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» 2015年02月16日 10時00分 UPDATE

勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(1):会社の成長に“イノベーション”は不要? 本物の企業価値とは (1/4)

企業の業績の低迷や、製品のシェア低下といった状況だけを見て、「日本のモノづくりは弱くなった」と主張する声は少なくない。そして、たいていは「イノベーションが必要だ」と声高にうたっている。だが、企業の成長は本当にイノベーションに依存しているのだろうか。本当に“強い”企業に必要な要素は、他にないのだろうか。

[世古雅人,EE Times Japan]

日本の製造業に「イノベーション」はないのか?

 日本の製造業が弱くなったと言われて久しい。その一方で、テレビでは「日本のモノづくり」系の番組は比較的人気があり、大手企業から小さな町工場まで登場し、このような番組を見るたびに、「日本もまだ捨てたもんじゃないな」と感じる読者諸氏も少なくないのではと感じる。

 経済産業省では、日本の優れたモノづくりを未来に受け継ぐために、モノづくりの第一線で活躍する人材を表彰する制度として、「モノづくり日本大賞」がある。「製造・生産プロセス」「製品・技術開発」「伝統技術の応用」と主に3つの部門に分類されるが、審査の評価基準の3つのうち、最初に挙げられている項目が「革新性」である。

 この「革新性」であるが、日本ではよく「技術革新」を「イノベーション」という言葉に置き換えて、しばしば議論される。

 「イノベーション」の定義は、「技術革新」そのものをいう人や、「産業や文化、市場に新たな価値をもたらすことまでがイノベーションである」という人もいて、諸説いろいろある。ここでは細かな諸説は言及しないが、気になるのは、ビジネス誌や電車の中吊り広告で嫌でも目に飛び込んでくる『イノベーションがない企業は生き残れない』『日本の製造業に必要なイノベーション』といったキャッチコピーだ。

 筆者が違和感を覚えるのは、「本当に日本の製造業にイノベーションはなかったのか?」ということである。同時に「イノベーションそのものが企業の生き残りに必須なのだろうか?」という疑問もわく

 ここ数年、読者諸氏もご存じのように、日本の製造業は業界にもよるが、全体的に大手企業は業績回復の兆しを見せるも、企業の自助努力以上に為替の影響によるものも少なくない。

 先のイノベーションの言葉の定義ではないが、少なからず、日本の製造業に携わる企業が、何もせず手をこまねいているはずがない。何か、「イノベーションがないこと=企業が自助努力をサボっていた」かのように聞こえる。いちいち、日本企業と欧米企業を対比し、「イノベーションが生まれない日本の製造業」、「イノベーションこそ今や必須」のような書き方をする一部のビジネス誌やマスメディアに対して、考えを述べてみたい。同時に、「当社にはイノベーションが必要だ!」と息巻く日本の企業経営者に対して、「イノベーションという言葉ばかりにとらわれるあまり、本来、もっと力を注ぐべきもの忘れていないか」と、あえて問いたい

電機企業、自動車企業に見る競争力

 図1は、財務省の「法人企業統計」からの抜粋である。1989年から2012年までの自動車企業、電機企業各5社の営業利益の総和推移を示している。

photo 図1 営業利益の比較(電機企業と自動車企業) (クリックで拡大)

 1990年代中盤以降の上昇傾向を支えている産業は輸送機器産業であり、特に、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダ(本田技研工業)に代表される自動車企業とその部品メーカー(ティア1サプライヤ)が高い業績を支えている。

 一方で、輸送機器とは対照的に、1990年代以降も下降トレンドが続いているのが電機業界である。この電機業界に属する電子部品企業や材料メーカーには、高い業績を実現している企業も少なくない。ちなみに、自動車、電機ともに落ち込んでいる2009年はリーマン・ショック(2008年)の影響であることは言うまでもない。

 その後、日本は2011年の東日本大震災、2012年末の政権交代から2年余りが過ぎ、円安の影響も大きいが、総じて自動車業界は好調である。その反面、電機業界は日立、東芝などを除き、いまだにパナソニックやソニーに代表される、最終商品を主体とする企業の利益率は、短期的な浮き沈みはあるものの、中長期的には継続して低下傾向にあることは否めない。

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