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“超低消費電力、小型で電波がよく飛ぶ無線”でIoT構築を東京コスモス電機 ワイヤレス事業部 ゼネラルマネージャー 齋藤弘通氏

東京コスモス電機は、IoT(Internet of Things)市場を狙ったワイヤレス事業を拡大させている。さまざまなベンダーが無線モジュールなどの製品をIoT市場に向けて投入する中、「当社のワイヤレスプラットフォームは、“超低消費電力、小型で電波がよく飛ぶ無線”であり、最もIoTに適した無線」と言い切る同社ワイヤレス事業部 ゼネラルマネージャー 齋藤弘通氏に聞いた。

» 2014年08月25日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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今世紀最大規模の成長が見込める市場

――2010年からワイヤレス事業を立ち上げられましたが、その狙いを教えてください。

齋藤氏 当社は、2010年以前から常に、新規事業の立ち上げを模索し、さまざまな取り組みを行ってきました。その中で、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)分野は、“今世紀最大規模の成長が見込める市場”と呼べる程の大きなビジネスの可能性を秘めた分野だと捉えています。このIoTの市場で、“モノをつなげる”いう部分でわれわれにもチャンスがあると判断し、ワイヤレス事業の立ち上げを行いました。

――ポテンショメーター(可変抵抗器)や位置センサーなどを応用した車載電装部品といった主力製品事業と、ワイヤレス事業の関連性は薄く感じられます。

齋藤氏 主力事業との直接的な関連性はあまりないですが、これまで何度も新たな事業創出を目指した技術、製品開発を行ってきました。ハイブリッドICやソーラーシステム関連技術など多岐にわたる開発を進め、その中ではページャー(ポケットベル)の開発を行った時期もありました。そういう背景もあり、当社には、ワイヤレス事業を立ち上げるための要素技術がそろっていた訳です。

IoTを、より簡単に、より安く

――IoT市場を狙った無線ICや無線モジュールベンダーは多く、競争の激しい市場となりつつありますが、東京コスモス電機の強みはどの辺りにありますか。

齋藤氏 われわれは、独自の無線ICを開発、製造する訳ではありません。そのため、無線ICを外部調達し、無線モジュールだけを組み立てて販売するのですが、無線モジュール販売だけでは、競合も多くビジネスとしては成り立たないでしょう。そこで、われわれは事業立ち上げ当初から、“IoTを、より簡単に、より安く開発できるためのプラットフォームを提供する”というコンセプトを掲げて、無線モジュールとともに、開発プラットフォームの構築、拡充を積極的に進めてきました。事業立ち上げから4年経過し、まだまだ構築途上ではありますが、開発プラットフォームも充実してきており、われわれの強みとなりつつあります。

 また、技術面でも、“超低消費電力”、“小型サイズ”、そして“電波がよく飛ぶ”という3つの点で、他に負けない製品、技術を実現できており、強みになっています。

1円玉よりも小さな無線モジュール「TWE-Lite」(トワイライト)

――現状の主力無線モジュール製品となっている「TWE-Lite」(トワイライト)について教えていただけますか。

齋藤氏 TWE-Liteは、外形寸法が13.97×13.97×2.5mmで重さが0.93gと1円玉よりも小さくて軽い小型モジュールで、2.4GHz帯無線回路の他、32ビットのRISCマイコン、160kバイトのフラッシュROM、32kバイトのRAM、周辺回路を搭載しています。

――ZigBeeなどの通信に対応しているのですか?

齋藤氏 IEEE802.15.4規格ですので、ZigBeeなどにも対応できますが、より簡単に、より安く開発できるためのプラットフォーム提供の一環として、独自通信ソフト「ToCoNet」(トコネット)を開発し、無償で配布しています。ToCoNetはセンサーネットワークなど主な無線用途で実用的な要求事項を満足する機能を選択し実装しています。スター型、ツリー型、リニア型の各マルチホップネットワークに対応できる他、複数のチャネルを利用して電波干渉を避ける「チャネルアジリティ機能」なども備え、多機能で安定した無線がロイヤリティ、ライセンス料なしに利用できるようになっています。

最大4km以上の通信距離を確保

――TWE-Liteの通信距離はいくらぐらいですか。

さまざまな形状のモジュールやオプションアンテナがそろう

齋藤氏 TWE-LiteをDIP形状の基板に実装したTWE-Lite DIP(写真)を製品化していて、この製品に標準的に取り付けている“マッチ棒型アンテナ”を使用した場合に、見通し(自由空間)1kmの通信距離が確保できます。“マッチ棒型アンテナ”以外にも基板アンテナなども用意している他、大型アンテナを取り付けられるインタフェースを備えたモジュールも製品化しています。大型アンテナを取り付けた場合には、見通し4km以上の通信が行えることを確認しています。

――昨今では920MHz帯などサブギガヘルツ帯無線が“よく飛ぶ無線”として注目を集めていますが、920MHz帯対応製品の開発予定などありますか。

齋藤氏 まず、昨今、サブギガヘルツ帯無線はよく飛ぶというイメージが定着していますが、これはある種、間違った理解だと思っています。特性上、低周波数の電波の方が、直線性が低く、回り込みやすいのは確かですが、2.4GHzと920MHzとでは、大きく変わらないでしょう。ただ、920MHz帯は、規制緩和により最大送信出力を2.4GHzの10mWに対して20mWまで高められるので、よく電波が飛ぶといえるかもしれません。しかし、同じ送信出力であれば、ほとんど変わらないでしょう。また、送信出力を上げると消費電力が大きくなるというデメリットもあります。

 電波の“飛ぶ”、“飛ばない”を左右するのは、周波数よりも、実はアンテナによる部分が大きいのです。当社では、先に紹介したように、独自にさまざまなアンテナを開発しモジュールとアンテナの組み合わせで、長い通信距離を確保しています。

 ちなみに、一時期、920MHz無線の開発検討を行いましたが、2.4GHzのアンテナと同じような性能のアンテナを設計したところ、アンテナサイズが何倍も大きくなってしまい実用的でないという判断で採用には至りませんでした。

無線モジュールは、エナジーハーベストで動作可能

――消費電力については、いかがですか。

齋藤氏 無線回路設計の工夫などで、消費電力を抑えるなどしています。その結果、1パケット送信時の平均出力電流は11.6mA、処理時間は2.5msです。仮に、コイン型電池(CR2032/容量220mAh)を使い5秒間隔で通信しても3年以上、30秒間隔であれば10年以上、電池交換なしに動作するようになっています。

エナジーハーベスト用オプション基板を使用した試作リモコン。小型ソーラーパネルの発電エネルギーだけでスイッチが押された情報を無線伝送する

 2014年6月には、TWE-Liteの消費電力の低さを生かして、ソーラーパネルの発電電力でTWE-Liteを動作させるためのオプションの電源制御基板を発売しました。電卓で使用される31.2×10.8mmサイズの小型ソーラーパネルだけでもTWE-Liteは動作します。このような小型ソーラーパネルの発電電力だけで動作する無線モジュールは他にはないでしょう。TWE-Liteの消費電力がいかに小さいかがお分かりいただけると思います。

――今後の開発方針をお聞かせください。

齋藤氏 モジュールとしては、サイズ、性能ともに高いレベルにあり、引き続き、開発プラットフォームの拡充を行っていきます。

――通信ソフト/アプリケーションソフト、アンテナ、ソーラーパネル接続用基板と拡充されてきた開発プラットフォームのこれからの展開を教えてください。

齋藤氏 あまり詳細はお話しできませんが、新たな取り組みを予定しています。もちろん、アプリケーションソフトの拡充や、ソーラー以外の発電素子を接続できる電源基板なども増やしていく方針です。

残る課題は、「知名度のみ」

――TWE-Liteも発売から1年が経過しましたが、ワイヤレス事業のビジネス状況はいかがですか。

齋藤氏 事業立ち上げ時は、IoT、センサーネットワークといっても、“何を作ろうか?”というような手探りのユーザーが多かったが、最近では、作りたいモノがハッキリしてきており、実ビジネスが拡大しつつあります。過去1年程度で年間数千個単位の小規模量産案件での採用が増え、最近では年間10万個以上という量産案件での受注も見えつつある状況です。用途もインフラ監視、介護見守り、ヘルスケア、農業、産業機器関連などさまざまなところで採用が増えつつあります。

 “低消費電力で通信距離が確保できる唯一の実用的な無線”として評価されており、今後、急速に事業規模が拡大する手応えはあります。最大の課題は、TWE-Lite、ToCoNetをいかにより多くの皆さんに知っていただくかです。開発プラットフォームの拡充と並行して、知名度向上を図っていきたいと思います。


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提供:東京コスモス電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日

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