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組み込みSSDの最新動向 〜高速な新規格から耐環境性の強化まで〜メモリ/ストレージ技術(1/2 ページ)

高温、高湿度でも安定した動作が期待できるフラッシュメモリストレージは、これまでも組み込み機器や、産業用機器に広く採用されている。そのフラッシュストレージの最新動向を、台湾・台北市で開催されたIT見本市「COMPUTEX TAIPEI 2013」(2013年6月4〜8日)で追った。

» 2013年07月09日 15時57分 公開
[本間文,ITmedia]

 現在、組み込み機器で幅広く採用されているSSDは、SATAコネクタに直接差し込む小型モジュールタイプのDOM(Disk-On Module)と、2.5インチSSDの約半分の基板サイズということで、一般に「ハーフスリム」「1.8インチスリムSSD」と呼ばれる54mm×39mmの小型基板(JEDEC MO-297)、そして、Mini PCI Expressとフォームファクタを共用する51×30mmのmSATA(JEDEC MO-300)の3種類だ。このうち、mSATAモジュールについては、今後、Intelなどが提唱するより高速な規格「M.2」に移行が加速すると、多くのSSD業界関係者は考えている。


台湾Apecer Technologyの産業用SSD。ハーフスリムやmSATA、DOM、M.2(NGFF)など、幅広いフォームファクタに対応する(クリックで拡大)

なぜM.2が普及するのか

 M.2は、これまでNGFF(Next Generation Form Factor)と呼ばれてきたもので、インタフェースとしてSATAに加えてPCI Expressにも対応することで、より高速な転送速度を実現するもの。同規格は、SSDだけではなく無線LANカードなどにも幅広く採用され、既に数多くのUltrabookなどで採用が進んでいる。しかし、同規格が産業機器や組み込み機器にも普及するとみられている理由は、転送速度の速さではない。そこには、フラッシュメモリが抱える問題や、産業用機器などに特有の問題点があると、関係者は指摘する。

mSATA後継の小型SSDフォームファクターとして期待されるM.2(旧称NGFF、クリックで拡大)
M.2のSSDでは、インタフェースとしてSATAとPCI Expressに対応。最大PCI Express x4接続をサポートする(クリックで拡大)
SSDフォームファクターの移行計画。これはあくまでもPCやワークステーション向けだが、組み込み市場でもこのトレンドを踏襲するとみられている(クリックで拡大)

NANDフラッシュの微細化に伴う課題

 SSDに採用されているNAND型フラッシュメモリは、半導体製造プロセスが1世代微細化すると、書き換え寿命(プログラム/消去サイクル)が1/10になるという弱点がある。このため、20nm世代ではNANDフラッシュは製造できないとも考えられていた時期があった。しかし、現実にはコンシューマ向けのSSDでは、既に1Xnm世代のNAND型フラッシュメモリを採用した製品も増えており、これらの製品で使われているNAND型フラッシュメモリの書き換え寿命は3000回前後しかない。また、NANDフラッシュは、製造プロセスが微細化される度に書き込み・書き換えエラーも増えるため、コントローラのECC機能も強化する必要が生じる上、不良ブロックの管理やウェアレベリングなどもより複雑になってくる。

 ところが、こうした問題を解消するためには、コントローラを新しくするだけでは不十分だ。より複雑なECCやフラッシュ管理を実現するためには、コントローラとフラッシュチップ間のインタフェースを高速化するか、マルチチャネル化することで、SSDを利用しているときにもパフォーマンスが低下しないようにしなければならない。

 そこで、M.2では、mSATAより小さな基板サイズながら、シングルチップでマルチチャネルインタフェースを実現する新しいNAND型フラッシュメモリチップを搭載できるようにしたり、基板サイズを伸長することで多チャネル化をサポートできるようにしたりしている。

 もちろん、フラッシュチップメモリのインタフェースそのものも高速化が進んでおり、NANDインタフェースの最新規格であるToggle NAND 2.0やONFI 3.1に対応したNANDチップの量産も開始されている。NANDインタフェースの進化は、2009年にONFiとToggle両陣営がJEDECにおける標準化で対立したことをきっかけに、新規格への移行ペースは大幅に鈍っていたが、M.2の登場で、ようやく新規格への移行が進むことになった。

Toggle ONFi
賛同ベンダー 東芝、Samsung、SanDisk Intel、Micron、HK Hynix、Phision、SanDisk、ソニー他
バージョン SDR NAND 1.0 2.0 1.0 2.0 2.1 3.0
規格策定年※1 - 2009 2011 2006.12 2008.2 2009.9 2011.3
同期/非同期 非同期 同期 同期 非同期 同期 同期 同期
最大データ転送レート 40MB/s 133MB/s 400MB/s 50MB/s 133MB/s 200MB/s 400MB/s
※1:Toggle NANDの規格策定年に関しては、標準化団体による規格ではないため、同規格採用チップの量産開始時期としている

 もう一つ、M.2で重要となるのがコネクタの変更だ。M.2はmSATA SSDの4.85mmよりも薄い3.85mm厚となっており、コネクタも必然的に低くなっている。SSDベンダー関係者によれば、「これにより、mSATAではコネクタの配線が原因となってEMIの干渉などが生じることがあったが、M.2ではその問題も回避しやすくなる」と言う。

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