーにUltraGig 6400のような対応モジュールの搭載を呼び掛けていくという。もう一方のテレビ側については、WirelessHD機能を内蔵しなくても、外付けのアダプタで受信機能を実現させることができるメリットを生かし、テレビメーカーが市場でのニーズの高まりを確認してから徐々にモジュールの内蔵が進むことを想定しているという。

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