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» 2013年10月03日 16時05分 UPDATE

CEATEC 2013:“なんとなく”じゃない! ビールのコクが分かるクリスタル

日本電波工業は、「CEATEC JAPAN 2013」(2013年10月1日〜5日、幕張メッセ)で、サッポロビールと共同で開発している、ビールの味を定量的に評価する味覚センサーシステムを公開した。ピコグラムレベルの微少な重さが計測できる水晶の性質を利用し、ビールに含まれる「コク」につながる味成分の量を測定し、「コク」を数値化する。将来的には、ビールの「キレ」も測定できる見込みの他、さまざまな飲料の味成分を数値化できる可能性があるという。

[竹本達哉,EE Times Japan]
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 ビールの味は、「苦味」「うま味」「甘味」「辛味」といったハッキリとした味覚以上に、「コク」や「キレ」といったビール特有の表現で表されることが多い。「コク」は、さまざまな味覚が複合された結果生じるものであり、「キレ」はその複合的な味が人の舌に与える時間の長短で決まるものと考えられているが、ハッキリとはしていない。ビール会社でも、「コク」や「キレ」は、専門の人間が実際に味わって判断する「官能検査」で評価しているケースが多いという。

人の舌に頼らない評価方法

tt131003NDK001.jpg 人の舌に頼ってビールの「コク」を割り出す官能検査のようす

 ただ、訓練された専門の人間でも、人間である以上、主観的な評価に他ならず、客観的、定量的に「コク」や「キレ」を測定する方法が求められてきた。

 そこで、ビール製造大手のサッポロビールは、さまざまな味覚が複合で生じると考えられる「コク」は、ビールに含まれるさまざまな味覚成分の量を測定することで定量評価できると仮定し、ビールの味覚成分量を測定できる装置を模索。その中で、食品中のアレルゲン検出装置などバイオセンサーを手掛ける日本電波工業の技術に目を止めた。

 日本電波工業は、電子機器に欠かせない水晶発振器などの大手メーカー。水晶のイメージの強い日本電波工業がバイオセンサーを手掛けているという点は、意外に思えるかもしれないが、水晶とバイオセンサーは密接に関係している。

 水晶は、電圧をかけることで高い精度の周波数で発振する。そのため、時計や電子機器で、安定して時を刻むデバイスとして水晶は不可欠な存在となっている。

水晶で重さが計測できる

 実は、この一定の周波数で振動する水晶を使って、微量な物質の重さを計測することもできる。一定の周波数で振動する水晶は、物質が付着すると、その重さにより、水晶の振動が鈍くなり、発振周波数が下がるという性質を持つ。30MHzで発振する水晶の場合、35pg(ピコグラム)の物質が付着すると発振周波数が1Hz低下する。そのため、水晶に重さを計測したい任意の物質を付着させ、周波数の低下量を測れば、その重さが分かるわけだ。

 ただ、水晶でピコレベルの重さを測るセンサーを実現するには、高度な技術が必要になる。測定したい物質の重み以外で、発生してしまう発振周波数の変動要因を取り除く技術だ。変動要因はいくつかある。1つは、温度変化。水晶は周囲の温度が変化すると発振周波数が変化する。

 もう1つは、測定したい特定の物質以外の重みの影響だ。例えば、血液など液体中のアレルゲンだけが付着する抗体などの物質を水晶表面に塗布し、特定物質だけを付着させることに成功したとしても、液体全体の重さも水晶に加わるため、発振周波数は低下してしまう。これら測定したい物質の重み以外で、発生してしまう発振周波数の変動要因を取り除くことが、正確な測定には不可欠だ。

 これに対し、日本電波工業では、重さを測る水晶センサーとして独自の“ツインセンサー”を開発し、正確にピコグラムレベルの重さを測ることを実現している。

tt131003NDK002.jpg 日本電波工業のピコレベルで重さを測ることができる水晶センサー (クリックで拡大)

 このツインセンサーは、1つの水晶に、2つの電極を装着した構造になっている。一方の電極側の水晶には測定したい物質だけを吸着する物質を塗布し、もう一方の電極側には何も塗布せずに使用する。そして、両側に同じ液体試料を載せ周波数を測定し、両側の周波数の差分を割り出せば、その差分が測定したい物質の“重さ”が算出できるという仕組みだ。

 このツインセンサー技術を使用してピコグラムレベルの重さを正確に測定できるさまざまな水晶センサーに着目したサッポロビールが、日本電波工業に声をかける形で、ビールのコクを数値化するシステムの開発が始まった。

「コク」の次は「キレ」

tt131003NDK003.jpg 開発した味覚センサーの構造

 電極を形成した水晶上に、人間の舌の細胞表面を模した脂質膜を形成し、さまざまな味成分が吸着する味覚センサーを作成。同センサーにビールを滴下して、舌に残る味成分量を割り出す装置の開発に成功した。

 開発した装置で、検出した味成分量と、サッポロビールが行う官能検査での評価と照らし合わせたところ、その相関値は「0.86」とほぼ一致した結果が得られ、ビールのコクの数値化が可能なことが分かったという。

tt131003NDK004.jpgtt131003NDK005.jpg 開発したビールの「コク」を数値化するシステム(左)。同システムでの検出結果と、官能検査結果の相関図(右)。相関値0.86とほぼ一致した結果が得られたという (クリックで拡大)

 両社は、今後、センサーにビールを流し、脂質膜から味成分が取り除かれるようすを時間的な周波数変化情報から読み取り、ビールの「キレ」を数値化する研究などにも取り組む方針。また、水晶センサー上に形成する脂質膜などを工夫し、「苦味や甘味、酸味など特定の味成分だけを検出する装置などの実現をめざす」(日本電波工業技術統括本部第2技術統括部千歳テクニカルセンター忍和歌子氏)としている。

CEATEC JAPAN 2013特集

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