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スマホのCPUを冷やす! 厚さ1mm以下の高効率ループヒートパイプを開発電子部品 冷却デバイス(2/2 ページ)

» 2015年03月12日 13時15分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]
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 開発した技術の詳細は次の通り。

構造設計技術

 ループヒートパイプによる熱の移動は、一般に、繊維やスポンジ、樹木などで水を吸い上げる時にみられる毛細管現象を応用した。流体の駆動源となる蒸発器の内部にある多孔体で発生する毛細管力を生むため、銅薄板を重ねて微細な孔を持つ構造を考案。複数枚の銅薄板にあらかじめ位置が少しずつずれるように設計した孔パターンをエッチングで形成し、それらを重ねることで流体を循環させるための毛細管力を発生させた。さらに、この構造体がループの中で気体(蒸気)と液体の2つの流れを分離することにより高効率な熱輸送を実現した。

左=薄型ループヒートパイプ試作品の外観 / 右=蒸発器のエッチングパターン 出典:富士通研究所

 また、モバイル機器の場合、ループヒートパイプの姿勢は目まぐるしく変わり熱輸送が不安定になる恐れがある。それに対して、蒸発器へ液体を戻すパイプである液管内にも毛細管力を発生させる構造を採用することにより、姿勢によらず安定した熱輸送を行う機能を実現した。

金属薄板を積層し接合する薄型化技術

 厚さ0.1mmの銅薄板を用い、表裏面2枚と内層4枚の計6枚を一括形成することにより、これまで実用的には厚さ10mm程度が必要であったループヒートパイプの蒸発器を厚さ0.6mmまで薄型化した。

薄型ループヒートパイプによる熱輸送の様子を表した赤外線サーモグラフィ画像 出典:富士通研究所

実用化は2017年度中を予定

 富士通研究所は今後、薄型のループヒートパイプを用いたモバイル機器の設計技術と低コスト化技術の開発を進め、2018年3月までに実用化する方針。同社は「(開発した技術により)CPUなどの部品の低温動作を実現するとともに、機器内での局所的な熱の集中を防止できるため、年々小型化する電子機器に対する新たな冷却方式の提供が可能になる」とコメントしている。

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