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» 2014年01月17日 07時00分 UPDATE

「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(22):最難関の「撤収」を鮮やかに乗り切る、11カ条の作業原則 (1/5)

海外企業との協業プロジェクトにおいて、最も難易度が高いのは「撤収」です。撤収作業は、双方に与えるダメージを最小限に抑えつつ、ひそやかに行うことが重要です。それには、どうすればいいのか? 実践編(撤収)となる今回は、ダメージを最小限に抑え、なおかつ自らに何らかの成果をもたらすような、鮮やかな撤収のための11カ条をお伝えします。

[江端智一,EE Times Japan]

 われわれエンジニアは、エンジニアである以上、どのような形であれ、いずれ国外に追い出される……。いかに立ち向かうか?→「『英語に愛されないエンジニア』」のための新行動論連載一覧

 数年前、ある海外企業との共同研究プロジェクトを完了して、別の仕事に関わり、一時金(ボーナス)について上司から説明を受けていた時のことです。

 先期の成果に関して、特別手当を付けてもらえることになって、驚いたことがあります。

江端:「私は先期、成果を出せていません」
上司:「先期終了した、あのプロジェクト完遂の件だよ」
江端:「しかし、私がしたことと言えば、プロジェクト撤収の総指揮を執っただけです」
上司:「『それ』だよ」

 『ふーん、なるほどなぁ。会社はちゃんと見ているんだなぁ』と、ちょっと感心してしまいました。

 プロジェクトを撤収することは、プロジェクトを立ち上げるよりも複雑で、特に、目的を達成できなかったプロジェクト(以下、「失敗プロジェクト」といいます)の撤収は、絶望的に困難なのです。

 失敗プロジェクトの中でも、われわれ日本人にとって最悪の結果で終わった最も有名なプロジェクトが、あの68年前の「太平洋戦争」です。戦後の研究や調査で、当時の我が国の最高権力者や頭脳集団のほぼ全員が「やめたい」と思っていたのにも関わらず、「やめられなかった」ことも分かってきています*)

*)例えば、2012年に放送されたNHKスペシャル「終戦 なぜ早く決められなかったのか

 そもそも、プロジェクトというのは、何らかの特別の目標を達成するための計画とその実施のことで、必ず成功するものではありません。「成功」から「失敗」までのいずれかの状態で終了することになります。

 しかし、人生においても仕事においても(そして、恋愛においても、英語においても)、「成功」と「失敗」のどちらの比率が多くなるかと問われれば、圧倒的に「失敗」が多いはずです。特に海外協業に関するグローバル対応のビジネスで、英語に愛されないエンジニアである私たちのプロジェクトが、そうやすやすと完全な「成功」に至れる訳がありません。

 今回の執筆に際していろいろ調べてみたのですが、この圧倒的に多いはずの「失敗プロジェクト」に関する書籍は驚くほど少なく、プロジェクト撤収方法の解説書に至っては絶無といってもいいほどです。

 そのような話は、誰も「話したくなく」、そして「聞きたくない」からでしょう。普通の人間として、その心理は妥当なものであると言えます。

 プロジェクトの目的の100%を達成できれば、それに越したことはありません。しかし、私たちが、そのような幸運に恵まれることは、まれなケースでしょう。通常のプロジェクトの撤収ですら難しいのです。まして、英語を使うことを前提とする撤収が、そしてそれが「失敗プロジェクト」であれば、その困難さは想像を絶するものになるはずです。

 ならば、私たち「英語に愛されないエンジニア」が取り得る方法は、

―― プロジェクト開始前から、「失敗」を想定した、万事抜かりない「撤収」の準備をしておく

 ことになります。

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