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直流電圧から直接電力を無線給電、村田製作所が「直流共鳴方式」で効率を向上ワイヤレス給電技術 共鳴方式

村田製作所は、新しいワイヤレス給電技術「直流共鳴方式」を開発した。共鳴現象を利用するという点では従来の技術と同様だが、直流電圧を高周波交流電圧に変換せずに電力を伝送できるため、電力伝送効率が向上するという。

» 2013年03月29日 17時32分 公開
[EE Times Japan]
Murata

 村田製作所は2013年3月、ワイヤレス給電の新しい技術として「直流共鳴(Direct Current Resonance)方式」を開発したと発表した。共鳴現象を活用して電力を送る方式は従来より存在していたが、これまでと異なるのは、直流電圧から直接、電力を送るという点だ。従来は、電力を伝送する際に、直流電圧から高周波交流電圧に変換する必要があり、ここで大きな電力損失が発生していた。直流共鳴方式は、この電力損失の要因となっていた電力変換を行う必要がないため、電力伝送効率を向上させられるという。

 また、送受電デバイスや共鳴デバイスを工夫して共鳴する空間を拡大すれば、複数の負荷への給電も可能だとしている。

 主なワイヤレス給電方式には、共鳴方式、電磁誘導方式、無線電波方式などがある。今回開発した直流共鳴方式は、

  • 共鳴方式に比べて構成がシンプルで、小型で軽量のシステムを実現できる
  • 電磁誘導方式に比べて、送電/受電の位置合わせの自由度が高く、送電/受電コイルに用いる重い磁性体(鉄)や巻き線(銅)を不要にできる
  • 無線電波方式に比べて、伝送電力が大きく、送電装置や送受電デバイスを小型にできる

といった特徴がある。ただし、村田製作所によると、「現時点では、直流共鳴方式による伝送効率や伝送可能距離について、具体的な数値は公開していない」という。

「直流共鳴方式」と現行方式の違い(クリックで拡大) 出典:村田製作所

 村田製作所は、直流共鳴方式の技術を、スマートフォンやタブレット端末をはじめ、電池で駆動する小型の電子機器や通信カードなどに適用した考え。一方、電気自動車のワイヤレス給電装置など、送電電力の大きい用途については、オープンイノベーションなどを活用した技術支援やライセンス提供による対応を検討中である。

 同社は、2010年7月に、電界結合方式を使ったワイヤレス給電システムを発表(関連記事:iPad向けを目下開発中、村田が電界結合方式のワイヤレス給電を事業化)。同システムは、2011年11月に日立マクセルが発売した「iPad 2」向けワイヤレス給電セット「エアボルテージ for iPad 2」に採用されている(「ぽんと置いてiPad2を手軽に充電」、村田製作所がワイヤレス給電モジュールを製品化)。

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