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5G向け変調方式をめぐる研究開発が活発化要素技術の1つ(1/2 ページ)

5G(第5世代移動通信)を実現する要素技術の1つに、新しい変調方式がある。多くの場合は、既存のOFDM(直交周波数分割多重方式)をベースにしたものだ。現在、変調方式をめぐる研究開発が活発になっている。

» 2015年12月02日 13時00分 公開
[Rick MerrittEE Times]

 ドイツ・ドレスデン工科大学の教授であるGerhard Fettweis氏は、5G(第5世代移動通信)実現に向けた無線インタフェース(エアインタフェース)の研究を行っている。

ドイツ・ドレスデン工科大学のGerhard Fettweis教授 ドイツ・ドレスデン工科大学のGerhard Fettweis教授

 同氏が取り組んでいるのは、物理層の新しいプロトコル「GFDM(Generalized Frequency Division Multiplexing)」で、これは、タッチインターネットを実現できる利点があると主張する。タッチインターネットは、未来のモノのインターネット(IoT)といわれており、既にHuawei、Intel、National Instruments、Vodafone、Xilinxといった企業から支持を集めている。

 5Gがその要件を満たすには、LTEとは異なる新しいエアインタフェースが必要になる点は、誰もが認めるところだ。5G規格を策定する3GPPがRelease 15を出す2018年までに、多くの技術が提案されるだろう。

 提案の多くは、既存の変調方式であるOFDM(直交周波数分割多重方式)を変化させたものである。専門家の中には、エアインタフェースをめぐる係争は、大規模なアンテナアレイや、6GHz帯以上の周波数帯に関連する係争ほど激しいものではないと見る者もいる。

Arogyaswami Paulraj氏 Arogyaswami Paulraj氏

 ベテランの研究者で起業家でもあるArogyaswami Paulraj氏は、2015年11月16日に米国カリフォルニア州サンタクララで開催された「IEEE 5G Summit」で、「5Gのエアインタフェースは、ちょっとした“美人コンテスト”のようなもので、最終的には複数の要素が採用される可能性がある」と述べている。

 Qualcomm Researchの5G向けエンジニアリング部門でシニアディレクタを務めるJohn Smee氏は、「これまで上がってきた提案は、やはりOFDMをベースにしたものが多い」と述べた。


さまざまな変調方式

 北欧の研究者とメーカーは、FBMC(Filter Bank Multicarrier)変調方式を支持しているといわれる。Paulraj氏は、「FBMCは帯域外の伝送に関しては最も優れているが、5G用に配置が計画されている大型アンテナとの相性が良くない」と指摘する。

 一方、UFMC(Universal Filtered Multicarrier)は、帯域外の伝送能力は低いが、基地局のアップリンクを円滑に共有できるという利点がある。Paulraj氏は、「どの変調方式にも一長一短がある」と述べている。Alcatel-Lucentは、UFMCを支持している。Fettweis氏によると、「UFMCは、サブキャリアチャンネルでマルチキャリアシステムに対応できる」という。また、Fettweis氏が提唱するGFDMとの互換性を持たせることもできるという。

 Huaweiは、「Spectrum Filtered OFDM」という方式を支持するとされている。同方式は、「シャノンの定理」における“通信容量の限界”に達するほどの通信を実現できるという。ただし、複雑な受信機とアンテナが必要になる。

 OFDMベースではない全く新しい方式を提唱する企業もある。無線技術を手掛ける米国の新興企業Cohere Technologiesは、新しい数学的概念を適用してより正確なチャンネル評価を行い、スペクトル効率を高めている。同社は現在、同技術の詳細を公表するためのホワイトペーパーを準備しているという。

 Paulraj氏は、「5Gの標準規格を策定する前に、多くのアイデアを検討したい」と話している。

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