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石油は本当に枯渇するのか?世界を「数字」で回してみよう(12) 環境問題(3/5 ページ)

» 2015年02月09日 08時00分 公開
[江端智一EE Times Japan]

原油の消費量も換算してみる

 次に、実際に世界が毎日消費している原油の量を調べてみました。

 詳しいデータは、こちらにありますが、驚いたのは、日本の原油消費量は、人口12億のインドや、あの広大な領土を持つロシアを抜いて、堂々の世界第3位だということです(2013年のデータ)。省エネ大国日本では、一体何が起こっているのでしょうか(機会があれば調べてみます)。

 世界が「1日」に消費する原油の量は、全長250mの10万トンタンカー、115船分(1146万6000トン/日)です ―― という記載は、随所で見られますが、「すごさ」が伝わってきません。

 そこで、先程の私の死体数での換算を試みました。

 世界は一日当たり死体数8132万人分の原油を消費しています(1146万6000トン/日÷14.1kg(死体1体から製造できる原油量))。

 これは、私たち日本国民全員(1億2730万人)が、原油の原料として肉体を提供したとしても、世界のエネルギーを二日間維持することができない、ということです。

 さらに、視点を変えて日本国の原油の消費量を、死体数で換算してみると、1人当たりひと月で9.7人分の死体の原油を消費していることになります(2089億1800万kg(2013年の我が国の原油消費量)÷14.1kg÷12カ月÷1.273億人)。

 こんなすさまじい量の原油を使い倒しているのですから、「そりゃ、近いうちに枯渇するだろう」と思ってしまうのは自然なことです。

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 しかし、それ以上に、「なんで地球は、そんなすごい原油貯蔵庫を持っているんだ?」と、不思議に思いませんか。

 過去の海洋生物の死骸の総量とはいえ、人間8000万人の死体分の原油を、毎日油田からくみ上げて、今なお原油が残存しているというのは信じ難いことです。地球は、宇宙のどこかの「原油星」と超空間でつながっているのではないか、と疑ってしまうくらいです。

原油の“埋蔵量”も半端ではない

 ところがですね、数字を回してみると、これがそれほど意外なことでもないようなのです。

 確かに、現在人類が使っている原油の量は半端ではありませんが、その一方で、地球が溜め込んできた原油の量だって半端ではないのです。

 海底の生物は、炭素量に換算すると、現在ざっくり30億トン(人間の死体数にすると2000億人分(=30億トン÷14.1kg))くらいあります(参考)。

 しかし、この2000億人分の炭素の大部分は、次の世代の海洋生物やらプランクトンやら原料になるはずなので、海底の土砂に埋まって、数千万年後に原油に「昇格」できる(ラッキーな?)死骸はごく一部だと考えられます。

 そこで、簡単な試算をしてみました。

 海洋生物の炭素の合計(30億トン)から、1年間でその1000万分の1程度(参考)が、無事原油に変化できると仮定してみます。

 開始時点を、光合成を行うバクテリアが登場したと言われる35億年前にセットしますと、ざっくり1兆トンの原油がこの地球には存在していることになります(30億トン×1000万分の1×35億年≒1兆トン)。ちなみに地球が有している全ての化石燃料の総量は、5〜10兆トンといわれています(参考)。

 さて、この1兆トンの原油がどのくらいの量かと言うと、今のように、毎日8000万人分の死骸の原油を使ったとしても、単純計算で250年間使い続けることができます(1兆トン÷41億8507万7000トン/年(2013年度合計))。

 ただし、既に1940年から現在に至るまで、その16%程度は使い切っているので、残存している原油は、あと210年間分といったところでしょう。

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