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» 2014年10月29日 10時00分 UPDATE

鍵はペリフェラル!:第4次産業革命/サイバーフィジカルシステムを実現するためのマイコンとは

世界の産業界で注目を集めるキーワード「第4次産業革命」。この革命を実現するためには、あらゆる機器をネットワークに接続する必要がある。末端の小さな機器までをネットワークに結び付けるためには、マイコンによるネットワーク化が不可欠だが、性能、消費電力などさまざまな要件をクリアする必要がある。果たして、第4次産業革命を起こしうるマイコンとはどのようなものなのだろうか。

[PR/EE Times]
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現実と仮想がつながる世界

 現在、産業界で注目を集める言葉の1つに「第4次産業革命」(Industry4.0/インダストリー4.0)がある。

 第4次産業革命とは、1780年代に英国で蒸気機関の応用で起こった産業革命から数えて4番目の産業革命を指す。1870年代の食品保存技術や生産/加工技術が発達した第2次、1970年代の自動車の製造工場でPLC(Programmable Logic Controller)を使った制御が導入されるなど、エレクトロニクスとITによるオートメーション化に端を発した第3次の産業革命に続くものだ。

 第4次産業革命を起こすとされるのが「サイバーフィジカルシステム」(Cyber-Physical Systems)だ。現実世界の機器(Physical-Systems)と、仮想世界といえるクラウドなどのコンピューティング(Cyber-Systems)を結び付け、よりインテリジェントな生産を実現しようというもの。このサイバーフィジカルシステムを実現するには、現実世界の機器の情報をより多くクラウドなどのコンピュータシステムに蓄積する必要があり、現実世界の機器にはネットワーク接続が不可欠になる。

 産業機器のネットワーク対応自体は昨今、珍しくないだろう。「EtherCAT」や「MECHATROLINK」「CC-Link」など産業機器をネットワークに接続するための産業用イーサネットの規格の名を耳にしたことがある読者がほとんどだろう。

 しかし、サイバーフィジカルシステム、強いては第4次産業革命を実現するためには依然、“機器のネットワーク対応”が大きな問題として立ちはだかっている。

 先にも述べたように、産業機器のネットワーク対応自体は珍しいものではなく、ネットワーク機能を機器に組み込むことは特段、高度なことではなくなってきている。しかし“全ての機器にネットワーク機能を組み込む”となれば話が変わってくるのだ。

 現状、多くの工場でネットワーク化されている機器は、生産工程で大きな鍵を握るような一部の機器だけにとどまる。こうしたコアとなる機器を取り巻く、大多数のモータや汎用インバータなどの機器はネットワークの外に存在しているのが現状だ。クラウドシステムなどを活用した工場全体での生産効率の向上、省エネ化などの実現は、こうした大多数の機器をネットワーク化してこそ、はじめて実現される。真のサイバーフィジカルシステムを実現させるには、“全ての機器にネットワーク機能を組み込む”ことが不可欠なのだ。

なぜ、全ての機器はつながらないのか?

 産業用イーサネットなど産業機器向けのネットワーク技術が確立されているにもかかわらず、なぜ、工場の大多数の機器でネットワーク対応が進んでいないのだろうか?

 その答えは、ネットワーク機能を搭載したいけれども、搭載できなくしている“制約”が数多く存在しているからにすぎない。

 現状、ネットワーク化されていない産業機器の中身をみると、モータ/インバータの駆動用パワー半導体と制御用マイコンというキーデバイスで構成される場合が多いはずだ。一方で既にネットワーク対応された機器は、制御系に大規模SoCとともに、ネットワーク専用SoCを搭載するケースがほとんどで、ネットワーク未対応機器と比べれば、かなりリッチなデバイスで構成されている。

 こうしたマイコン制御主体の機器にネットワーク機能を搭載する最も簡単な方法は、ネットワーク用プロセッサを追加することだ。しかし、コストやサイズの問題から大きなデバイスの追加は容易ではない。そしてデバイスの追加は、消費電力の増大を必ず伴う。仮に機器1台当たりの消費電力の増大はわずかであっても、そうした機器を何台も使用する工場全体でみれば相当な電力負担になる。省エネ化を含めたスマート工場、インテリジェント工場を目指したネットワーク対応にもかかわらず、消費電力増大を招けば、本末転倒になってしまう。

 新たなデバイスの追加が現実解ではない中、マイコン主体の機器でネットワーク対応を実現する唯一の策が、マイコンでネットワークプロセッサ機能を実現してしまうことだ。実際、そうしたニーズを見越して、イーサネットなどネットワーク機能を実現するマイコンが市販化されている。

 それらネットワーク対応マイコンを使えば、全ての機器のネットワーク対応が実現できるはずなのだが、ご存じのように実現されていない。なぜなら、ネットワーク対応マイコンには、大きな欠点があるからだ。

 ネットワーク機能を実現するための処理量は大きい。処理性能の限られたマイコンには相当な負担になる。その結果、モータ/インバータ制御のなど機器本来の機能を実現するためのCPU性能やメモリ容量が不足するということが少なくないのだ。

十分な性能を持つマイコン

 マイコンでネットワーク対応を実現したいが、十分な性能を持つマイコンがない――。

 この状況を打破する高性能マイコンが登場したという。スパンションの「S6E2CCシリーズ」だ。

 S6E2CCシリーズは、ARM Cortex-M4コアを搭載するマイコン「FM4ファミリ」のモータ/インバータ制御機器向けシリーズであり、ネットワーク機能と高精度なモータ/インバータ制御を両立する処理性能を持ったマイコンとして開発された。

tt141029EI01_001.jpgtt141029EI01_002.jpg 「FM4ファミリの特長」(左)とFM4ファミリの製品ラインアップ(左)。新製品の「S6E2CCシリーズ」は最もハイエンドなシリーズとして製品化された (クリックで拡大)

 最大の特長は、200MHzというマイコンでは最速クラスとなる動作周波数だ。従来のFM4ファミリの最高速製品(160Mz)と比べても1.2倍の高速化を達成している。さらに内蔵メモリも従来比2倍となるフラッシュメモリ2Mバイト(最大)、RAM256Kバイト(最大)に大容量化し、高精度モータ/インバータ処理とネットワーク処理を両立する容量を備えた。

 肝心のネットワーク機能としては、イーサネットMACをはじめ、USB(Full Speed)×2ch(Host+Device)、HDMI CEC×2ch、High Speed Quad SPI、UART/SPI/I2Cといったシリアルインタフェースを自由に選択できる「マルチファンクションシリアル(MFS)インタフェース」を16ch搭載するなど、産業機器用途で使用されるあらゆる通信インタフェースに対応する。センサーや機器間での接続に広く用いられるようになっているCANインタフェースとしては、CAN-FD(1ch)を含む3chを搭載した。CAN-FDは、従来のCAN規格の最高伝送速度を2倍以上に高速化できる拡張規格として車載用途で普及が始まったばかりの最新規格。産業機器分野でも普及はこれからだ。

tt141029EI01_003.jpg 「S6E2CCシリーズ」のブロック図 (クリックで拡大)

CPUに負荷を掛けないペリフェラル

 普及前の次世代通信規格でさえ取り入れたほどネットワーク/通信に強いS6E2CCシリーズは、200MHzという高速動作周波数以外にも、ネットワーク機能とより高精度なモータ/インバータ制御処理を両立させるためのペリフェラルを搭載し、動作周波数以上の処理性能を発揮できるよう工夫されている。

 その1つがFM4ファミリの特長でもある多機能タイマーだ。OCU機能やA-Dコンバータ起動連携機能など独自の機能が盛り込まれている。OCU(Output Compare Unit)機能はFRT(Free Run Timer)のアップカウント側/ダウンカウント側でそれぞれ独立したOCUを設定でき非対称波形などより自由度の高い波形生成を可能にするもの。A-Dコンバータ起動連携機能は、アウトプットコンペアの一致検出後に、専用カウンタレジスタ設定値分をダウンカウントしてA-Dコンバータを起動する「オフセット起動」が行えるものだ。こうした処理はモータ/インバータ制御機器で多用されるものだが、いずれも従来は、CPU側でタイマーのトリガをカウントして処理していたものだ。FM4ファミリ、S6E2CCシリーズでは、CPUに負荷を掛けることなく、タイマーだけで処理可能となっている。

tt141029EI01_004.jpgtt141029EI01_005.jpg 「OCU機能」(左)と「A-Dコンバータ起動連携機能」の概要 (クリックで拡大)

 なお、タイマーのPWM分解能は、最大5.00nsを誇る。タイマーの配置などを工夫したことで、CPUコアと同じ最大200MHzで動作させることに成功した。GaN(窒化ガリウム)などを用いた次世代パワーデバイスの高速スイッチング性能を存分に引き出すような高速制御が行える。

 0.5μsという高速サンプリングを実現する12ビット分解能A-Dコンバータ(3ユニット搭載)でも使い勝手が強化された。上限/下限しきい値と、範囲内/範囲外検出のいずれかを設定でき、不要レベルのデータ変換に対してCPU割り込み発生を抑える「ウィンドコンパレータ機能」を追加した。ここでもCPUへの負荷軽減を実現している。

tt141029EI01_006.jpg A-Dコンバータのウィンドコンパレータ機能の概要 (クリックで拡大)

 さらにS6E2CCシリーズでは、CPUの負荷軽減策としてCRC(Cyclic Redundancy Check)を強化したPRGCRC(Program Cyclic Redundancy Check)を新規搭載した。PRGCRCはCRC16、CRC32のみでなく、生成多項式を追加できる機能で「大幅なCPUの負荷軽減に貢献する機能だ」とする。

 性能のボトルネックになりがちなバスやメモリインタフェースなども強化されている。フラッシュアクセラレータと呼ぶバッファメモリ機能により、200MHzの高速動作時でも“ゼロウエイト”(待機時間なし)のフラッシュメモリアクセスを実現している。ペリフェラルバスも低速バスではなくメインバスに用いる「AMBA ハイパフォーマンスバス」(AHB)を用い200MHzでのアクセスを可能にしている点も大きな特長といえる。

tt141029EI01_007.jpg 高速化されたGPIOアクセスのイメージ (クリックで拡大)

 外部バスでも、外付けSDRAMに対応した他、SDインタフェースを搭載した。このSDインタフェースには、専用コントローラと独立したAHBを配し、CPUやDMAC、DSTCに負荷を掛けずにデータの転送が行える。このため、SDインタフェースを持つWi-Fiなどの無線モジュールを使った通信を行っても、安定した通信が行えるようになっている。

 高性能、多機能を実現したS6E2CCシリーズだが、消費電力は従来のFM4ファミリと同等に抑えたという。既に量産出荷中であるFM4ファミリの160MHz動作品の消費電流は「業界トップクラス」(スパンション)という1MHz当たり0.338mAという消費電流で「S6E2CCシリーズでも同等以下の消費電流を実現する見込み」(スパンション)。また待機時の消費電流抑制対策として、使わないペリフェラルへのクロックを停止する機能(周辺クロック停止機能)や、電源分離してRTC(リアルタイムクロック)動作時電流を1.6μA以下に低減する機能を搭載している。

 多彩な通信インタフェースに、200MHzの高速動作、2Mバイトのフラッシュメモリ、CPU負荷を軽減するモータ/インバータ制御向けの豊富なペリフェラル――。これまでネットワーク機能を実装できなかった多くの機器を、S6E2CCシリーズがネットワークへとつなげていく可能性は高そうだ。

 ただ、1つだけ懸念材料が残る。マイコン制御主体の機器がネットワークにつながっても、セキュリティが十分に確保できるかどうかだ。

気になるセキュリティ

 ネットワークを走るデータが増えれば増えるほど、ネットワークの価値は向上し、そのネットワーク上のデータが狙われる危険性が増す。ハッカーはネットワークの最も弱い部分を狙って攻撃を仕掛けてくるだろう。その時、ターゲットにされるのは、最もハードウェア構成として簡素なマイコン制御機器になる可能性が大きい。

 S6E2CCシリーズのセキュリティ対策は、どうなっているのだろうか。

 S6E2CCシリーズはハードウェア暗号マクロを搭載する他、先に紹介したPRGCRCなども使用してイーサネット対応などで不可欠となっているAESやSHA-256といった暗号処理をCPU負荷なく行える機能を備える。外付けメモリと接続する外部バスからのデータ抽出の危険性に対しても、バスデータを複雑に入れ替えるスクランブル処理を行い伝送するためのライブラリも提供される。その他にもフラッシュメモリのセキュリティコード領域に保護コードを書き込むことでアクセスを制限し、外部端子からデータを読み出し/書き込みできない機能も備えている。

tt141029EI01_008.jpg S6E2CCシリーズが対応する暗号マクロと提供予定のセキュリティ関連ライブラリ一覧 (クリックで拡大)

 こうしたセキュリティ機能は、より高い水準の堅牢性が要求されるアミューズメント機器や電力メーターなどでの使用に耐え得るものとして、S6E2CCシリーズに実装されているものだという。このようなセキュリティ機能を搭載したS6E2CCシリーズは、サイバーフィジカルシステムの一部を構成するデバイスとしても十分なセキュリティ性能を備えているといえるだろう。

さあ、第4次産業革命だ!

 S6E2CCシリーズの登場で、安全を担保しながらネットワークにつながる機器は、確実に増えていくだろう。そう遠くない将来に、真のサイバーフィジカルシステム、第4次産業革命が実現されるのかもしれない。


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提供:Spansion Inc.(スパンション)
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年11月28日

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