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» 2013年05月17日 16時18分 UPDATE

ビジネスニュース 企業動向:「AppleやSamsungは狙わない」、u-bloxが語るベースバンドIC事業を成功させる鍵

無線通信モジュールを手掛けるu-bloxは現在、モジュールに搭載するLTE対応ベースバンドICの開発も進めている。ST-Ericssonやルネサス モバイルが苦戦してきたベースバンドIC事業だが、u-bloxは成功させる自信があるという。

[村尾麻悠子,EE Times Japan]
u-blox

 GPSや無線モジュールを手掛けるスイスのu-bloxは、無線モジュールに搭載するLTE対応ベースバンドICの開発を加速している。同ICを搭載した第4世代(4G)通信向けの無線モジュールは、2014年末から2015年初頭にかけて製品化される見込みだ。

 u-bloxは2009年に無線通信モジュール市場に参入した。現在、第2世代(2G)/第3世代(3G)に対応した無線通信モジュールを販売している。u-bloxのWireless Chipset事業部でバイスプレジデントを務めるCharles Sturman氏によると、「できるだけ早く無線モジュールを市場に投入したかったこともあり、これらの製品のベースバンドICには他社のものを採用した」という。だが、外部調達のベースバンドICでは、より細かい要求に応えたり、技術的なサポートを充実させたりすることが難しい場合がある。そのため、4G用無線通信モジュールからは、ベースバンドICも自社で設計する方針に変えた。

mm130514_ublox_fig1.jpg 3.5G(HSDPA)対応のトライバンド無線通信モジュール「LUCY-H100/H200」(クリックで拡大)

 ただし、ベースバンドICの開発はかなりの困難が伴う。Sturman氏は、「ベースバンドICの設計はとにかく複雑だ。50〜100人のエンジニアを投入しても、設計の完了までに2〜3年はかかる。2G/3G/4Gに対応するマルチモードのベースバンドICとなるとなおさら複雑になるので、さらに時間と人手がかかる」と説明する。

 大手のST-Ericssonやルネサス モバイルが苦戦を強いられ、ST-Ericssonは合弁解消に、ルネサス モバイルは売却を含めたベースバンド事業の見直しの検討に入っていることは記憶に新しい*1)

*1)関連記事1:“足かせ”だったST-Ericsson、親会社が解消に合意
   関連記事2:「Qualcommと肩を並べる」はずだったルネサス モバイル、事業売却へ

 一方で、スマートフォンとタブレット端末の急速な普及に支えられ、業績を堅調に伸ばしているQualcommのようなベースバンドICメーカーもある(関連記事:Qualcommの強さ際立つスマホ向けプロセッサ市場、Intelのシェアは0.2%)。

 このように業績が二極化し、大手でなければ勝ち残れないようにもみえるベースバンドIC業界で、u-bloxはどのような戦略を考えているのか。

 その鍵が「非民生用途を狙うこと」だという。Sturman氏は、「Samsung ElectronicsなどにベースバンドICを供給するには、年間数億個ものチップを供給できる体制が必要になる。出荷数が多くなる分、ビジネスチャンスとしては大きいかもしれないが、リスクは高い。Samsungが設計を変えて他社のチップを採用すると決めた場合、何百人ものエンジニアを投入し、数年かけて開発してきたものが一瞬で無意味になる可能性もある。ST-Ericssonやルネサス モバイルは、そのようにリスクが高い分野を狙っていたので、失敗したときの代償が大きかった」と述べる。

mm130514_ublox.jpg u-bloxのWireless Chipset事業部でバイスプレジデントを務めるCharles Sturman氏

 「その点、われわれがターゲットとしている非民生用途、特にM2M通信分野は、スマートフォンやタブレット端末に比べれば市場が小さいため、そのようなリスクは少ない。さらに、2009年に無線通信モジュール市場に参入して以来、着実に実績を積んできたという自負がある。実際、業績は右肩上がりで、年成長率は10%を超える。この4年間で獲得した顧客資産があるので、自社開発したベースバンドICを搭載した4G対応の無線通信モジュールを売りやすいという背景もある」(Sturman氏)。

M2M向けのLTEにも、ソフトウェアで対応できる強み

 携帯電話通信の標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、M2M向けのLTE規格の策定が始まっている。この規格では、低ビットレートのM2Mに最適化された、さらなる低消費電力と低価格の製品が求められる。

 Sturman氏は、「当社はここにもビジネスチャンスを見いだしている。M2M向けのLTEは、携帯電話向けのLTEとはまったく異なる規格だが、われわれは4G通信用のソフトウェア開発にも強みを持っているので*2)、ソフトウェアモデムでM2M向けと携帯電話向けの両方のLTEをカバーすることが可能だ。スマートフォンやタブレット端末だけを対象としているベースバンドIC/モジュールメーカーは、おそらくM2M向けのLTEまではすぐには手が回らないだろう。当社がシェアを拡大するチャンスになる」と強調した。

*2)u-bloxは2012年4月に、4G通信用のソフトウェアとテストソリューションを開発していた「4M Wireless」を買収している。

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