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R&D投資の積み重ねが生んだハンドヘルドオシロ5種類の測定器を1つの筐体に(2/2 ページ)

» 2016年02月04日 09時30分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]
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CAT IV 600Vの絶縁性能

 同製品は、劣悪な環境下においての現場作業においても貢献する。筐体は、IP51保護等級をクリアし、粉じんや水滴がかかるような状況下での使用が可能。電気測定器の安全規格「IEC61010-1」で規定されているカテゴリー「CAT IV 600V」「CAT III 1000V」で定められた絶縁性能を満たしたことで、高電圧環境下での作業も可能にした。

 関野氏は、「ハンドヘルドオシロスコープでCAT IV 600Vまで対応したのは、まだ当社とFlukeの2社しかない。通常、回路同士は共通のグラウンドにつながっているが、当製品はそれぞれ浮いている状態(フローティング状態)に設計を工夫したことで、高電圧を測ることができる」と語る。さらに、全ての軍用規格に準拠した機械的負荷試験も合格し、軍用機器メンテナンスにも活用できるとしている。

上から見た「R&S Scope Rider」 (クリックで拡大) 出典:Rohde Schwarz

無線LANを搭載

 同製品は、micro SD カードに加えて、USBやイーサネットをサポートしているため、データの保存や転送を行える。無線LANも搭載し、容易に近づくことが困難な高電圧環境下でも、スマートフォンやタブレット端末から、全ての操作メニューをwebブラウザから見ることが可能だ。「無線LANを搭載している測定器は多くない。無線LAN自体が電波を出すため、測定に影響を及ぼす場合があるからだ。当製品はシールドをしっかり行い、かつ、500MHzまでの計測なので無線LANの影響を受けない」(関野氏)とする。

無線LANを搭載しているため、高電圧環境下などでは、スマホやタブレット端末からリモートコントロールで操作も可能である (クリックで拡大) 出典:Rohde Schwarz

売り上げの15%をR&Dに投資

 同製品に多くの機能を搭載できた理由として、関野氏は、専用のASIC/10ビットコンバーターを自社(ドイツ)で製造していることを1番に挙げる。「5年前にオシロスコープに参入すると決めたときに、他社との違いを出すために考えたのがASICだった。当社のデスクトップ型オシロスコープの波形更新速度は、100万回/秒。当時、そこまでの速度を実現できたのは当社しかないくらい、最先端の技術開発にこだわってきた」と語る。

 最先端の技術開発を実現できた理由として、関野氏は、毎年の売り上げ15%を研究開発(R&D)に投資していることを挙げる。「当社は株式を公開していないため、株主に影響を受けることがなく、その分製品に投資できている」(関野氏)とした。

自動車メーカーを中心に展開

 2チャンネルと4チャンネルモデル、ミックスドシグナル機能搭載モデルがあり、各モデルで周波数帯域60MHz/100MHz/200MHz/350MHz/500MHzから選択できる。本体価格は60MHzの2チャンネルモデルで、32万1000円(税別)である。関野氏は、「自動車メーカーや、ビル/工場のメンテナンス事業者を中心に拡販を進めていく」と語る。

 今後は、周波数を解析してノイズを見る「スペクトラム解析機能」や、異常が起こったときのみデータを記録する「ヒストリー機能」を追加していく予定だ。

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