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» 2015年07月29日 11時00分 UPDATE

江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(4):ご主人様とメイドはテレパシー通信をしている? (7/9)

[江端智一,EE Times Japan]

「何かあったら、誰が責任を取るんですか?」

 私たちは、「新しいモノはとりあえず否定しておく」という傾向があります。そして、その理由として「何かあった時に、誰が責任を取るのか」というフレーズで、その「否定」を正当化するのです。

 例を挙げて説明します。

【Google ストリートビューの場合】

 2007年から、Googleサイトの地図上に自宅の写真が表示されるサービスが始まり、それに対する不安感や、プライバシーの問題から、世界中で大騒ぎなりました。

 日本でも、掲示板などの書き込みはもちろん、町内会、自治会の単位で、サービスの差し止めを求めて声明が相次ぎました(東京杉並区、東京町田市、大阪茨木市、高槻市その他福岡や新潟の弁護士会、国会質問など(2008年12月))。しかし、今回、判例データベースで調べたところ、実際の裁判で判決にまで至ったものはたったの1件(参考)、審理係属中のものは見つけられませんでした。

 ともあれ、現時点(2015年7月)で、私は「絶対にGoogle ストリートビューを許さない」という個人や団体を見付けることはできません。あの騒ぎが、本当にウソのようです。

【ロボット掃除機の場合】

 ご存じの通り、自動的に床の掃除をしてくれる円盤型の掃除ロボットです。産業ロボット大国日本にあって、この程度のロボットを作ることは、さして難しくなかったのですが、

  • 仏壇にぶつかり、ろうそくが倒れ、火事になる
  • 階段から落下し、下にいる人に衝突する
  • よちよち歩きの赤ちゃんの歩行を邪魔し転倒させる

おそれがあり、そして、―― そのような事態になったら誰が責任を負うのか ―― が問題になって、日本のメーカが開発をためらってきたという話は、あまりにも有名です。

「『100%の安全性を確保できない』ものには手を出さない」

 その精神は孤高にして気高い。

 たとえ市場を失っても、その精神を貫くことは賞賛されてもいい ―― と私は思うのです。

 で、たった今、検索エンジンで「国内 掃除 ロボット」で検索したら、いくつかの日本の大手家電メーカーの名前を見つけることができました。

 これらのメーカーは、『仏壇とロウソクとその炎をセットで検知する画像認識機能』や、『赤ちゃんの歩行経路を推論するエンジン』を完成させ、掃除ロボットへの実装が完了したのでしょうか。ええ、私は、嫌味を言っているのです

【自動運転車の場合】

 今、騒がれているGoogleの自動走行車(Google Self-Driving Car)が登場する実に25年も前、当時、私の前の席に座っていた先輩研究員は、高速道路の自動運転アルゴリズムの開発を概ね完了していました。

 実際のところ、1970年(40年前)の時点において、「日本の高速道路であれば、自動運転は実現できる」といわれていたくらいです。

 しかし、この研究も、やはり、―― 交通事故が発生したら誰が責任を負うのか ――という、技術とは全く異なる観点から、消滅させられる運命にありました。

 責任を負うのは誰なのか。運転手か、自動車会社か。アルゴリズムを開発したメーカー? それとも、そのプログラムを実装した装置ベンダー?

 なお、現時点において、日本の法律は、自動運転の車両の販売および使用を認めていません。

【インターネット検索エンジンの場合】

 GoogleやYahoo!が登場する前、日本の企業の研究機関は、現在の検索エンジンと同程度の機能を有する検索エンジンのプロトタイプを完成していました。

 ところが、こっちの方で問題となったは、―― 著作権法上の違法行為にならないか。違法行為となった場合、誰が責任を負うのか ―― という(面倒だから以下省略)。

【私の映像データ転送実験の場合】

 10年前に、研究所の敷地内(私有地)で、数十台のカメラを使った大量データ(画像データ)の無線転送実験をやるためだけに、私は、法律の条文はもちろん、県や市の条例まで読み込みました。

 その条文の実施事項を完全に順守するために、実験開始前にはデカデカと『通信実験中であること』を立て看板で表示し、『画像データは即日廃棄する』旨の表示をして、ようやく実験を開始することができました(繰り返しますが、私有地内の話ですよ)。

 しかし、今や、街や駅やスーパーマーケットのあちらこちらに、隙間なく設置された監視カメラが、私たちの姿を記録し続けていますが、このことに血相を変えて怒っている人を見たことがありません。

 この状態を考えると、―― あの時の、私のあの苦労って、一体何だったんだろう―― と、本気で泣けてきます。

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