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Qualcommにも真っ向勝負、手ごわい中国メーカー製品分解で探るアジアの新トレンド(2)(2/2 ページ)

» 2016年02月04日 11時30分 公開
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既に後継チップも

 ちなみに、世界で最も早い時期に、LTE Cat 4(下り速度150Mビット/秒)対応のチップを搭載したWi-Fiルーターを市場に投入したのはHuaweiだが、このチップはQualcomm製ではなく、HiSilicon製である。同ルーターは、日本国内でもSoftbank(当初は、旧イー・モバイル)から、2012年に「Pocket WiFi LTE GL04P」として発売され、話題となった。

 さらに、LTE Cat 4対応モデムを世界で初めて商用化したのはHiSiliconであった。HiSiliconはその後も成長を続け、今では、“Qualcommとほぼ同時期に、同レベルのチップセットを供給する”、トップメーカーの1つとなっている。

 Hi3718のCPUは、ARM 「Cortex-A9」を採用したデュアルコア構成で、動作周波数は1.6GHz、GPUにARM 「Mali-400 MP4」を採用している他、Video Format(H.264 1080 60フレーム/秒など各種)、SATA、HDMI、USBなどのインタフェースを備えたシステムチップである。Hi3718 は、監視カメラなどで幅広く使われている「Hi3716」の後継チップだ。両者の差はGPU性能で、Hi3716にはARMの「Mali-400 MP2」が使われている。

 実は、Hi3718の後継チップも既に市場に出回っている。同チップ「Hi3798」は、HiMediaのAndroid Media Player「Q5」に採用されていて、さらに進化を遂げている。Hi3798については、次回報告する予定だ。

 Hi3718は、基本性能(CPUやGPU、インタフェース)だけを見ればそのままローエンドもしくはミドルエンド仕様のスマートフォンのアプリケーションプロセッサにも使える。

 しかしHiSiliconは、Hi3718をスマートフォンのプラットフォームとしては活用していない。HiSiliconは、スマートフォン向けプラットフォームにおいては、モデムとアプリケーションプロセッサの1チップ化を進めているからだ。監視カメラとAndroid Media Playerでは、ともに外部(CMOSセンサーやネットワーク)から供給されるデータを画像処理するプロセッサなので、共通化できる。

64bitプロセッサが5米ドル?

 図3は、中国Transmartが提供するスティックタイプのAndroid Media Player「Draco H3」である。2015年に発売された製品で、価格は40米ドルだ。H.265で圧縮した4K動画を見ることができる。コストパフォーマンスに最も優れた、4K再生可能なAndroidスティックとして、評判が高い製品である。

Transmartの「Draco H3」 図3 Transmartの「Draco H3」(クリックで拡大)

 ここに搭載されているプロセッサは、中国Allwinner Technologyの「H3」である。Allwinner Technologyは2007年に創業を開始した、ファブレスのプロセッサメーカーだ。ARMコアを用いたメディアプロセッサの他、カーオーディオ、タブレット端末、ボードコンピュータなども提供していて、ターゲット市場を拡大しつつある。

 Allwinner Technologyは、CPUの64bit化、ローコスト化では、おそらく最も脅威となる会社だろう。若干古い話だが、同社は「2015 International CES」で新チップを発表し、64bitプロセッサを5米ドルで提供すると宣言しているからだ(図3の右下を参照)。

 中国のプロセッサメーカーは他にもRockchip、Spreadtrum Communications、Ingenic Semiconductor など大物がそろっている。これらの新興メーカーはどのように成長してきたのか、そして、どのようにチップ開発が可能になったのか――。今後はそれを報告していく予定である。

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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