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» 2013年02月19日 09時00分 UPDATE

いまどきエンジニアの育て方(20):育てる環境は、「意識して」作る (1/2)

「終身雇用」や「年功序列」に代表される、日本企業独特の“体質”は、実は、若手を育てる環境が自然に形成される源でもありました。「上が下を教える」という体制が、当然のように出来上がっていたからです。エンジニアを取り巻く環境が著しく変化した今、若手を育てる環境は、上司やベテラン世代が先頭に立ち、「意識的に」作るしかありません。

[世古雅人,カレンコンサルティング]

「いまどきエンジニアの育て方」連載一覧

 「キャリアデザインを考える3つの質問」を紹介した第19回では、「『(将来)やりたいことは何ですか?』という質問には、すぐに答えられないエンジニアが多い」という話をしました。すぐに答えが返ってくる人の回答は、大きく2つに分かれます。「自分が開発した製品をベストセラーにしたい!」のように“製品そのもの”に対する目標と、「大規模製品開発のプロジェクトマネジャーになりたい!」という“ポジション”に対する目標です。そもそも、質問が漠然としていてよくない上に、時間軸の捉え方も人それぞれなので、短期的に「VHDLやVerilog-HDLを学び、FPGA設計のプロフェッショナルになりたい」という人もいます。

 ですが、どんな答えであろうと、若手から「こうなりたい!」という声を聞くことは上司からすれば嬉しいものです。上司が部下のキャリアを考えるときに、“参考データ”として頭に入れておくとよいでしょう。

 さて、「自分のやりたいことが即答できない」ということに関しては、15年前のエンジニアも今のエンジニアも大差ありません。ですが、エンジニアを取り巻く環境はこの十数年で大きく様変わりしました。

「やりたいこと」を言わない

 いま一度、ゆとり世代の特徴をおさらいしてみましょう。

 表1をご覧ください。この内容はあくまでも一般論で、エンジニアに限定したものではありません。

mm130219_imadoki20_fig1.jpg 表1 ゆとり世代の特徴(クリックで拡大)

 本コラムの主人公、入社2年目のエンジニアである佐々木さんは、表1の「答えをすぐに求めたがる」「チャレンジしたがらない」タイプに当たり、特に後者の特徴が顕著に表れていました(第2回第5回第6回第7回参照)。その理由は、表1に示すように、「楽して成果を上げたいと思っている」こともありますが、「失敗を極度に恐れる」ことに集約されると考えます。

 「何をしたいか分からない」のではなく、「やりたいことがあるのだけれども、失敗したくないから、分からないと答えてしまう=やりたいことを言わない」。これが、今の若手エンジニアの本質的な課題ではないかと筆者は推測しています。

 上司からすれば、そんな若手は“やる気のないヤツ”のように見えるかもしれません。だからといって、そのまま放置しておくわけにもいかないので、上司は、第6回で紹介したように「まずはバッターボックスに若手を立たせる」、すなわち、モチベーションが生まれるような場を与えることが重要になります。

 上司と部下がお互いに意思疎通ができていないまま、何となく仕事が進む――。この、「何とも言えないぎくしゃく感」の上に成り立っている上司と部下の関係はかなり不安定なものですが、その“ぎくしゃく感”を解決するために深く踏み込もうとする人は誰もいない。これが今の開発現場の実態ではないでしょうか。

 さて、OJT(On the Job Training)についても、もう一度振り返ってみましょう。開発の田中課長とマーケティング部の松田課長が雑談しています。

昔は、自然に人が育つ環境があった

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僕が入社した頃はバブルの最後に差し掛かっていて、今思えば良き時代だったのかもしれないな。日本中が好景気で浮かれていたし。


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そんなこと言ったら、今の若者に恨まれますよ(笑)。バブル時代、僕はまだ大学生で、就職氷河期と言われた最初の世代なんです。


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それは失敬!そっか、僕とは3年違うもんな(第1回 図1参照)。いやなにね、我々、40代半ば以降の世代が若手の頃は、今のようにOJTという言葉をあまり聞かなかったなと思ってね。


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昔はこんな感じじゃなかったですか?(と、図1のような絵を描いて見せました)


mm130219_imadoki20_fig2.jpg 図1 上司が育ってきた職場環境
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そうそう! “終身雇用”と“年功序列”によって「上が下を教える徒弟制度」的なものが自然に出来上がっていて、確かに“ベタな人間関係”というのもあったなぁ。仕事が終わった後で一杯やりながら“長い時間を共有”して、時には上司の説教も聞かされたしな。


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そういう場で開発の苦労話、成功談・失敗談を聞くんですよね。あれが大変だったとか、こう乗り切ったとか、時には上司の自慢話を若手が聞かされることで、「人が育つ環境が形成されていった」のではないでしょうか?


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今はOJTって難しい言葉を使うけど、当時、僕らが上司や先輩から受けたことはOJTそのもののような気がするなぁ。


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ごく自然にOJTらしきものが出来上がっていたのかもしれないですね。


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そうかもしれない。かなり癖のある先輩エンジニアもいて、いちいち口やかましいことも言われたけど、手本になったし、「お前これやってみろ!」と任せてくれることは嬉しかったなぁ。


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「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」と「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」というところですかね。


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山本五十六の語録じゃないけど、ほんと、そう思うよ。


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問題は、今の上司・先輩側には、山本五十六のような手本を示す時間が無い、そして部下側は骨がない、打てど響かず、といったところでしょうか……?


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