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» 2015年06月04日 09時50分 UPDATE

福田昭のデバイス通信(28):ARMから見た7nm CMOS時代のCPU設計(17)〜次々世代の配線技術と回路技術 (1/2)

今回は、金属配線の微細化に伴う課題を取り上げる。信号の周波数当たりの配線長や、エレクトロマイグレーションといった問題があるが、これらを根本的に解決する策として期待がかかるのが、配線材料の変更や印刷エレクトロニクスの実用化である。

[福田昭,EE Times Japan]

微細化で信号が遠くまで届かなくなる

 本シリーズの第13回では、多層金属配線(主な配線材料は銅)の電気抵抗が微細化に伴って増大する問題を取り上げた。配線のRC積(抵抗と静電容量の積)が電気信号の遅延時間を左右すること、7nm世代のRC積は、14nm世代の5.3倍に達することなどを述べた。

 このことは例えば「信号の周波数当たりの配線長」でも表現できる。同じ1GHzの信号でも、なるべく遠くまで届くことが望ましい。すなわち、「信号周波数当たりの配線長」はなるべく長くしたい。

 従来、「信号の周波数当たりの配線長」を延ばすためには、トランジスタのゲート幅を拡大することで電流駆動能力を向上させる手法が使われてきた。例えば28nm世代のCMOSインバータ論理回路で比較しよう。ゲート幅を単位長(最小幅)の8倍に拡大すると、周波数当たりの配線長はゲート幅が単位長であるときに比べて7倍近くに延びる。

 しかし微細化に伴い、このような効果は薄れていく。14nm世代では、単位長の8倍のゲート幅をトランジスタに使ったとしても、周波数当たりの配線長の延びは3倍程度にとどまる。そして7nm世代では、配線長の延びは2倍未満になってしまう。つまり、高周波信号が遠くに届かなくなる。

CMOSインバータで比較したトランジスタのゲート幅と周波数当たりの配線長。出典:ARM CMOSインバータで比較したトランジスタのゲート幅と周波数当たりの配線長。出典:ARM(クリックで拡大)

電流密度を大幅に高める「炭素配線」の可能性

 金属配線の微細化で深刻化する問題には他に、エレクトロマイグレーションがある。エレクトロマイグレーションとは、金属原子が移動することによって配線やコンタクトなどが変形する現象である。エレクトロマイグレーションは電流密度が高くなると、大きくなる。電流密度があまりに高くなると金属原子の移動により、配線抵抗の増大や絶縁抵抗の低下、さらには開放不良(オープン不良)や短絡不良(ショート不良)などを招きかねない。

 エレクトロマイグレーションの対策に、今のところ妙案はない。考えられる対策は、金属配線の断面積を増やすこと、あるいは、信号の電流量を減らすことである。基本的な対策はこの2つであり、前者はシリコン面積や製造コストの増加を、後者は回路性能の低下をもたらす。

 これらの問題を解決する根本的な技術として期待がかかるのは、配線材料の変更である。具体的には炭素(カーボン)を配線に使うことだ。カーボンの単原子層である「グラフェン」は電流密度を極めて高くできることから、LSIの配線材料に向けた研究開発が活発になっている。研究開発の当初は電気抵抗が高いという問題があったが、最近では銅配線なみに低い抵抗率を得られるようになってきた。

金属配線のエレクトロマイグレーション問題(右)と炭素(カーボン)配線の研究例(左)。出典:ARM 金属配線のエレクトロマイグレーション問題(右)と炭素(カーボン)配線の研究例(左)。出典:ARM(クリックで拡大)
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