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» 2013年11月05日 10時00分 UPDATE

アナログ設計:アナログ・グルが語る、「日本電子産業を強くする技術」 (1/2)

アナログ技術の研究開発に長年携わり、「アナログ・グル」(ひときわ優れたアナログ回路技術者を指す呼称)と呼ばれている日米の技術者4人が一堂に集まり、アナログ技術に関する現在の問題点から将来の展望までを語った。本稿では、Linear Technologyの創立者の1人で、CTOを務めるRobert Dobkin氏と、同社でパワー製品担当副社長を務めるSteve Pietkiewicz氏がそれぞれ行った2つの講演について、その概要を紹介する。

[馬本隆綱,EE Times Japan]
LT8614を実装したデモボード「DC2019」の外観

 「アナログ・グルとの集い〜日本の電子産業を強くする技術とは〜」と題したセミナーが2013年10月30日に東京都内で開催された。アナログ技術の研究開発に長年携わり、「アナログ・グル」(ひときわ優れたアナログ回路技術者を指す呼称)と呼ばれている日米の技術者4人が、アナログ技術に関する現在の問題点から将来の展望までを語った。本稿では、Linear Technologyの創立者の1人で、CTOを務めるRobert Dobkin氏と、同社でパワー製品担当副社長を務めるSteve Pietkiewicz氏がそれぞれ行った2つの講演について、その概要を紹介する。

高まるアナログ技術の重要性

 最新の電子機器/システムの高度化と高機能化を支えてきたのはデジタル技術の進化である。最近では、デジタル技術の性能を最大限に活用しつつ、応用機器を差異化するためのカギを握るのが、「優れたアナログ技術」といわれている。今回の講演でも、「ワイヤレス通信技術やセンサー技術などの成長領域において、アナログ技術の重要性がさらに高まる」といった意見が出された。

 講演会ではまず、東京工業大学大学院で理工学研究科電子物理工学専攻の教授を務める松澤昭氏や、東芝の研究開発センター技監を務める板倉哲朗氏が、日本の電子産業を強くするために必要な要素技術の1つとしてアナログ技術を挙げ、その重要性や進化の可能性を述べた。

課題解決がビジネスチャンスを生む

tm_131105linear02.jpg Linear Technologyでパワー製品担当副社長を務めるSteve Pietkiewicz氏

 続いて、Linear TechnologyのRobert Dobkin氏とPietkiewicz氏がアナログ回路設計の事例や未来について語った。Pietkiewicz氏はまず、バックレギュレータの意味やその必要性を述べた。そして、同社が1988年に生産を始めた初期のバックコンバータ「LT1074」の概要とそのデモボードを紹介した。

 LT1074は10〜40Vの入力電圧で5V/5Aを出力することができる。Pietkiewicz氏は、「100kHzというスイッチング周波数は、当時としてはとても高速で、多くのエンジニアが驚いていた」と振り返る。デモボード上には大きな電解コンデンサが見て取れるが、「当時は最新のソリューションであった」と話す。製品の変換効率についても触れた。LT1074は、最大88%の効率を実現し、ヒートシンクの小型化を可能とした。「当時、競合するリニアレギュレータの効率は33%であり、大半が熱となって損失していた」という。

5Aの出力を得るためのPNPのコレクタ電流は?

 ここでPietkiewicz氏は、回路設計に関する問題を受講者に出した。「最終的に5Aの出力電流を得たいが、PNPのコレクタ電流(IC)はいくつになるか」。会場では、正解が出るまで複数の受講者が回答し、Pietkiewicz氏とのやりとりも含めて、回答を導いた理由などを話し合った。

tm_131105linear03.jpg Pietkiewicz氏が受講者に出した問題 (クリックで拡大) 出典:Linear Technology

 最新のバックレギュレータ「LT8614」についても、LT1074と比較しながら、その特長や特性が飛躍的に向上している点などを述べた。まず、パッケージが、当時の「TO-220」から「MSOP」や「TSSOP」「QFN」へと小型化した。100kHzだったスイッチング周波数は2MHzへと高速化した。変換効率は80%から94%に向上した。ドロップアウト電圧は2.4Vから300mVへ、暗電流は7mAから2.5mAへと大きく改善された。プロセス技術も進化し、LT1074の7μmのバイポーラプロセスに対して、LT8614は0.35μmのDMOSプロセスが用いられている。

tm_131105linear04.jpg 1988年に発表されたLT1074を実装したデモボード「DC001」の外観(左)と、最新のLT8614を実装したデモボード「DC2019」の外観(右) (クリックで拡大) 出典:Linear Technology

 Pietkiewicz氏は最後に、バックレギュレータの将来性についても触れた。「今後も電源の需要が減少することはない。しかも、スイッチング周波数はさらに高速化が要求されているが、同時にEMI(Electro Magnetic Interference)対策なども考慮しなければならない。こうした相反する課題を解決していくことで、大きなビジネスチャンスが生まれる」と述べるとともに、このような課題を解決していくために、「これからのアナログ技術者には、『回路設計』、『シリコン』、『パッケージング』そして『熱設計』に対する高度な技術と高い見識が求められている」と締めくくった。

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