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» 2014年01月09日 16時35分 UPDATE

新技術:LSIに組み込める! 産総研などがスピントルク発振素子を高性能化

産業技術総合研究所などは、従来に比べ10倍程度のQ値を持つというスピントルク発振素子を開発したと発表した。この開発成果は、LSI中に組み込むことが可能なナノスケール発振器などに応用できるという。

[EE Times Japan]

 産業技術総合研究所(以下、産総研)とキヤノンアネルバ、大阪大学は2014年1月8日、高出力と高い振動安定性(高Q値)を併せ持つ磁気抵抗膜を用いた発振素子(スピントルク発振素子)を開発したと発表した。

 スピントロニクスは、スピンの配置によって抵抗値が変化する磁気抵抗効果とともに、電流によってスピンの方向をコントロールできるスピントルクという物理現象を持つ。スピントルク発振素子では、この2つの物理現象を利用して高周波信号を生成するが、発振出力の大きさは磁気抵抗効果の大きさによって決まるという。

従来は数百程度のQ値が限界だった

 その中で、産総研などは、巨大な磁気抵抗効果を示す磁気トンネル接合膜のスピントルク発振素子への応用にいち早く取り組み、「世界で最も大きな発振出力のスピントルク発振素子を開発している。また、発振周波数を安定化するために、磁気トンネル接合膜に適したナノコンタクト型スピントルク発振素子の開発も行ってきた」とする。産総研などではこれまで、磁気トンネル接合膜を用いたスピントルク発振素子として、350程度のQ値を実現していたが、磁気トンネル接合膜や素子構造の工夫だけでは1000を超えるようなQ値を得ることは難しく、実用化に向けて1000を超えるQ値を達成することを目指していた。

 高いQ値を得るにはスピンの歳差運動を安定させる必要がある。磁気トンネル接合膜は数nmの磁性薄膜を基本に形成されているが、スピンの方向が膜面内を向いて歳差運動をしていると磁性薄膜の形状磁気異方性の影響によりスピンの軌道がゆがんでしまう。そのため、Q値は比較的小さくなり数百程度が限界になっていた。

3000以上の高いQ値を達成

 今回、磁気抵抗膜として磁気トンネル接合膜を用い、その局所領域(約100 nm以下)に電流を注入するナノコンタクト型のスピントルク発振素子を使用した。スピンの向きを磁気トンネル接合膜の膜面に垂直な方向に傾け、これまで困難であった歳差運動の安定化を実現し、3000以上の高いQ値を得た。「このQ値は、従来の磁気トンネル接合膜を用いたスピントルク発振素子に比べて10倍近く大きな値」(産総研)という。

tt140109AIST001.jpg ナノコンタクト型スピントルク発振素子の断面構造(左が電子顕微鏡写真/右が模式図、クリックで拡大) 出典:産業技術総合研究所

 産総研などでは、「今回の成果は、スピントルク発振素子の実用化を加速し、LSI中に組み込むことが可能なナノスケール発振器や超高感度・高分解能磁界センサー、次世代ワイヤレス通信用マイクロ波発振器などへの応用が期待される」としている。

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