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ドローンで命を救うプロジェクトが日本で始まる「救命の連鎖を補完したい」(2/2 ページ)

» 2015年09月25日 16時00分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]
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各分野の専門家が参加

 Project Hecatoncheirはこれから各分野の専門家と、実証実験とICTモデルの具現化を進めていく。ドローンの開発、研究を行う岡田竹弘氏、ロボットのクラウド基盤を構築するリアルグローブ社長の大畑貴弘氏、佐賀県庁職員で救急車両へiPad導入などを進めた円城寺雄介氏、生体医療用光学アドバイザーの沼田慎吉氏、ドローンに関する情報発信を行う稲田悠樹氏が同プロジェクトに参加。

 ドローンによる救急救命のステップは3段階あり、第1世代は「アドホックタイプ」、第2世代は「ネットワークタイプ」、第3世代は「完全自律タイプ」としている。今まで実験を進めてきたという第1世代のアドホックタイプは、送信機やスマートフォンを通してドローンを扱える距離は数キロのため、現場付近で操作を行わなければいけない。また、ドローンが落ちてしまう可能性が高いため、オペレーターも必須となっている。現場にかかる人手の負担が大きくなってしまうのだ。

 Project Hecatoncheirが実現を目指すのは、第2世代のネットワークタイプ。第2世代は、ネットワークを通してオペレーターが遠隔操作でき、近くの消防署や民間の施設から直接ドローンが飛来する。「第3世代の完全自律は、ドローンが自分で判断し動くといったタイプであるが、そこまでには10〜20年かかるだろう」と小澤氏は語る。

国や地方自治体、消防機関や医療機関、ドローンメーカーなどと協力して実証実験を進めていく (クリックで拡大) 出典:Project Hecatoncheir

落ちても安全だという実証を

 Project Hecatoncheirに待ち受ける課題も多い。首相官邸にドローンが落下したという事件があったこともあり、ドローンの安全性に対して不安を抱く人も多いだろう。小澤氏は、「現行法の中で実証実験を重ねて、落ちても安全だという実証を進めていきたい。例えば、落ちてしまったときに自動的にパラシュートが出たり、コンピュータで制御することで人に当たらないようにしたりする技術を整えていく」と語る。

 2015年9月4日に定められた改正航空法で夜間や密集地などでの飛行が禁止になった影響も大きい。救急用に開発している業者に対しては、国がドローン飛行許可を行うといった対応がなければ、機体の開発が進まなくなる懸念があるという。

岡田竹弘氏が3年をかけて開発、設計を行っているドローン。左の「Micro Drones」の電子回路は1から設計を行っている。右の「Middle Drones」は市販機のドローンをカスタマイズしたもの (クリックで拡大)

 Project Hecatoncheirは今後、2年以内に災害時におけるドローンの運用を目指している。また、現在は有志によるプロジェクトとして進めているが、企業による出資の提案などがあれば会社設立も考えているという。ドローンの導入やサポートの相談も受け付けており、Project HecatoncheirのWebサイトより行うことができる。

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