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600dpi解像度で毎秒300mm印刷できる高速/高画質サーマルプリントヘッドデバイス

ロームは2015年6月、新構造サーマルプリントヘッド技術を開発した。同社によると「業界最高の高画質・高速印字を両立させた」という。高い印字品質が求められる医療や物流用途に向けて製品を展開する。

» 2015年06月16日 15時00分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]

 ロームは2015年6月、物流用途や医療用途のプリンタ向けに高画質かつ高速印字を実現する、新構造サーマルプリントヘッド技術の開発に成功したと発表した。

 開発した技術は、高熱伝導材料の採用とそれに伴った新構造の開発により、600dpi時で、一般品の約4倍となる300mm/秒といった高速印字を実現する。プリントヘッド部に独自の微細加工技術を施すことで、さらなる繊細な印字も可能になるという。

バーコードラベルプリンタの市場拡大

 サーマルプリントヘッドは、インクジェットやレーザーのプリントヘッドと異なり、静音で動作する。インクなどを使用しないため清潔で、大きなトナーカートリッジを必要としないことから、主に物流、品質管理、医療用途などのバーコードラベル、小売店などのPOS(Point of Sales)レシートやFAXなどに使用されている。その中でバーコードラベルプリンタは、高画質と高速印字への要求が高まり、市場は年々拡大している。

 医療用途のプリンタでは、インクを使わず安全であることを理由に普及が進む。リストバンドや医療容器ラベルのような微細領域には、高精度の写真や微細文字を印字する必要があり、非常に高い解像度と印字品質が要求されるのだ。

 物流用途のバーコードラベルプリンタでは、荷札ラベルを大量かつ高速に印刷する必要がある。さらに、近年QRコードなどの2次元バーコード化によりバーコード自体の情報量が増加しており、高解像度が必要とされている。そのため、高速印字に加えて印字品質が高いレベルで求められるようになった背景がある。

高解像度600dpiを実現

製品画像 開発したサーマルプリントヘッド

 サーマルプリントヘッドは、発熱と放熱を繰り返して感熱紙などのメディアに印字を行うが、従来の製品は、高速に連続印字をする場合に完全に放熱しきれず蓄熱する。そのため、発熱体の温度が徐々に上昇することで、にじみが発生。バーコードの読み取りができなくなるような印字品質低下の問題があった。

 ロームは、これらの問題に対して、材料と構造の見直しを抜本的に行ったことで、高画質と印字速度を高めることに成功したという。同社によると、「業界最高*)高画質かつ高速印字を実現した」とする。

*)ここでの画質は解像度と印字品質(にじみとバーコードの読み取り認識)の和としている。

 高解像度の600dpiの高精細印字は、新構造および独自の微細加工技術を施すことで可能にした。さらに、高熱伝導材料と新構造を採用し、放熱性を従来品比の数倍に高めたことで、高速に連続印字をするときでも発熱体部の温度を安定させることに成功。高速でも印字品質を損なわず鮮明な印字を実現した。

 ロームでは、開発した技術を用いた製品を2015年中に量産する方針。加えて、高画質と印字速度を生かしたプリントヘッドのラインアップの拡充を目指していく予定だ。

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