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5G向けミリ波ビーム多重化技術を開発、4ユーザー同時通信で12Gbpsを実現無線通信技術

富士通研究所は、5G(第5世代移動通信)システム向けに、ミリ波ビーム多重化によるマルチアクセスを実現する技術を開発した。複数ユーザーが同時に大容量の通信を行っても、互いの電波干渉をなくすことで通信速度の低下を最小限に抑えることが可能となる。

» 2015年06月11日 15時00分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

 富士通研究所は2015年6月、5G(第5世代移動通信)システム向けに、ミリ波ビーム多重化によるマルチアクセスを実現する技術を開発したと発表した。複数ユーザーが同時に大容量の通信を行っても、互いの電波干渉をなくすことで通信速度の低下を最小限に抑えることが可能となる。この技術を用いた社内実験では、4本のミリ波ビームを形成することで、12Gビット/秒の通信速度を達成した。

 ミリ波帯を使った無線通信では、アンテナの形状を小さくするためにアンテナ素子数を増やして空間を小さく分割し、スモールセル方向に照射する方式が検討されている。しかし、従来の設計手法によるアレーアンテナでは、ビーム形成時に目的方向の電波(メインローブ)とは別の方向の電波(サイドローブ)も発生してしまう。このため、多重化のために複数のアレーアンテナを設置すると、ビーム間で電波干渉が生じるなどの課題があった。

 これに対して同社は、60GHzのミリ波帯において、複数のアンテナ素子を並べたアレーアンテナで発生するサイドローブの電力を従来に比べて1/5に低減する技術を開発した。これによって、多くのユーザーが同時に通信しても、互いに電波干渉せず通信を行うことが可能となった。

 具体的には、低サイドロープの細い電波ビームで64パッチのアレーアンテナを試作した。電力密度が一定の一般的なアレーアンテナであれば、メインローブとサイドローブの電力比率は13dB程度になる。これに対して同社は、アンテナ給電回路を工夫した。中心付近のアンテナ素子は電力を大きくし、周辺に行くほどアンテナ素子の電力を小さくした。このように電力の配分を変えることでその電力比率は約20dBとなり、従来に比べて7dBも改善(約1/5)することができた。

試作したアンテナのビームパターン(左)と、試作した64パッチのアレーアンテナ (クリックで拡大) 出典:富士通研究所

 同社は、60GHzのミリ波帯を用いて、帯域幅1.2GHzで1ユーザーあたり3Gビット/秒の通信が可能な無線機を試作し、4ユーザーによるマルチアクセスの実験を行ったところ、互いの電波干渉もなく12Gビット/秒の通信速度を達成したという。

 今後はミリ波無線機のさらなる高速化とビットレートあたりの消費電力低減に取り組み、2020年ごろの実用化を目指す。

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