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ホームオートメーション向けプロトコル、Nest Labsが取り組みを本格化ビジネスニュース 業界動向(1/2 ページ)

Nest Labsがホームオートメーションに向けたプロトコル「Thread」への取り組みを本格化させている。モノのインターネット(IoT)市場は、成長が著しいが故に断片化も進んでいて、そうした状況を打破すべく標準化の取り組みが始まっている。Threadはそのうちの1つだ。

» 2014年07月17日 19時05分 公開
[Rick MerrittEE Times]

 Google傘下のNest Labsは、Googleに32億米ドルで買収される前から、自社製品を低消費電力のメッシュネットワークプロトコル「Thread」に対応させるべく、着々と取り組みを進めてきた。今後そのThreadを、ホームオートメーション機器に向けた業界標準として確立していきたい考えだ。

 Nest Labsは、Threadの普及を推進する業界団体「Thread Group」を設立し、ARMやFreescale Semiconductor、Silicon Labs、Samsung Electronicsなどをメンバー企業として抱えている。Thread Groupは2014年中に、メンバー企業に向けてロイヤルティーフリーのプロトコルをリリースする予定だという。

 現在、モノのインターネット(IoT)分野では、断片化が進んだために欠落している点も多い。こうした状況に対応すべく、さまざまな取り組みが進められているが、Threadもそのうちの1つである。Nest Labsのテクニカルマーケティングマネジャーであり、Thread Groupのプレジデントも兼任するChris Boross氏は、EE Timesのインタビューに応じ、コンシューマ用ホームオートメーション機器に向けた既存のプロトコルが、同社の要件を満たしていない理由について説明した。

“第2のネットワーク”が必要

 Threadは、IPv6ベースの6LoWPANのソフトウェアスタックを実行し、IPルーティングに対応する。また、IEEE 802.15.4において、ノードごとに暗号化/認証が必要な、最大250ノードに対応したメッシュネットワークをサポートするという。

 Boross氏は、「Wi-Fiは非常に優れているため、今後もNest Labsの全製品において採用していくつもりだ。しかし、第2のネットワークとして、端末間にまたがるメッシュネットワークが必要だと考えている」と述べている。

 同氏によるとNest Labsの製品は、IEEE 802.15.4と初期バージョンのThreadに対応しているという。EE Timesの姉妹サイトである「IoT World」が2013年にNest Labsのサーモスタットを分解した際、IEEE 802.15.4-2003に対応したSilicon Labsのトランシーバ「EM357」が搭載されていた。

 Threadは、あらゆる種類のホームオートメーション機器向けに構築されている。照明やセキュリティシステムなど、Nest Labsが現在手掛けていない製品もその対象となる。Threadの創設メンバーであるBig Ass FansとYale Securityも、Threadプロトコルを採用する予定であることを表明している。

 機器メーカー各社の間では、「自分たちの競合メーカーで、しかもGoogleのバックアップがあるNest Labsが主体となっているThreadを採用することに対して消極的なのではないか」という懸念が生じているようだが、Boross氏はこの点について、それほど気にしてはいないようだ。同氏は、「新しいプロトコルについては、業界への普及加速を目指して開発を進めているため、Nest Labsだけのためのものではない」と述べている。

 Threadは、一般住宅向けの製品のみを対象としている。「産業向けの場合は別の要件が追加されることになるので、それに対応する予定はない」(Boross氏)。

 Threadは、IEEE 802.15.4準拠のMAC層においてAES(Advanced Encryption Standard)暗号化機能を採用している。2014年中には詳細を発表する予定の認証技術に関しては、「従来技術の一部を新技術に組み込んで利用する」とだけ明かしている。Boross氏は、「Threadネットワークは、常時セキュリティを確保できるだけでなく、あらゆるトラフィックを暗号化して、デフォルトで全てのノード認証を行う」と述べている。

「Thread」の概念図

 ThreadはUDPレベルで動作し、IPv6アプリケーションレイヤープロトコルを全てサポートする。このため、Android端末やiOS端末、Windows搭載PC、携帯電話機、タブレット端末など、IPv6接続を利用する端末を使って、Wi-Fi経由でThread対応機器を制御することが可能だ。Boross氏は、「一部の機器に関しては、Wi-FiとIEEE802.15.4準拠のネットワーク間の橋渡し役を担うことができると期待している」と述べる。

 Threadは2014年中に、会員規約について発表する予定だ。メンバー企業は、年会費を支払えば、ロイヤルティーフリーで使用できる規格にアクセスできる。

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