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好調NXPが未来のカーエレクトロニクスをリードするNXPセミコンダクターズジャパン オートモーティブ事業部長 濱田裕之氏

NXPセミコンダクターズは、世界トップクラスのシェアを握る強い製品分野に特化し、その製品分野でより強力な新技術、新製品を生み出す戦略で近年、好調に業績を伸ばしている。その中で、日本における売上高の7割程度を占め国内ビジネスを引っ張るオートモーティブ事業の最新の技術/製品戦略について、NXPセミコンダクターズジャパン オートモーティブ事業部長の濱田裕之氏に聞いた。

» 2014年08月18日 09時15分 公開
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10%成長遂げ好調を維持

――2013年度(2013年12月期)の全社売上高48.2億米ドルと、ほぼ前年比10%増の成長を遂げられるなど、業績は好調ですね。

濱田氏 NFC(近距離無線通信)製品、認証技術を扱う「アイデンティフィケーション」(ID)や汎用ロジック/ディスクリートを扱う「スタンダードプロダクツ」など各ビジネスユニット(BU)で好調を維持しています。各BUともに、世界シェアで1位、2位を占めるような強い製品分野、今後市場が成長する新規分野に重点を置いた事業戦略、製品戦略を実践している点が功を奏しているでしょう。

――日本でのビジネスの概況は。

濱田氏 日本での売上高の過半を占めるオートモーティブ事業を筆頭に、全社同様のビジネス拡大が実現できています。

「Secure Connections for a Smarter World」

――オートモーティブ分野での事業戦略はどのようなものですか。

濱田氏 NXP全社で掲げるスローガン「Secure Connections for a Smarter World」に沿いながら、自動車分野が求める4つのトレンドに応える製品、事業展開を行っています。4つのトレンドとは「エネルギー効率」、未然に事故を防ぐ「アドバンスドセーフティ」、故障などに備えた「セーフティ」、「コネクテッドデバイス」です。

――具体的な注力製品を教えてください。

濱田氏 まず、世界トップクラスのシェアを誇る“強い製品”を「コア製品」と位置付けて、さらに強くします。具体的には、カーラジオなどカーエンターテイメント用半導体、CANなどの車内LAN用半導体、ペダル位置などを検出する磁気センサー、車載用ロジック/小信号ディスクリート、低電圧電源ICなどです。ロジックや小信号ディスクリートなどは、効率性からか生産を縮小する半導体ベンダーが多いですが、NXPは逆に積極的に投資を行い生産体制も含めて今後もコア製品として強化していきます。

 そして、これらコア製品などで培った技術を生かして、これから市場が形成、拡大するであろう成長領域に向けた技術、製品開発も行っていきます。

トップクラスのシェア誇る「コア製品」をさらに進化

車内外のあらゆる通信/放送に対し、デバイスソリューションを提供する (クリックで拡大)

――成長領域に向けた製品/技術とはどのようなものですか。

濱田氏 例えば、現状、CAN、LIN、FlexRayの各コントローラで高いシェアを獲得している車内LANです。新たにCAN規格を拡張したCAN FDが登場してきており、そうした新規格でもいち早く対応し、市場を引っ張りたいです。既存のCANに関しても、キャパシタを応用した絶縁技術を使ったアイソレーション型CANコントローラや、48V系電源で直接駆動可能な製品をサンプル出荷するなど新しいタイプの製品投入を継続しています。CANコントローラの外付け部品でサイズの大きいチョークコイルが不要になる製品も開発中で、既にフォルクス・ワーゲンが採用を決めるなど期待できます。

 CAN以外でも、搭載するが増えている車載カメラをつなぐイーサネット「BroadR-Reach」の規格に準拠したPHYなども2014年中にサンプル出荷を始める予定です。

詳細な開発ロードマップ

――カーエンターテイメント分野については、いかがですか。

濱田氏 カーラジオ向け半導体では、国内の主要なカーオーディオメーカー全てに採用されているといっても過言ではないほどの地位を築いています。カーラジオというと、過去のものと思われがちですが、これまでカーオーディオの主役はラジオであり、ラジオを中心にしてカーオーディオは進化していくでしょう。もちろんラジオ自体もデジタル化進むなど進化が求められています。

RFCMOS技術で、カーラジオ回路を大幅に小型化、低コスト化している (クリックで拡大)

 ラジオのデジタル放送は、アナログ放送と同様に、世界各国/地域で変調方式、周波数帯などが異なります。各仕向地に合わせたハード、ソフトを用意する必要がありましたた。NXPでは、各方式、各周波数に対応できる1つの共通ハードを作り、ソフトウェアで仕向地に応じ最適化するコンセプトのソフトウェア・デファインド・ラジオ(SDR)対応製品を展開しています。以前は、チューナー(2チップ)と信号処理IC(DSP)の3チップ構成でしたが、現在はそれを1チップにした「Dirana3」やDirana3の廉価版「HERO」といった製品ファミリを投入しています。信号処理とチューナー/RF部を1チップ化した背景には、65nmのCMOSプロセスでRFを構成できる「65nm RFCMOS技術」によるところが大きいです。このRFCMOS技術をベースに、現状アナログ放送と一部デジタル放送に限られているSDR対応をあらゆるデジタル放送でも対応できる製品などを開発ロードマップに従い投入していきます。

――開発ロードマップはどのぐらい先まで、見据えているのですか。

濱田氏 詳しくは話せませんが、開発期間の長い自動車市場に対応するためにも10年以上先を見据えたロードマップを作成しています。自動車/電装品メーカーと話し合いながら、将来のニーズを見極めた詳細な開発ロードマップを作り、自動車/電装品メーカーに提示しています。長く、詳細な開発ロードマップをユーザーと共有できている点は、オートモーティブ市場でのNXPの強みの1つでしょう。

RFCMOS技術が生み出すさまざまな可能性

――新たな自動車の技術としては、車車間通信などを実現する“コネクテッドカー”が注目を集めています。

濱田氏 “Secure Connections for a Smarter World”を掲げるNXPとして当然、“Car to Car”“Car to Infrastructure(インフラ)”といった「Car to “X”」(以下、C2X)を実現する製品、技術開発も積極的に行っています。その1つが、C2Xの無線として有力視されているIEEE802.11p(以下、11p)に関連した取り組みです。Ciscoとともに、11p関連ソフトウェア技術を持つCohdaWirelessに出資し、3社でC2Xに向けたソリューションを開発しています。既に11p対応のハードウェアとして「RoadLINKシリーズ」を製品化し、CohdaWirelessの11pファームウェアと組み合わせた「C2Xリファレンスシステム」を制作しています。現行のC2Xリファレンスシステムは、カーラジオ用LSIでも活用しているRFCMOS技術を駆使し、前世代のシステムより大幅な小型化を実現しています。世界各国でC2Xの実証実験が行われている中で、最も使用されているリファレンスシステムでして、C2Xの領域でも市場をリードして行けるポジションにあります。

――自動車での無線利用が広がる中で、RFCMOS技術の応用範囲は広そうですね。

濱田氏 無線だけでなく、検知用レーダーにも応用を進めています。600MHzのバンド幅を持つ79GHz帯レーダーを実現しようと開発を行っています。現在、市場で使用されている広角だが検知距離が短い24GHz帯と距離は長いがバンド幅が小さく狭角だった76GHz帯の両レーダーを置き換えられる特性を持ちます。加えて、RFCMOSにより、現在主流のGaAs(ガリウムヒ素)デバイスよりも大幅に製造コストを抑えられ、レーダー検知システム価格を下げることができます。そうなれば、車1台当たりのレーダー搭載を増やすことができ、また、イーサネットを使って統合システムが構築できますし、車の全周囲をレーダー監視することもより容易になります。

――その他にも、NFCの車載応用なども提案されています。

開発中のQi準拠のワイヤレス送電ユニットの評価システム。NFCを組み合わせたインテリジェントな車載ワイヤレス給電システムの提案も展開する方針

濱田氏 ワイヤレス給電規格「Qi」とパワーマットに準拠した送電用チップセット/リファレンスシステムなどを開発しており、ワイヤレス給電とNFCを組み合わせた提案も今後、行います。もちろんBluetoothのペアリング用途などスマートフォンなどの情報端末と自動車の連携用途での活用も提案していきます。また、車外の情報と自動車の情報をリンクさせる媒体として「パッシブキー」の提案を行っています。これまでのリモートキーレスシステムに使用されているLF帯無線と、LF帯よりも通信距離の長いUHF帯無線、さらにNFCの機能をキーに持たせることで、自動車から数十m離れたところでも電気自動車の電池残量などをスマホ、PCで確認できるような機能をキーに追加できます。既にパッシブキー向けのLF帯/UHF帯両対応のチップも製品化しており、2016年ごろからの実用化を見込んでいます。

生産、サポート面でも日本の自動車業界に応える

――今後の日本でのオートモーティブ向けビジネスの見通しをお聞かせください。

濱田氏 NXPジャパンの本社(東京都渋谷区)には、X線検査装置やモールド開封解析設備を備えた「解析ラボ」があり、万が一の不具合発生時の一次対応を日本国内で迅速に行える体制があります。こうしたラボを国内に持つ外資系半導体メーカーは数少ないでしょう。また2011年3月の東日本大震災以降、事業継続計画(BCP)の重要性が増していますが、NXPは原則、全ての製品でデュアルファブ/デュアルストック体制を整え、材料もマルチサプライヤー調達を徹底しています。

 技術/製品面だけでなく、サポート面、生産面でも日本の自動車業界の要望に応えられる体制があります。

 自動車の電子化やスマート化はこれからも一層、進展し、ビジネスチャンスはより広がっています。技術、製品から生産、サポートに至るまでのNXPの強みを生かして、引き続き着実な成長を遂げていきたいです。


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提供:NXPセミコンダクターズジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日

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