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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

IoTは機器が自律してこそ価値がある――自律型IoTソリューションに投資するルネサスの狙いビジネスニュース 企業動向(1/2 ページ)

半導体デバイスやソフトウェアを組み合わせた“ソリューション”の提供に注力するルネサス エレクトロニクス。5月に開催された「第18回 組込みシステム開発技術展」(ESEC2015)でもモノのインターネット向け“ソリューション”を具現化した大規模なデモシステムを披露した。なぜ、ソリューションにこだわるのか。IoT向け製品戦略などとともにインタビューした。

» 2015年05月27日 11時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

 「今日は、傘を持っていった方がいいですよ」と教えてくれる家族のようなドアホン――。

 2015年5月に開催された「第18回 組込みシステム開発技術展」(ESEC2015)でルネサス エレクトロニクスは、同社が考えるIoT(モノのインターネット)の世界を具現化した家(リビング)を披露した。

 ルネサスが披露したIoTを駆使した家は、とにかくいろいろな世話を焼いてくれる。外出時には、財布や定期券などの忘れ物チェックとともに、その日の天候を調べて、傘が必要かどうかを判断し、持っていなければ注意してくれる。出掛けた後は、消し忘れた照明や家電のスイッチをオフにしてくれ、家に帰ってくれば、元通り、照明や家電のスイッチを入れてくれる。外出したこと、帰宅したことも、メールで他の家族に知らせてくれる。その間、住人は何ら意識することなく、勝手に“家”がやってくれるわけだ。

ルネサスのホーム分野向けIoTソリューションを具現化したモデルルーム。テーブルには、タッチキーやUSB Power Delivery対応ポートなどが組み込まれているなど、あらゆるモノをスマート化。“自律するIoT”を演劇を交えて披露した (クリックで拡大)

 ただ、1つ疑問が浮かぶ。なぜ、半導体メーカーであるルネサスが、ここまで大掛かりなシステムを構築し、大きなスペースを割いて展示会で披露する必要性があるのかということだ。単年度黒字を計上するなど、業績が回復してきているルネサスといえど、大きな経費が掛かる。

 なぜここまでして、ルネサスは、目指すIoTを具現化する必要があるのか。IoT市場におけるビジネス戦略などを含め同社産業第一事業部長の傳田明氏に聞いた。


多くのユーザーと話すキッカケ

EE Times Japan(以下、EETJ) ESEC2015では、ブースの大きなスペースを使って、IoTを駆使した家や工場を模したコーナーを設けられ、デモを披露されました。家のコーナーでは、一見すると普通のドアやテーブルにさまざまな機能を埋め込むなど、随分と手の込んだシステムのように見受けられました。こうした大掛かりなデモシステムを作られた狙いをお聞かせください。

傳田明氏 ルネサスは成長を目指して、デバイスメーカーからソリューションプロバイダへの転換を図っている。2014年9月に実施したプライベートイベント「Renesas DevCon JAPAN」(以下、DevCon)あたりから、当社の製品やサードパーティーの製品/技術を融合させたソリューションを構築し、デモシステムとしてユーザーに見せることに取り組んでいる。今回のESEC2015は、DevConで紹介した住宅/産業向けソリューションの一部をさらに進化させた、第2弾のソリューションとして開発、公開した。

費用対効果は常に精査

EETJ 完成度の高いデモシステムを作るには、手間と費用が掛かります。

傳田氏 その通り、手間と費用が必要だ。しかし、こうしたソリューションを具体化したデモシステムを構築することで、より多くの顧客、ユーザーと話すきっかけになっている。

木製ドア内部に組み込まれたタッチキーを使いドアロックを解除する様子 (クリックで拡大)

 例えば、ESECで紹介したドアやテーブルの中には、高感度が特長のタッチキー検出マイコン「RX113グループ」を使ったタッチキーを組み込んでいる。木材など分厚いカバーで覆っていても、タッチ検出できるマイコンなのだが、マイコン単体や簡単なデモボードだけでは、普段、マイコンなどとは縁遠い家具メーカーなどは、家具に使用できるとは想像しにくい。実際に家具に組み込むことで、初めて使えそうであるかどうかなどの話に至り、要望が聞き出せる。IoTが進展していくと、ニーズが増えていき、家具や住宅設備メーカーなどこれまであまり接点のなかったユーザーとのきっかけ作りや、より具体的なニーズを聞き出すためにもソリューションは欠かせない。

 社内では、手間と費用を掛ける上で、ソリューションのデモシステムの費用対効果を精査する仕組みを導入し適用している。商談数やデザインイン数など複数の段階に分けて、常に精査仕組みで、2014年のDevConでの結果は、想定以上の商談数を獲得できており、順調だ。

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