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» 2015年06月22日 09時45分 UPDATE

江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(3):「老人ホーム 4.0」がやって来る (5/5)

[江端智一,EE Times Japan]
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カーネルモードのビルド法

 ところで、「light ethercat slave」は、カーネルモードも準備されています。

 こちらは、PC丸ごと1台をスレーブとして作り込みますので、応答時間は相当に速くなりますし、スレーブのアプリケーションを実装すれば「メイドPC」を、スレーブとしても使えると思います。

 カーネルモードのビルドは以下の通りです。

【Step.5-2】kernelディレクトリに入って、構築(ビルド)を実行します。

$ cd ecslave/kernel

$ sudo make

が、ソースコードに不具合があるため、ビルドに失敗します。

 ですので、以下の6カ所を修正してください。

1. ecslave/kernelにあるMakefileの39行目:
M=$(PWD) → M=$(shell pwd)に変更

2. ecslave/kernelにあるec_slave.cの44行目:
ecat_create_timer() → ecat_create_timer(&ecs)に変更

3. ecslave/kernelにあるecat_timer.cの59行目:
void ecat_create_timer(void) → void ecat_create_timer(ecat_slave * esv)に変更

4. 同じく65行目:
sec = ecat_get_dcstart(0) → sec = ecat_get_dcstart(0, esv)に変更

5. ecslave/stackにあるecat_timer.hの22行目:
void ecat_create_timed(void) → void ecat_create_timed(struct __ecat_slave__ *)に変更

6. ecslave/stack にあるec_sii.cの全部のprintfをec_printfに変更

 再び、$ sudo makeをすると、ecslave/kernelに、ecslave.koができます。

 ここでifconfigを実行して、ハードウェアアドレス(MACアドレス)を読み取ります。

 例えば、00:0b:97:32:c0:c1であるなら、

$ sudo insmod ecslave.ko rxmac=00:0b:97:32:c0:c1

と入力すれば、スレーブとして動作します。

 2つのNICがあれば、もし、デイジーチェーンの終端スレーブとしてだけでなく、中間スレーブとしても使えます。この場合の入力例は、以下の通りです。

$ sudo insmod ecslave.ko rxmac=00:0b:97:32:c0:c1 txmac=00:13:ce:83:d6:ce

 EtherCATスレーブ製品と一緒に動作させてみましたが、動きました(同期外れも発生しましたが)。

 ただ、「light ethercat slave」は、EhterCATマスタの性能検証用のエミュレータとして作成されたようで、(DIOなどの)アプリケーションの機能は持っていないようです。

 Readmeを読んでみると、「(やりたければ)がんばって実装しろよ」みたいなことが書いてあります(実装された方は、ぜひ私にコードを見せてください)。

photo

 今回のコラムを読み直してみると、結局、今回は、EtherCATのメールボックス通信と、遷移状態の話、EtherCATスレーブのエミューレータ(light ethercat slave)の作り方のお話しかできませんでした。

 「全自動育児機」や「全自動寝たきり老人介護機」や「老人ホーム4.0」などの話をしなければ、もっとEtherCATの技術的な話を盛り込めるとは思うのです。

 しかし、この連載を続けるためには、この連載を読んでいただく皆さんはもちろんですが、それ以上に、この「私」が楽しく書き続けられることがとても重要なのです。そこのところ、何とぞご理解いただけますようお願いします。

 それに、「老人ホーム4.0」の原稿を受けとってくれる編集部って、今のところEE Times Japanさんだけですから(と、この連載を打ち切られないように、ヨイショしておきます)。

 それでは、来月またお会いしましょう。

⇒本連載のバックナンバーはこちら

特別協力:

本連載では、スレーブの提供などでベッコフオートメーションにご協力いただいております。

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Profile

江端智一(えばた ともいち)

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。


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