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» 2015年11月12日 10時30分 UPDATE

パワー半導体で世界最高レベルの研究拠点へ:6インチウエハーによるSiCチップ試作ライン構築

つくばイノベーションアリーナ(TIA)は、6インチ級SiC(炭化ケイ素)ウエハーを用いたパワー半導体デバイスの量産研究開発を目的に、新たな第3ラインを産業技術総合研究所(産総研)西事業所内に構築する。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

 つくばイノベーションアリーナ(TIA)は2015年11月、6インチ級SiC(炭化ケイ素)ウエハーを用いたパワー半導体デバイスの量産研究開発を目的に、新たな第3ラインを産業技術総合研究所(産総研)西事業所内に構築すると発表した。住友電気工業などの産業界と共同で実施するもので、パワー半導体デバイスに関して世界トップレベルの研究拠点を目指す。

6インチウエハーを用いる

 SiCパワー半導体デバイスは、次世代EV/HEV向けインバータ用途などで注目されている。従来のSi(シリコン)ベースのパワー半導体デバイスに比べて、電力損失が1/100以下と小さく、大幅な省エネにつながるからだ。こうした中で、デバイスの生産性を向上させるために、製造工程では6インチ級の大型ウエハーを採用する動きが始まろうとしている。

TIA関連棟の外観 TIA関連棟の外観

 新たに構築する第3ラインは、最先端の研究開発環境を活用して、6インチ級SiCウエハーを用いたパワー半導体デバイスの量産技術や信頼性評価技術、品質評価技術の開発を加速するための試作ラインである。開発成果を活用して、主な半導体メーカーはデバイスの生産性を高めつつ、新構造の高耐圧/超高耐圧パワー半導体デバイスの開発などを行っていくことになる。とりわけ、オン抵抗が極めて低いパワー半導体デバイスや、耐圧10kV以上のパワー半導体デバイスなどの開発が期待されている。

 第3ラインには、最高レベルのクリーンルーム環境や最新のプロセス装置などが導入され、常時24時間稼働が可能である。具体的には、SiC MOSFETのオン抵抗として、プレーナMOS構造で単位面積当たり数ミリオーム、トレンチMOS構造で1mΩ以下をそれぞれ目指すための微細加工装置などが整っている。設置場所は産総研西事業所7群(スーパークリーンルーム研究棟)内で、クリーンルームの面積は1500m2である。

 新ラインの処理能力は従来の10倍以上となり、製造のリードタイムは3分の1以下に短縮することが可能である。これから実用化が期待されているGaN(窒化ガリウム)やダイヤモンドなど、ワイドギャップパワー半導体デバイス技術の研究開発にも適用可能な施設だという。

パワエレに注力

 TIAは、世界レベルのオープンイノベーション拠点形成を目標に、産総研、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構及び日本経団連が中核となって2009年6月に設立された。特に、パワーエレクトロニクスを戦略的に取り組むべき研究領域の1つとして掲げている。

 TIAは、パワーエレクトロニクス研究拠点として2010年10月までに先端基礎研究を推進する第1ライン、量産技術開発を行うための第2ラインをそれぞれ整備した。第2ラインは、3インチ級SiCパワーデバイスの量産試作技術開発を行うために、富士電機とアルバック及び産総研が設置した。これとは別に、民活型共同研究体「つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション(TPEC)」を2012年5月に発足させている。

 産総研では、新設の第3ラインを活用して、筑波大学などとの連携を一段と強めていく考えである。それによって学生や研究者と産業界の技術者が一体となって研究に取り組むオープンイノベーション拠点としての役割を一層高めていく。

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