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万年ダイエッターにささげる、“停滞期の正体”世界を「数字」で回してみよう(22) ダイエット(9/10 ページ)

» 2015年11月30日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

なんか「外れて」いるような気がするんですよね

――なんか「外れて」いるような気がするんですよね

 後輩は、いつもの一通りのお世辞(「いいですね」「最近まれにみる良作です」など)の後で、ずばり言いました。

後輩:「最も重要な記載が、欠けています」

江端:「何?」

後輩:「江端さんは、今回ダイエットの定式化をした訳ですよね」

江端:「うん」

後輩:「簡単に言えば『食べた分のエネルギーが少なければ、ぜい肉が削り取られ、逆に、多ければ、ぜい肉が蓄えられる』ということですよね」

江端:「正しい」

後輩:「で、太っている人は、その太った体を維持するために、エネルギーを大量に消費することになる。だから、どんなに食べる量が多くても、体重に見当ったエネルギー量と同じになって、いずれは体重が増えなくなる、と」

江端:「正しい」

後輩:「一方、ダイエット中の人は、ダイエットが進むほど、その痩せた体を維持するためのエネルギーが少なくなる。だから、食べる量を少なくしていても、いずれは体重が減らなくなる、と」

江端:「正しい」

後輩:「で、それが一体何だと言うのですか」

江端:「は?」

後輩:「江端さんが行ったのは、要するに『エネルギーの平衡状態』の計算でしょ? でも、そんなことが分かったからといって、読者が『うれしい』と思いますか?」

江端:「少なくとも、『減量が期待通りに進まなくても、そんなに気にすることはないよ』とか『”停滞期”というのは”単なるノイズ”だよ』とか、言えたと思うんだけどな」

後輩:「そこは重要ではありません。重要なのは『空腹をどのように紛らせるか』というメソッド(方法)の方じゃないんですか」

江端:「え?」

後輩:「原発事故を例にしてお話しましょうか。『原発のメカニズムはこうなっています。ですから冷却水が無くなると、暴走して、メルトダウンして、大惨事になります』って言われて、一体私たちに何ができるというんですか?」

江端:「……」

後輩:「そんなことよりも、『事故を発生させないためには、どうしたらいいのか』『事故が発生してしまったら、何をしたらいいのか』の方が知りたいんじゃないですか? 原発の構造や、暴走メカニズムなんて、実際のところ、どーだっていいことですよね」

江端:「……そりゃ、まあ、そうかもしれないけど」

江端:「だから、原理なんかどーだっていいんですよ。方法を書きなさいよ、方法を。だから、いつも「外れて」いるような気がするんですよ、江端さんのコラムって

 相変わらず、血も涙もない後輩です。

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