インタビュー
» 2015年12月11日 09時30分 UPDATE

リニアテクノロジー CTO Robert C. Dobkin氏:独学で回路技術を習得し、“アナログの巨頭”に (1/2)

Linear Technology(リニアテクノロジー)でCTO(最高技術責任者)を務めるRobert C. Dobkin氏。同社において極めて優秀なアナログIC設計エンジニアを指す“アナログ・グル”でもある同氏に、アナログIC業界の動向や、自身のキャリアなどについて語ってもらった。

[村尾麻悠子,EE Times Japan]

 Linear Technology(リニアテクノロジー)といえば、世界中に5000人近い従業員を抱え、50%前後の営業利益率をたたき出す優良企業として知られている。その同社でアナログIC設計エンジニアの頂点に立つのが、「アナログ・グル」と呼ばれる、極めて優秀な設計者たちだ。リニアテクノロジーの創設者の1人で、アナログ・グルでもあるCTO(最高技術責任者)のRobert C. Dobkin氏に、アナログIC業界の動向の他、自身のキャリアのスタートなどについて語ってもらった*)

*)リニアテクノロジーの技術部門の現状や今後の技術開発戦略については、こちら「競合が作れるようなものは、開発しない

微細化の恩恵にあやかれないアナログIC

EE Times Japan(EETJ) まずはアナログIC業界の動向について教えてください。

Robert C. Dobkin氏 とりわけ大きなトレンドとしては、回路がますます複雑になっていることが挙げられる。より複雑に、より高速になっている。アナログ回路を見ると、過去20年間で、プロセスは製造ばらつきが減り、欠陥も改良されて少なくなり、ウエハーの大口径化も進んだ。より多くのトランジスタを搭載する回路を、より経済的に製造できるようになった。20年前は、1個のレギュレータICにはわずか20個のトランジスタしか搭載されていなかったが、現在では、例えばLDOレギュレータには100個以上のトランジスタが搭載されている。

 データコンバータの分野では、プロセスルールの微細化がデジタル部分の性能の向上に大きく貢献している。高速コンバータでは、高速なデジタル回路とアナログ回路の両方が必要だからだ。当社は15Mサンプル/秒のA/Dコンバータや、20ビットのA/Dコンバータなど、高速サンプリングあるいは高分解能のA/Dコンバータ製品がラインアップされている。これらは、デジタル回路の進化によるものだ。一方でDC/DCコンバータなどの電源ICだと、話が違ってくる。電源ICに微細なプロセスを適用すると、配線が細くなり高耐圧を実現できない。

 つまり、アナログICの場合、微細化が進むことでメリットを得られるのはA/DコンバータやD/Aコンバータで、DC/DCコンバータなどは、その恩恵にはあやかれない。

「LT8614」 同期整流式降圧レギュレータ「LT8614」

EETJ 近年、アナログIC設計エンジニアの確保が難しいと聞きます。

Dobkin氏 リニアテクノロジーでは、大学を卒業したばかりの新入社員をエンジニアとして採用し、教育していく。5年ほどかけてアナログ技術を教え込んでいけば、優秀なアナログICエンジニアになる。入社したてでも、先輩のエンジニアの下で実際の製品開発に関わってもらう。製品を開発しながら、既存製品の中身を勉強してもらう。「アナログICを設計したい」という学生も、まだちゃんといる。学生が100人いれば95人は、GoogleなどIT系やコンピュータ関連の企業を目指しているのかもしれないが、ハードウェアに興味を持っている学生もいる。ただ、当社の長い歴史やよい評判がなかったとしたら、優秀な学生を確保するのは難しかっただろう。

EETJ ほぼ毎日のように新製品を発表していますが、ここ最近、好調な製品や目玉の製品を教えてください。

Dobkin氏 例えば、リニアレギュレータ「LT3080」*1)や、独自のアーキテクチャ「サイレント・スイッチャ」を搭載した同期整流式降圧レギュレータ*2)がある。サイレント・スイッチャによって、従来品に比べてEMIを10分の1に抑えることができるようになる。特に後者の方は、売り上げが順調に伸びている。新製品のアイデアの約8割は、顧客と直接話して、ニーズを聞くことから生まれている。残りの2割は当社のエンジニアが思い付いたものだ。

*1)1本の抵抗で出力電圧を設定できるリニアレギュレータ。出力電圧範囲は0〜36Vと広い。
*2)「LT8614」。CISPR25 クラス5に準拠した、超低EMIの製品である。

リニアテクノロジーのRobert C. Dobkin氏 リニアテクノロジーのRobert C. Dobkin氏。アナログIC関連の技術や話題なら、何にでも興味があるという。ちなみに、会社でも家でも開発プロジェクトについて考えることが多いというが、回路のアイデアについては、ぽんっと思い付くことが多いそうだ
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