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スマホと人工すい臓をBluetoothで接続、糖尿病の低価格治療に光明無線通信技術 Bluetooth(1/2 ページ)

英国の大学が、人工すい臓とスマートフォン/タブレット端末をBluetoothで接続するシステムの開発に取り組んでいる。血糖値モニターやインスリンポンプと併用し、糖尿病の治療を行うためのもので、低価格な治療システムを実現できると期待されている。

» 2013年07月05日 12時15分 公開
[Rick Merritt,EE Times Japan]

 英国のケンブリッジ大学(University of Cambridge)の研究チームが、Bluetoothを介してスマートフォンやタブレット端末につながる人工すい臓の開発に取り組んでいる。低価格の自宅治療システムを実現できると期待されている。

 血糖値を測る「連続式グルコースモニター」や、インスリンを投与する「インスリンポンプ」は、複数のメーカーから販売されている。しかし、この2つの装置を接続し、測定された血糖値に基づいてリアルタイムにインスリンを自動投与するシステムは、まだ実現していない。

 その実現に向けて、世界中で十数もの研究グループが、鍵となるアルゴリズムの開発に取り組んでいる。こうしたシステムを適用した治験は、従来は20〜30人の患者に対して一晩実施されていたが、現在はほとんどの研究施設が、数百人の患者に対して数週間にわたる治験を実施できる体制を整えている。

 英国の技術コンサルティング会社であるCambridge Consultantsで、診断・生命科学部門のコマーシャルディレクタを務めるJohn Pritchard氏は、「2〜3年後には、こうしたシステムが市場に投入される見通しだ」と述べている。

 英国ケンブリッジにあるAddenbrooke Hospitalの首席臨床試験医師で、University of Cambridgeの研究ディレクタを務めるRoman Hovorka氏は現在、インスリン自動投与システムのアルゴリズムの開発に取り組んでいる。Cambridge Consultantsは、このアルゴリズムを組み込んだアプリケーションの開発を支援している。Hovorka氏によれば、2013年後半には、スマートフォンやタブレット端末を使って自宅での臨床試験を開始する計画だという。

 Hovorka氏は、発表資料の中で「これまで同システムの治験は、病院内で看護師による監視の下で行ってきた。自宅で看護師の監視なしで行う場合もあった。次のステップでは、日常的な環境で、より長期的に治験を実施する」と述べている。

人工すい臓システムの概要 グルコースセンサーからデータを取得し(1)、モニターに送信する(2)。データがBluetoothを介してスマートフォンに送られると(3)、そのデータを基にインスリンポンプの制御を行う(4)。

 Cambridge ConsultantsのPritchard氏によると、米国カリフォルニア州サンタバーバラの研究グループとイタリアのパドアの研究グループも、同分野の研究を精力的に行っているという。Abbott LaboratoriesやMedtronicなど、ポンプやモニターを販売する一部の医療機器メーカーも、インスリン自動投与システムの開発に注力している。先頃米国のシカゴで開催されたイベントでは、糖尿病の治療に向けたクローズドループアルゴリズムの開発について議論が交わされた。

 Pritchard氏は、「研究グループから提示されたほとんどのデータで、血糖値のコントロールの改善がみられ、技術の進展が感じられた。血糖値をさらに厳密にコントロールできるようになれば、合併症の危険を減らし、健康状態をより安定して維持できるようになることが、多くの医療データで証明されている」と述べている。

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