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真似されない技術はどう磨く? 〜モノづくりのための組織能力とは勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(5)(3/4 ページ)

» 2015年06月15日 10時20分 公開
[世古雅人EE Times Japan]

鍛え続けた強み――技術が分かっても同じモノは作れない

 「組織能力」とは、企業が固有に持つ有形・無形の資源と、それを活用する組織ルーチンである。組織ルーチンとは、複雑で困難なプロセスを、組織として自然に実現し得る能力である。

 一般に、組織能力の定義については、上のように書かれている。もう少し分かりやすく言えば、「難しいことを自然に実現してしまう能力」になるだろう。

 果たして、そんなことが実際にあるのだろうか? これは、例えば、スポーツで考えてみれば分かりやすい。一流のアスリートが普通に実現していることが、素人からすれば、とてつもなく難しいというのは、よくあることだ。アスリートも、子供の頃から練習を積み重ね、たゆまぬ努力を続けたからこそ難なくできる。素人が少しかじったくらいで、できてしまったら、それこそ、プロのアスリートとしての立場はなくなるだろうし、素人が一流のアスリートを負かすなどは、現実的には「できっこない」。

 前述した“容易に真似できない領域”こと、「真似したくとも真似できない」ことは、既に実現できている企業(前述の例ではトヨタ自動車)や一流のアスリートからすれば、「自然にやってしまっている」ことになる。身に付いているというのは、そういうことだ。これらを図3のように示してみよう。

photo 図3 モノづくりの組織能力

 「深層の競争力」と「鍛え続けた強み」を合わせたものを、「モノづくりの組織能力」としている。

 「深層の競争力」とは、その場しのぎや小手先の競争ではなく、複雑で見えにくい深い領域における競争力のことをいう。これらは、短期間で習得できるものではなく、試行錯誤を繰り返しながら、この試行錯誤の過程において蓄積される組織学習の成果であり、「鍛え続けた強み」そのものである。非常に時間がかかるのである。

 これらは、属人的(人に蓄積される)特性を持つことに加え、組織における「暗黙知(暗黙的な経験知)」は企業組織固有のものだ

 人は、同一のことを学習したとしても、周囲の環境によって、蓄積される経験知や蓄積のされ方そのものは異なってくる。A社で成功したAさんが、必ずしもB社で成功するとは限らない。「朱に交われば赤くなる」のことわざのように、人は環境(属する企業組織)によって良くも悪くもなるのである。

 したがって、他社でうまくいったからといって、自社が短期間で模倣できるものではないし、技術の中身が全てわかったとしても、決して同じものは作れないのだ。

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