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» 2014年05月26日 12時36分 UPDATE

テスト/計測 テクトロニクス:異常信号を取りこぼさず検出して捕捉、「802.11ac」規格テストにも対応

ワイヤレス通信向け測定器としてリアルタイムスペアナの役割が高まっている。取り込み帯域幅が広く、間欠的なノイズや頻度の少ない干渉波を取りこぼすことなく検出し、解析することができるからだ。テクトロニクスは、業界に先駆けてリアルタイムスペアナを開発・製品化してきた。新たにIEEE 802.11ac規格のテスト環境なども提供している。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

 テクトロニクスは、ワイヤレス通信向け測定器として、リアルタイムスペクトラムアナライザ(同社ではリアルタイムシグナルアナライザと呼ぶ)や、スペクトラムアナライザ機能を統合したオシロスコープ(同ミックスド・ドメインオシロスコープ)、任意信号発生器などを提供している。最新の無線LAN規格である「IEEE 802.11ac」に対応するテスト環境も用意した。2014年5月に開催されるワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2014では、パートナー企業と協力し、IEEE 802.11ad規格に対応した無線LAN変調解析のデモなどを予定している。

 リアルタイムスペクトラムアナライザ(以下、リアルタイムスペアナ)は、時系列で変動する電波の捕捉や、突発的に現れる違法電波の監視やノイズ解析などを目的に開発された測定器である。特に、携帯電話のデジタル化やBluetooth規格の登場などによって、リアルタイムスペアナの必要性が一気に高まった。

tm_140400tektronix01.jpg テクトロニクスで営業統括本部営業技術統括部の統括部長を務める瀬賀幸一氏

 テクトロニクスで営業統括本部営業技術統括部の統括部長を務める瀬賀幸一氏は、「干渉を避けるために周波数をホッピングしているような無線通信の場合、一般的な掃引型スペアナでは、不具合が発生してもその原因を特定するのは難しかった。帯域が広いリアルタイムスペアナを使うことで、ホッピングしている状態を時分割で解析することができ、不具合の原因を特定することができた」と話す。

 それまで周波数領域での波形観測は、連続的に出力される電波を対象としていたため、どちらかといえばダイナミックレンジの広い掃引型スペアナの利用が中心となっていた。これに対してテクトロニクスは、時系列で周波数が変化する信号波形を捕捉/解析することに着目し、日本人技術者(当時のソニーテクトロニクス)が中心となって、リアルタイムスペアナの開発と製品化を行った。

 当時は、無線LAN機器やBluetooth搭載機器、電子レンジなど2.4GHz帯の周波数を採用したさまざまな機器が製品化されたことにより、同時に使用すると伝送速度が低下するなどの課題が生じるケースもあった。その原因追求と課題解決にリアルタイムスペアナが活躍し、無線通信の分野で注目されることになった。その後も、新しい無線LAN規格やRFIDに対応した機器、LTE(Long Term Evolution)対応の携帯電話などの登場により、リアルタイムスペアナのニーズが一段と高まった。

 テクトロニクスの強みは、広帯域のRF信号の中から間欠的に現れるノイズや干渉波などを検出する技術と、それを確実に捕捉するトリガ技術である。そのユニークな技術の1つに「頻度トリガ」と呼ぶ機能がある。ある周波数エリアを指定し、その枠内に出現したノイズが指定した回数を上回ると、危険な信号と判断して捕捉する仕組みである。瀬賀氏は、「リアルタイムスペアナを製品化してくる競合メーカーはあるが、異常な信号を検出しそれを確実に捕捉する当社の技術に、他社が追従することは容易ではない」と自信を見せる。

 リアルタイムスペアナとしては、周波数測定レンジが最大26.5GHzで、取り込み帯域幅が最大165MHzの「RSA5000Bシリーズ」などを用意している。毎秒39万回のDPXエンジンにより2.7μ秒の信号を100%捕捉し表示させることができるため、発生頻度の少ないノイズや干渉波を取りこぼすことなく検出し、解析することができる。

 ワイヤレス通信向け測定器として、同社が注力しているもう1つの分野が組み込み機器用途である。最近の電子回路基板上には、無線LANやBluetooth、GPS、RFID、携帯電話など複数の無線モジュールが実装されることも多い。これらの無線モジュールから発信される電波同士が内部干渉を起こしたり、ある動作モードが重なった際にノイズを発生したりして、問題となるケースもある。いわゆる「自家中毒」と呼ばれる症状である。

 このような状況下で、基板上のノイズ源をピンポイントで特定し、ノイズ発生のメカニズムを解析するのに有用なのが、スペアナ機能を統合したオシロスコープ「MDO4000Bシリーズ」である。「スペアナ機能でノイズの発生源を特定し、その時点でロジック信号に何が起きたか、電源の波形がどのように変化したのかを、同時に観測することができるため、原因の相関を明確にすることが可能」(瀬賀氏)となる。

tm_140400tektronix02.jpgtm_140400tektronix03.jpg テクトロニクスが提供する主な無線LAN向けのテスト環境(左)と主要な製品群 (クリックで拡大) 出典:テクトロニクス

 組み込み機器の設計者は、スペアナ機能を統合したオシロスコープを用いない場合、無線通信機能の開発/評価にオシロスコープとスペアナ、ロジックアナライザなどを組み合わせて測定する必要があった。しかし、組み込み機器の技術者はこれまで、スペアナを使った経験が少なく、取り扱いも難しいと感じているようだ。その上、掃引型スペアナは導入コストが高いこともネックとなっていた。

 スペアナ機能を統合したオシロスコープは、これらの課題を払拭(ふっしょく)して、オシロスコープを操作する感覚でスペアナ機能を使いこなすことができる。しかも、中級スペアナと同等の性能を備えているという。同社では、「広いダイナミックレンジを必要とする波形観測には掃引型スペアナが有効だが、それ以外の幅広い用途にスペアナ機能を統合したオシロスコープを提案していく」計画である。

 MDO4000Bシリーズの特長は、最大3GHzの広い帯域を取り込むことができることである。このため、IEEE 802.11ac無線LAN通信の信号解析にも対応している。WTP2014では、サードパーティーが開発したダウンコンバータと組み合わせて、変調解析のデモ展示を行う予定だ。従来であれば高額なオシロスコープを使わないと変調解析は行えなかったが、「MDO4000Bシリーズを用いるとこれまでの半額以下で測定が可能となる」(瀬賀氏)という。

 スペアナなど最大6種類の測定機能を1台の筐体に統合できるミックスド・ドメインオシロスコープ「DMO3000シリーズ」も新たに追加した。オプションの機能やモジュールを追加すれば、手元で測定仕様に応じた機能や性能にアップグレードすることができる”6 in 1“オシロスコープである。

tm_140400tektronix04.jpgtm_140400tektronix05.jpg DMO3000シリーズの外観と製品群 (クリックで拡大) 出典:テクトロニクス

 オシロスコープをベースに、スペアナ、ロジックアナライザ、プロトコルアナライザ、任意波形/ファンクションジェネレータ、デジタルボルトメータ/周波数カウンタの機能を搭載することができる。オシロスコープの周波数帯域は最大1GHz、スペアナの周波数範囲はオプションを追加すれば最大3GHzまで拡張することができる。

 MDO4000Bシリーズは、複数のドメインを同期して測定することができるため、組み込み機器のデバッグに有効だ。一方、DMO3000シリーズは各ドメインを同期して測定することはできないが、複数の測定機能がワンボックスに収められているため、ワークスペースを効率よく使用でき、測定器の管理もしやすいというメリットがある。DMO3000シリーズは技術適合検査などの用途に向ける。

 同社はこれらの測定器以外にも、ワイヤレス通信向けに任意波形ジェネレータ「AWG7000Aシリーズ」や、ハンドヘルド型スペアナ「SA2500」「H500」シリーズなどを用意している。ハンドヘルド型スペアナは、フィールドにおける受信状態や電波干渉などのデータ収集に適している。しかも収集したデータは、測定器に内蔵したGPSの位置情報とひもづけして記録することができる。無線LANのホットスポット設置場所などで生じる不具合の解決やシステムの検証などに有効である。

 ワイヤレス通信向け測定器の需要見通しについて瀬賀氏は、「掃引型も含めた全スペアナ市場の中で、リアルタイムスペアナが占める比率は今のところ約20%とみている。当面は30〜40%までその比率を高めていきたい。スペアナ機能を統合したオシロスコープは組み込み機器向けを中心に、スペアナになじみの薄い新規ユーザーの利用が、予想を上回る勢いで拡大している」と語る。また、2020年の東京オリンピック開催に向けて、無線LANのホットスポット設置は急増するとみられ、ハンドヘルド型スペアナに対するニーズも高まる見通しだ。

ワイヤレスジャパン2014 / ワイヤレス・テクノロジー・パーク2014

会期 2014年5月28日(水)〜30日(金)
時間 10:00〜18:00(最終日は17:00終了)
会場 東京ビッグサイト
テクトロニクス ブースNo. WT-78


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