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埋もれた強磁性層からスピン分解電子状態を検出、デバイスの特性向上に期待材料技術

物質・材料研究機構と東北大学の金属材料研究所および電気通信研究所の研究グループは、埋もれた強磁性層からスピン分解電子状態を検出することに成功した。共同で行った今回の研究成果は、スピントロニクスデバイスにおける特性の向上や新規材料設計への応用が期待されている。

» 2014年04月07日 16時10分 公開
[EE Times Japan]

 物質・材料研究機構(以下、NIMS)と東北大学の金属材料研究所および電気通信研究所の研究グループは2014年4月、埋もれた強磁性層からスピン分解電子状態を検出することに成功した。共同で行った今回の研究成果は、スピントロニクスデバイスにおける特性の向上や新規材料の設計などに応用することができるとみられている。本成果は、米国物理学協会速報誌「Applied Physics Letters」に掲載される予定である。

 今回の研究は、NIMSの上田茂典主任研究員、東北大学金属材料研究所の水口将輝准教授、東北大学電気通信研究所の白井正文教授ら、3研究グループが共同で行った。HDDの読み出し用ヘッドなど、強磁性体を用いたデバイスの開発やその評価において、従来のスピン分解光電子分光法では、固体表面の電子状態も同時に観測してしまう可能性があるため、埋もれた強磁性層の情報をより正確に取り出すことは困難といわれていた。これに対して今回は、光源に大型放射光施設「SPring-8」で得られる高輝度硬X線を用いて硬X線光電子分光を行った。これにより、固体表面の影響を極めて小さくして、固体内部の電子状態を観測することに成功した。

 さらに、スピン検出もこれまでとは異なる方法を考案した。新たに開発したスピン検出方法と硬X線光電子分光法を組み合わせることで、Au(金)薄膜層の下部に埋もれていたFeNi(鉄ニッケル)合金からなる強磁性層のスピン分解電子状態を検出することができるなど、検出効率を大きく向上させた。

今回の研究で行ったスピン分解光電子分光の実験配置の模式図 (クリックで拡大) 出典:NIMS、東北大学の金属材料研究所および電気通信研究所
Au薄膜層の下に埋もれたFeNi合金強磁性層から、Fe 2p内殻領域のスピン分解光電子スペクトルを取得することができた (クリックで拡大) 出典:NIMS、東北大学の金属材料研究所および電気通信研究所

 今回の研究成果を用いると、強磁性体を用いたデバイス構造の特性評価と、強磁性層と非磁性層の接合界面近傍における強磁性層のスピン分解電子状態を比較することができるため、スピントロニクスデバイスの特性向上や新規材料の設計などに生かすことができるという。例えば、トンネル磁気抵抗素子において磁気抵抗比を格段に向上させるための方向性を見出すことが可能となる。また、スピン偏極度の高いデバイス作製に向けた材料の開発や選択などに有用な知見を得ることができるとみている。

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