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イメージセンサーを増強し、車載、産業機器、スマホ分野をさらに強化オン・セミコンダクター 上席副社長 兼 最高技術責任者 Hans Stork氏

オン・セミコンダクターは、パワーデバイスなど「高効率エネルギーソリューション」を中心にした広範に及ぶ製品ポートフォリオを武器に、オートモーティブ、産業機器、スマートフォンといった成長分野で事業を拡大させる方針。さらに直近ではこれら成長分野で需要拡大が見込まれるイメージセンサーメーカーを相次いで買収するなど製品ポートフォリオを一層広げる構えだ。同社上席副社長で最高技術責任者(CTO)を務めるHans Stork氏に、製品開発戦略やイメージセンサー事業強化の狙いを聞いた。

» 2014年08月18日 09時15分 公開
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過去8年で10件以上の戦略的事業買収を実施

――2011年に三洋半導体など数多くの半導体企業を買収され、幅広い製品ポートフォリオをお持ちですね。

Stork氏 過去8年の間に10を上回る戦略的な企業/事業買収を行ってきました。その結果、ディスクリート半導体など汎用製品から、ASIC/ASSP、SoCまで顧客のあらゆるシステム要件に応えられる製品ポートフォリオを構築できてきたと思います。また、単に幅広い製品構成を持つだけでなく、産業機器向けASIC、IPM*)、特に車載開発に要求される小型化、軽量化、燃費効率を達成するために当社が独自開発したモジュールや白モノ家電向けインバータ用IPM、PC向けDC-DCコンバータ、リニアレギュレータ、オーディオ用DSP、高速イメージセンサーなど世界シェア1位、2位を占める有力な製品でポートフォリオを構成できている点は、当社の強みだと考えています。

*)IPM:インテリジェント・パワー・モジュール

――用途別のビジネス規模はどのようになっていますか。

Stork氏 「オートモーティブ」、「コンピューティング」、「コンシューマ」、「コミュニケーション」、「工業/医療/航空軍用」の5つの用途分野がほぼバランスしているといえます。最も売り上げ構成比の高いオートモーティブでも売り上げ比率27%になっています。

「世界シェア1位、2位の有力製品」を成長分野へ

――今後、注力される分野はどの辺りになりますか。

主な製品と注力分野のイメージ

Stork氏 これら5つ用途分野に対し、リーダーとして世界シェア1位、2位を握る製品を継続的に展開していきますが、その中でも成長する分野に特に注力していきます。具体的には、オートモーティブ、LED照明、スマートフォン/タブレットといった用途分野と、幅広い用途で需要拡大が見込める「HPPC/モータ制御」「イメージセンサー」といった製品分野になります。

――イメージセンサーでは2014年に入り、トゥルーセンス(Truesense/3月買収完了)、アプティナ(Aptina/7〜9月期買収完了見込み)と2社のイメージセンサー企業買収を決定されました。

イメージセンサー事業強化の変遷

Stork氏 当社は2011年にサイプレス(Cypress)のCMOSイメージセンサー事業を買収するなどこれまでも産業機器、医療機器、化学機器など非民生機器に向けた高性能イメージセンサー事業を強化してきました。3月に買収したトゥルーセンスは、非民生機器向けの高性能CCDイメージセンサーを得意とし、CMOSとCCDという2つの高性能イメージセンサーをそろえることができました。これらのイメージセンサーは、高速で、高精細、ダイナミックレンジが広いといった特殊性の強い産業用イメージセンサーです。中には、1枚のウエハーが、1つのイメージセンサーというような大規模なものもあります。

 一方で、アプティナは、より汎用性の高い製品群が中心であり、旧トゥルーセンスの製品を含めた当社イメージセンサーのポートフォリオを補完するものです。特に、注力分野でもあるオートモーティブ向けのイメージセンサーでアプティナは世界トップシェアを誇ります。当社の高性能イメージセンサー技術と融合させることで、車載機器、産業機器など幅広い分野でより確固たる地位を築いて行けると考えています。

――アプティナは、民生機器向けイメージセンサーも手掛けています。

Stork氏 会社全体として注力しているオートモーティブ、スマートフォン/タブレット、産業機器分野向けを強化していき、(デジタルカメラ向けなど)民生機器向けについては現状のビジネス規模を維持していくような事業展開になると思います。

イメージセンサー強化で、「車載グローバルサプライヤートップ10」のビジネスをさらに拡大

――自動車市場に向けては、イメージセンサー以外にどのような製品を展開されますか。

あらゆる用途に対応する車載向けイメージセンサー

Stork氏 オン・セミコンダクターは「グローバルトップ10 車載半導体サプライヤー」として、車載用ICの標準規格 AEC-Q100/ 101に準拠した製品をディスクリートからアナログ、ミックスドシグナル、ASIC、ASSPまで幅広く取りそろえています。

 繰り返しになりますが、ここにアプティナが得意とする車載用イメージセンサーが加わったことは、非常に大きな意味を持ちます。今後、急速に普及していくであろうADAS(先進運転支援システム)に対し全てのキーデバイスを提供できるようになり、オートモーティブ向けビジネスの成長が一層、加速するでしょう。

高耐圧対応進むパワーデバイス

――パワー半導体、パワーマネジメント製品の開発状況はいかがですか。

パワーデバイスの製品構成概要

Stork氏 パワー系ソリューションのベースとなるパワー素子(パワーディスクリート)に対しては過去3年間、大きな投資を行ってきました。特に投資を行った領域が、高電圧に対応するためのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)製品です。当社では、「Field Stop」(FS)と呼ぶ独自技術を採用した低オン抵抗を特長とするIGBTを展開し、最新世代の「FS III」などで600V〜1700Vの高耐圧品を新たにラインアップしました。

――数社の有力メーカーがシェアを握る高耐圧IGBT市場での勝算はありますか。

Stork氏 高耐圧IGBTのユーザーは、その市場環境から、良いセカンドソースを求めています。当社の製品は、トレンチゲート技術やウエハー薄化技術を駆使し低オン抵抗など優れた性能を備えています。それに加えて、ローコストな製造を実現しており、高性能と低価格を実現しています。まずは、理想的なセカンドソースとして市場に浸透して行く方針です。

――どのようにしてローコスト製造を実現されているのですか。

Stork氏 中国で製造するなどのローコストオペレーションに加えて、低コスト製造を実現する技術も多く導入しています。例えば、レーザー/プラズマダイシング技術です。従来の機械切断であれば、ダイシング時のロスは50μm幅で生じますが、プラズマ切断であれば、ダイ間の間隔は10μm幅で済みます。ウエハー1枚当たりの生産量を増やせる上に、ダイの切断面も高精度でコントロールでき、歩留まりも高くなる効果を生み、ローコスト製造に貢献しています。

高効率パッケージ技術を駆使し、効率、サイズ、コストを最適化

――中低耐圧のパワー製品の開発状況はいかがですか。

Stork氏 BCD(バイポーラ CMOS DMOS)プロセス、CMOSプロセスそれぞれで高耐圧、大電流対応を進めており、デジタル回路を統合した高集積型製品の開発を加速させています。

 低耐圧、高耐圧を問わず、パワーデバイスは「効率×小型化÷コスト」という式を最大化する必要があるでしょう。小型化には、スイッチング周波数の高速化が欠かせません。けれども、高速化すれば、スイッチング損失が増大し効率が低下するというトレードオフを抱えます。当社では、このトレードオフ関係とコストをうまくバランスさせたデバイスを提供できていると自負しています。

 そして、こうしたパワーデバイスの開発と並行して、パッケージング技術の開発にも力を入れています。耐圧1700Vクラスのパッケージから1mm角よりも小さなパッケージまで、幅広いパッケージを扱っており、小型化、高電力密度化を実現するパッケージ技術ではリーダーだと自負しています。現在、中低耐圧向けパッケージでは、受動部品も集積するモジュール型パッケージの開発を進めており、中高電圧のIPMでは、得意とするIMS(絶縁金属基板)技術をさらに進化させ、高密度化を進めています。

本格需要期を見据えたGaNパワーデバイス開発

――パワーデバイス分野では、シリコンに代わる次世代材料としてGaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)が注目され、多くのパワーデバイスメーカーが製品化しつつあります。

Stork氏 当社もGaNやSiCといった次世代パワーデバイス材料がパラダイムシフトを起こすとみており、GaNデバイスの開発を行っています。2013年にはベルギー・アウデナールデにGaN-DHEMTに対応した前工程製造ライン(6インチウエハー対応)を稼働させ、2014年4月にはチェコの拠点で、シリコン基板上にGaN層を形成するウエハー製造にも成功し着々と量産に向けた準備が進んでいます。既に耐圧650Vで50A対応のDHEMTを85%以上での歩留まりで製造できることを確認しています。

 量産時期については2015年末を計画しています。競合他社が製品化している中で、2015年末の量産は遅いように思われるかもしれませんが、われわれがターゲットにしているのは、GaNデバイス需要が本格化する時期です。GaNデバイスでもしっかりとした量産技術を確立し、大きなボリュームに応えられる体制を築いた後に量産を行う方針です。


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提供:オン・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日

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