Special
» 2014年09月01日 00時00分 UPDATE

NIWeek 2014現地リポート:5G時代に備える――“Software-Designed”で切り開く次世代通信技術

2020年の実用化に向けて開発が進む第5世代(5G)無線通信規格。だが、5Gは現時点では何も定義されておらず、技術開発は流動的であるといえる。それ故、通信技術の開発に欠かせない計測器にはこれまで以上に柔軟性が要求されるようになっている。そこでナショナルインスツルメンツ(NI)が提案するのが、“Software-Designed(ソフトウェア設計型)”のコンセプトだ。

[PR/EE Times]
PR

 第3.9世代無線通信規格のLTEが商用化されて約4年。韓国や米国などの一部の地域では、第4世代(4G)無線通信規格のLTE-Advancedのサービスも始まった。商用サービスでは、LTEの本格普及が始まったばかりの段階だが、技術開発の世界では第5世代(5G)の研究が2020年の実用化に向けて既に始まっている。

 だが、「規格」という点からいえば5Gは何の定義も決まっておらず、“中身”はないに等しい。むしろいかに標準化していくかを探っている段階である。ただし、一般に5Gに求められる要件として、LTEの約100倍となる10 Gビット/秒の通信速度、約1000倍の通信容量、1 ms以下の遅延などが挙げられていて、これを実現するための技術開発が進められている。大きな方向性としては、高周波帯域/広帯域幅を利用すること、大規模なMIMOシステムの導入で容量を上げること、スモールセルを設置してネットワークを高密度化することなどがある。

 もちろん、関連する課題は多い。ミリ波など高周波を使う場合、信号の伝送損失が低周波帯域に比べて大きいことから、高度なビームフォーミングを用いる必要がある。複数の送受信アンテナを使うMIMOも、LTEでも2×2本のアンテナ数のMIMO(2×2 MIMO)や4×4 MIMOだったものが、5Gでは128×128 MIMOのように一気にアンテナの本数が増加するとされる。

 MIMOなど既存の技術を応用しているとはいえ、LTEやLTE-Advancedよりも大幅に複雑で高度な技術を使い、さらに標準規格がない中で開発が進む5Gでは、多くの要求に柔軟に、かつ容易に応えられるRF計測器が必要になる。そこでナショナルインスツルメンツ(NI)が提唱するのが「Software-Designed Instrument(ソフトウェア設計型計測器)」というコンセプトだ。

Software-Designed Instrumentとは

 Software-Designed Instrumentは、ひと言でいえば「FPGAを書き換えて機能をカスタマイズできるRF計測器」である。NIのシステム開発ソフトウェア「LabVIEW」でFPGAを書き換えることで、RF計測器のさまざまな機能を“設計”できる。ベンダ側ではなくユーザ側が自分のニーズに合わせて機能を変えられることが、従来の市販のRF計測器とは決定的に異なる点だ。

 このSoftware-Designed Instrumentのコンセプトを初めて全面的に打ち出した製品が、2012年に発表した「ベクトル信号トランシーバ」(「PXIe-5644R」)である。ベクトル信号トランシーバは、RF信号を出力するベクトル信号発生器と、RF信号を解析するベクトル信号アナライザを統合したもので、PXI Systems Alliance(PXISA)が管理するオープン規格「PXI Express(PXIe)」に対応したモジュール式計測器だ。ハードウェアに搭載されたFPGAは、RF信号の入力経路および出力経路の他、DRAMやSRAM、デジタル入出力など全ての信号経路につながっている。このため、FPGAのロジックを書き換えることで機能を細かくカスタマイズすることが可能になっている。

mm_niw2014t1_fig1.jpg ベクトル信号トランシーバの構成 ベクトル信号発生器とベクトル信号アナライザを組み合わせる従来の計測器に比べて、格段に小型化しているのが分かる。2012年にベクトル信号トランシーバを発表した際、NIはSoftware-Designed Instrumentを“計測を再定義するもの”と強調した

 LabVIEWでFPGAを書き換えるという点も大きな特長だ。ユーザはLabVIEWを使うことでRF信号の処理経路などをグラフィカルに記述できる。専門的な知識が必要なHDL(ハードウェア記述言語)は一切いらない。しかも、RF計測に必要な基本的な処理については、NIがLabVIEWの「サンプルプロジェクト」として用意しているので、これをベースにカスタマイズすればよい。もちろん、最初から全ての処理をプログラミングすることも可能だ。

 従来の計測器でもファームウェアによってある程度機能のアップデートは図れるが、これはあくまでもベンダ主導のアップデートであって、ユーザが自分の手元で思い通りに機能をカスタマイズできるというわけではない。また、FPGAを搭載するRF計測器はあっても、そうした機種ではFPGAの機能が固定され、ユーザがカスタマイズできることはほとんどないのが現状だ。ファームウェアでアップデートする従来型の計測器が「Software Defined(ソフトウェア定義)」と呼ばれるのに対し、NIは「Software-Designed」と呼ぶことで、高度なカスタマイズ性を強調している。

 ベクトル信号トランシーバは、基地局のテスト、パワーアンプ(PA)の評価システム、無線チャネルエミュレータなど幅広い用途で採用され、販売台数と売り上げの面でも、大きな成功を収めることになった。

容量を増加させる解=スモールセル

 先に述べたように、5Gでは通信容量は約1000倍になるといわれている。これを実現する解の1つがスモールセルだ。スモールセルを設置することで1つの基地局が抱える端末の数を減らし、端末当たりの帯域を確保する。スモールセルは小型で低消費電力のため、人口密度が高いエリアに比較的容易に設置できる。だが、基地局の数が増えるということは、それだけ試験の数とそれに伴うコストも単純に増えるということでもある。無線通信向けのテストシステムなどを手掛け、NIのアライアンスパートナでもあるスウェーデンのGTT(Gefle Testteknik)は、基地局の試験システムにNIのベクトル信号トランシーバを導入することで、コストを低く抑えつつスモールセルのテストを大量に行うことに成功した。

 スモールセルは、2G、3G、4Gといった複数の規格の信号を扱う。GTTはベクトル信号トランシーバと、FPGAを内蔵したモジュール「FlexRIO」を組み合わせることで、複数のセルラーバンドをワンショットで捕捉し、各周波数バンドに分割して並列で解析できる。つまり、2G/3G/4Gの信号に対して3GPPに準拠したテストを並列して同時に行えるようになる。NIのテクニカルカンファレンス「NIWeek 2014」においてGTTは、GSM信号4チャンネル、CDMA信号2チャンネル、LTE信号2チャンネルを同時に捕捉し、これら8チャンネルを周波数ごとに分割して2秒以内で解析するデモを披露した。GTTによれば、解析時間は従来のRF計測器の約1/10だという。

mm_niw2014t1_fig2.jpg GTTのスモールセル向けテストシステムの概念図

 従来のRF計測器を使う場合、2G用、3G用、4G用に1台ずつ計測器を用意しなくてはならない。ベクトル信号トランシーバとFlexRIOであれば、両方に搭載されているFPGAをピア・ツー・ピアで接続して大容量のFPGAを確保し、受信したRF信号を全てFPGAでリアルタイムに処理することで、並列の解析を可能にしている。新しい通信方式が登場しても、それに対応するようにソフトウェアを変更すれば、同じハードウェアの組み合わせで新たな通信方式も並列にテストできることになる。

ミリ波帯の活用

 高帯域/広帯域の活用の一例として、ノキアは、ミリ波の活用に取り組んでいる。主に70 GHz〜80 GHz帯の周波数帯で、1 GHzの周波数帯域幅を想定しているものだ。ノキアのNorth America Radio System Researchを統括するAmitava Ghosh氏によれば、「問題は1 GHzもの帯域幅を持つ信号をリアルタイムで解析できるハードウェアが存在しないということだった」。そこでノキアは2014年5月にNIと提携、PXIとFlexRIOを採用して5G通信向けプロトタイプの構築に取り組んだ。具体的には、ミリ波を送受信した後のベースバンド信号について、変調、復調、チャネルコーディング/デコーディングといった処理をリアルタイムで行うシステムである。FlexRIOを何枚も用いてピア・ツー・ピアでデータを共有し、PXI上で同期を取ることで大容量のベースバンド信号を処理できる。さらに、こうしたシステムを「1年以内」(ノキア)という短期間で構築していることも特徴である。

mm_niw2014t1_fig3.jpg NIのRF and Wireless testでProduct Marketing Managerを務めるDavid Hall氏

 NIは、ベクトル信号トランシーバに続くSoftware-Designed Instrumentsとして、ベクトル信号アナライザ「PXIe-5668R」を発表した。同製品は、中間周波数(IF)デジタイザ「PXIe-5624R」、ダウンコンバータ「PXIe-5606」、シンセサイザ「PXIe-5653」で構成されている。測定周波数が26.5 GHzで765 MHzの帯域幅を備えていることが最大の特徴だ。5Gでは広帯域幅の利用が1つの鍵になるが、そこでは1 GHzの帯域幅が必要だとされている。NIのRF and Wireless testでProduct Marketing Managerを務めるDavid Hall氏は、「現時点で765 MHzの帯域幅を実現しているアナライザは他にない。その意味でわれわれはトップに立っているが、今後数年間で、1 GHz以上の帯域幅の信号を測定できる計測器を開発すべく、計測器ベンダは激しい競争を繰り広げていくだろう」と語っている。

 さらに、PXIe-5668RでもFPGAをユーザが自由に書き換えられるので、新しい通信方式のテスト方式をFPGAに実装することで対応できる。同じ広帯域幅を実現した計測器が市場に登場した場合、このSoftware-Designed Instrumentsという特徴は大きな差異化要因になるだろう。

mm_niw2014t1_fig4.jpgmm_niw2014t1_fig5.jpg ベクトル信号アナライザ「PXIe-5668R」 PXIe-5668Rの実機(左)。26.5 GHzの高帯域で765 MHzの帯域幅を備えている(右)。このような広帯域幅の実現には、A/Dコンバータの進化が大きく貢献している。ただし、5Gの世界では1 GHz以上の帯域幅に対応する計測器も求められている

5Gを見据えて5年

 NIがRF/ワイヤレス市場に本格的に参入したのは約5年前である。当初から、NIは明確に5Gをターゲットに据えてきた。同社は先述したノキアの他、NTTドコモ、Samsung Electronics、ドイツ ドレスデン工科大学、スウェーデン ルンド大学などと提携し、5Gの技術開発に向けてLabVIEWやPXIなどを、一連のプラットフォームとして提供している。2014年2月に提携を発表したルンド大学とは、100個の送受信アンテナを備える大規模MIMOのテストシステムの構築に取り組んでいる

mm_niw2014t1_fig6.jpg 大規模MIMO向けテストシステムのデモ 展示用なので規模は縮小している。NIのソフトウェア無線機「USRP」とPXIを組み合わせたシステムである。複数のUSRPがPXIに接続されていて、PXIがホストPCと通信してコントローラの役目を果たす

 Hall氏は、「5G開発の裏にある最大の目的の1つは、データをより多く送信することができる十分な帯域を探すことにある」と語る。5G開発におけるNIの役割は、プロトタイプを素早く作る方法を提供することだ。エンドユーザーだけでなく、エンドユーザーに製品やシステムを提供するNIのパートナー各社がFPGAを書き換えられるだけでも、プロトタイプの開発期間は大幅に短縮される」(同氏)。2020年の実用化に向けて5Gの開発が加速する中、柔軟性を持つNIの“Software-Designed Instruments”が果たす役割はますます大きくなっていくだろう。


この記事に興味のある方におすすめのホワイトペーパー:


不可能が可能になる!導入事例から学ぶ、
RF/ワイヤレステストの時間短縮とコストの削減方法


Hittite Microwave社や古野電気、JAXAなどのRF/ワイヤレステストの導入事例を集めた資料集です。これまで不可能だと思われていたことを可能にし、さらにテスト時間の短縮やテストにかかるコストなどの削減を実現。事例から問題の解決方法を紹介している。

▼ ▼ ▼

ay_ttimg.jpg


Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日

RSSフィード

All material on this site Copyright © 2005 - 2017 ITmedia Inc. All rights reserved.
This site contains articles under license from UBM Electronics, a division of United Business Media LLC.