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「失敗が約束された地」への希望なき出発……海外出張は攻撃的に準備する「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(12)(2/5 ページ)

» 2013年01月15日 07時00分 公開
[江端智一,EE Times Japan]

海外出張における3つの信念

 こんにちは。江端智一です。

 今回は、海外出張の準備についてお話したいと思います。

 私は「海外出張の準備=トラブル回避の実行手段」と位置付けます。すなわち、周到な準備こそが、海外出張におけるトラブルを回避する、というわけです。

 さて、海外出張における私の信念(信仰といってもいいかも)は、次の3つです。

(1)誰も信じてはならず、何も信じてはならない
(2)どこにいようと、何をしてようと、必ずトラブルに遭遇する
(3)遭遇したトラブルを完璧にリカバー(回復)する手段はない

 この信念から導かれる、海外出張準備のポリシーは以下の通りです。

■トラブルによる被害を最小限にとどめるため、考え得る最大限の準備をしておく
■それでもなお、完璧なトラブル回避は不可能である
■トラブルに遭った場合の初動方針は、「逃げて、逃げて、逃げまくる」である
■トラブルシューティングは、自分の身柄の安全を確保してから開始する

 今回、私が申し上げる「準備」とは、いわゆる「海外旅行前チェックリスト」などという甘っちょろいものではありません。

 言うなれば、「英語に愛されないエンジニア」に特化した、「攻撃的かつ戦略的な海外出張準備」の提案です。

海外出張のトラブル、あるある大事典

 では、以下、海外出張におけるトラブルを、私が体験した具体的な事例で説明します。

資料は先方に届きません

写真はイメージです

<トラブル事例>

 資料作成方法については、連載を2回分も使って説明しましたので、ここでは繰り返しません。海外出張に先立って、電子メールで先方に資料を送付する場合が多いと思います。しかし、意外に知られていませんが、電子メールプロトコル(SMTP)は、電子メールの到達を「保証していません」(RFC5321)し、途中で電子メールがロストしても、それを知らせる手段も規定されていません。

<準備しておくこと>

 海外の相手先とそれ以外の関係者にも、資料を確実に転送しておくことです。海外の取引会社に資料をメールで送付する場合、暗号化して送付するのはもちろんですが、相手先から「受領した」と記載されたメールを送り返してもらうことが肝要です。「受け取っていない」と言わせないために、その返信メールを印刷したものを持っていくことも忘れないでください。

必ず忘れ物をします

<トラブル事例>

 フライト前日のパッキングは、トラブルを発生させるだけの行為です。準備する資料、持っていく物品が、1つも忘れることなくフライト数時間前に準備できたとしたら、それは「奇跡」です。前々日であれば、足りない荷物、見落としていた手続き、準備していなかった書類などを準備することがでますが、前日では、もう対応しようがありません。

 そして、海外においては、その「たった1つの忘れもの」が致命的なトラブルになります。

<準備しておくこと>

 持ち物リストを作成して、とにかく前々日までに、荷物をキャリーバックなどに突っ込んでおくことが必要です。携帯電話やPCも、コンセントから引き抜いた電源ケーブルごとキャリーバックの中にたたき込み、必ず前々日には、そのキャリーバッグを手荷物の中に突っ込んでおいてください。一度パッキングを始めれば、忘れ物に気がつくことは結構多いものです。

 そして、言うまでもなく、荷物の量は最小限にすることです。機内持ち込みだけにできれば言うことなしです。下着、靴下、ワイシャツなどは、2日分あれば十分です。そんなものは、バスタブに突っ込んで、せっけんで洗って干しておけばよいのです。

 2日あれば、ホテルの中でも乾きます。プライベート用の服を持っていく必要はありません。私は、スーツで歓楽街を歩いていて、叱られたことは一度もありません(目立ちますが)。

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