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有線通信編:40Gビット/秒の超高速伝送を実現する回路技術徹底プレビュー「ISSCC2015の歩き方」(7)(1/2 ページ)

無線、有線ともに、通信技術への関心は高い。今回は、第6回の無線通信技術に続き、有線通信の注目講演を紹介する。具体的には、低消費電力の10Gビット/秒シリアルリンクや、シリコンフォトニクス技術による高速トランシーバなどがある。

» 2015年01月05日 16時00分 公開
[福田昭EE Times Japan]

有線通信(ワイヤラインコミュニケーション)の基礎

 有線通信(ワイヤラインコミュニケーション)は、主に3つの要素技術で構成される。送信器(トランスミッタ)、受信器(レシーバ)、それから伝送媒体(メディアあるいはチャンネル)である。

 送信器には周波数基準の発生回路、信号を増幅するパワーアンプ、伝送媒体の特性をあらかじめ補償する回路、信号を変調する回路、などが載る。受信器には、微小な信号を増幅する低雑音アンプ、周波数基準の発生回路、伝送媒体の特性を補償する等化器、信号を復調する回路、などが載る。送信器と受信器をまとめた回路が、トランシーバである。

 伝送媒体には金属ケーブル(銅ケーブル)と光ファイバ・ケーブルがある。伝送速度と伝送距離の積が、両者の境界を決めている。伝送速度が高く、かつ、伝送距離が長い通信では、光ファイバ・ケーブルを使い、それ以外では銅ケーブルを使うことが多い。

 伝送距離が短ければ銅ケーブルでも40Gビット/秒という超高速伝送が実現できるし、伝送距離が長ければ1Gビット/秒クラスでも光ファイバを使うことになる。また信号品質の高さを強く要求する場合は、高品質伝送が可能な光ファイバをわざと採用することもある。

 これらの有線通信に関する最新の回路技術が、ISSCCでは披露される。ISSCC 2015で発表予定の有線通信に関する開発成果は総計で26件。これらの成果は、3つのセッションに分かれて発表される。セッション3(サブテーマは「超高速有線トランシーバとエネルギー効率の高いリンク」、2月23日月曜日午後1時30分開始予定)とセッション10(サブテーマは「先端有線通信技術とPLL」、2月24日火曜日午前8時30分開始予定)、セッション22(サブテーマは「高速光リンク」、2月25日水曜日午後1時30分開始予定)、である。

多値化技術で伝送損失を減らす

 セッション3(超高速有線トランシーバとエネルギー効率の高いリンク)では、28Gビット/秒の高速伝送に対応したトランシーバや、40Gビット/秒と超高速の伝送を実現する送信器などの開発成果が続出する。

 米国Broadcomは、複数の28Gビット/秒シリアル伝送規格に対応したトランシーバを発表する(講演番号3.1)。バックプレーン用途を想定した。製造技術は28nmのCMOSである。

 日立製作所は、適応パターンマッチングの36タップ判定帰還等化器(DFE)とデータ転送タイミング調整用PLLを搭載した、40dBの損失を補償する信号整形器(シグナルコンディショナ)を報告する(講演番号3.2)。対応する伝送速度は0.3Gビット/秒〜40Gビット/秒である。製造技術は28nmのCMOS。

 このほか、PAM4伝送に対応した送信器回路をBroadcom(講演番号3.4)とIntel(講演番号3.5)がそれぞれ発表する。PAM4(4値パルス振幅変調)とは、2ビットの信号を「00/01/11/10」の4値として4段階の信号振幅で伝送する変調方式で、同じ伝送速度で必要とする周波数帯域が1/2に下がる。金属ケーブルは高周波側での損失が大きいので、信号成分を低周波側にシフトすることは、伝送損失の軽減(伝送距離の延長)という大きなメリットにつながる。

 Broadcomが発表するのは、36Gビット/秒をPAM4で伝送する送信器回路である。18Gサンプル/秒で動作する8ビットのデジタル・アナログ変換器(D-A変換器)を内蔵した。製造技術は28nmのCMOSである。

 Intelが発表するのは、NRZ信号とPAM4信号の出力を切り替え可能なデュアルモードの送信器回路である。伝送速度は16Gビット/秒〜40Gビット/秒と高い。14nmのCMOS技術で製造した。

photo セッション3(超高速有線トランシーバとエネルギー効率の高いリンク)の注目講演(クリックで拡大)
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