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ビッグデータ時代では分散データの同期が鍵に――NIWeek 2014基調講演NIWeek 2014

National Instruments(ナショナルインスツルメンツ)は、テクニカルカンファレンス「NIWeek 2014」を米国で開催中だ。今回のキーワードの1つは“ビッグデータ”で、1日目の基調講演では多チャンネルでデータを集録しそれらを同期するアプリケーションがいくつか紹介された。

» 2014年08月07日 13時00分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 National Instruments(ナショナルインスツルメンツ/以下、NI)は、米国テキサス州オースチンでテクニカルカンファレンス「NIWeek 2014」(2014年8月4〜7日)を開催中だ。8月5日(現地時間)に行われた基調講演では、同社の創設者で社長兼最高経営責任者(CEO)のJames Truchard氏が登壇し、今回のNIWeekにおいてテーマの1つとして掲げたビッグデータについて語った。


分散データの“同期”が鍵に

「NIWeek 2014」の会場。参加者は6000人に上る(クリックで拡大)

 ビッグデータは、「NIWeek 2013」(2013年8月)のキーワードであった「Industrie 4.0」や「Cyber-Physical Systems」の流れをくむものである。これらは、センサーネットワークなどの現実世界を強力なコンピューティング能力と結び付け、よりよいサービスを提供するというもので、モノのインターネット(IoT)と捉えることもできる(関連記事:“第4次産業革命”をNI製品で起こす――基調講演から)。

 こうした背景を受けてTruchard氏は、「ビッグデータの時代には、長期間にわたって蓄積したデータを“情報”に変えることができるようになる」と語る。また、データを価値のある情報に変えるためには、分散しているデータをより正確に同期していくことが重要だと説明した。データ集録はNIが長く注力してきた分野であり、さらに、数百点、時には数万点にも上る測定箇所のデータを同期する技術は過去数十年にわたってNIが進化させてきたものでもある(関連記事:“ソフトで設計できる”モジュール式計測器、数百チャンネルのデータもナノ秒レベルで同期)。実際、NIのデータ集録製品「NI CompactDAQ」や「NI PXI」を採用しているシステムは数多くあり、基調講演ではこれらの事例がいくつか紹介された。

基調講演で登壇するNIのJames Truchard氏

脳振とうを防ぐヘルメット

 Lloyd Industriesは、アメリカンフットボールなどのスポーツ向けに、頭部への衝撃を緩和するヘルメットを開発している。頭部への衝撃には、ヘルメットに対して直線方向に加わる衝撃と、ヘルメットが左右に回転することによって加わる衝撃がある。現在の技術では、前者は解析できるが後者をうまく解析することは難しかったという。Lloyd Industriesは、ヘルメットに加速度センサーや力センサー(フォースセンサー)など3つのセンサーを搭載し、直線的な衝撃と回転による衝撃のデータを同期させることで、頭部への衝撃を低減するアメリカンフットボール用ヘルメットのプロトタイプを開発できたという。同社は「従来は、直線的な衝撃と回転による衝撃の間に遅延が発生し、同期がうまくできなかった。CompactDAQを使うことでこの問題が解消された」と述べている。プロトタイプでは、回転による衝撃を50%減らすことに成功した。

デモでは、高さ2mからヘルメットを落下させ(左、中央)、3つのセンサーから得られるデータを同期して表示した(クリックで拡大)

機体のひずみを計測

 Jacobs Engineering Groupは、NIのシステム開発ソフトウェア「NI LabVIEW」とPXIをベースにした計測システムを提供している。同システムは、トラックの製造などを手掛けるスウェーデンのScaniaのトラック向け耐環境テストにも導入されている。Scaniaは、こうしたテストを行うために、−35〜50℃の気温や風雨などを再現できる巨大なテスト施設を建設した。Jacobsによれば、こうしたテストでは、多数のチャンネルを同期できるPXIの利点が生きると話す。

デモでは、航空機の翼のひずみをシミュレーションするシステムを披露した。右の画像で後ろのスクリーンに表示されているのが実際のデータである。機体の任意の場所で発生するひずみなどを測定するため、機体全体で2万箇所のデータを取ることもあるという(クリックで拡大)

農作物の収穫を上げるモニタリングシステム

 建設機器や農作業用機器を手掛けるCNH Industrialも、NIの計測/制御ハードウェア「CompactRIO」やCompactDAQを使った事例を紹介した。同社にとっての課題は、「農作物や農地の状態は天候によって毎日変わる」ということだ。土の状態を毎日のように記録し、農作物の収穫をあげるためのモニタリングシステムを開発した。

CNH Industrialのモニタリングシステム(クリックで拡大)

新しい「CompactDAQ」

 NIは、基調講演に併せてCompactDAQの新製品「NI cDAQ-9132」「NI cDAQ-9134」を発表した。外部のPCと接続せずにスタンドアロンで使える4スロットの品種になる。なおスロットとは、I/Oモジュールを挿入する場所のこと。これまで、スタンドアロン型のCompactDAQシリーズでは8スロット品しかなかったが、小型化のニーズに応えて今回の2製品を開発した。いずれもIntel Atomのデュアルコアプロセッサを搭載している。CompactDAQの拡充により、さらに幅広いデータ集録のニーズに応えることができるようになる。

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