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» 2016年02月22日 11時30分 UPDATE

この10年で起こったこと、次の10年で起こること(2):アジアの聯発科技が世界のMediaTekに化けるまで (1/2)

今や世界的なロジックチップメーカーとなったMediaTek(聯発科技/メディアテック)。そのMediaTekが山寨機(さんさいき)でアジアを席巻しながらも、スマホで出遅れ、再び巻き返して“世界のMediaTek”へと進化してきたこれまでを振り返っていこう。

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]
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 台湾MediaTek(聯発科技/メディアテック)は、2000年代に頭角を現し、2000年後半には日本でも研究され尽くされたファブレス半導体メーカーである。創業は1997年。その後の多くの半導体メーカーの追従をみたビジネスモデルを展開し、現在ではアジア(含む日本)地区ではNo.1のロジックチップメーカーになっている。

 テレビ、光ディスク機器(DVDやBlu-ray)、携帯電話機、スマートフォンなど向けではトップ級のシェアと実力を持っている。

 2000年代後半、山寨機(さんさいき)と呼ばれ、次々と生まれた中国の携帯電話機ではMediaTekのチップセットが数多く採用された。

tt160222_10y_N02_Fig001.jpg 図1 2000年代後半の山寨機のメイン基板と搭載チップセット (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図1は2000年代後半の山寨機(Apple・iPhoneの模倣品)の様子である。内部はほぼMediaTekのチップだけで構成されている。簡単なアプリケーションが実行できるCPU、2G(第2世代移動通信)を処理できるベースバンドプロセッサ、通信用のトランシーバー、電力制御用IC、Bluetoothなどが全てMediaTekの自前チップでそろっている。これらのチップセットはハードだけでなく、携帯電話を動作させるためのソフトウェアやアプリケーションまでもあらかじめバンドルされていて「ターンキー」モデルと呼ばれた。このターンキーモデルこそがMediaTekの2000年代の成長を支えたエンジンであった。ターンキーモデル(すなわちMediaTekのチップセットさえ手に入れれば、誰でも携帯電話を作ることができ、当時はターンキーさえ手にすれば「豆腐屋でも携帯電話を作れる」と言われた)は、その後中国のSpreadtrum Communicationsや台湾Mstar(現在はMediaTek)なども手掛け、アジア携帯電話機市場に広がっていった。

スマートフォンで後れを取る

 MediaTekは創業以来、約10年間にわたり成長を続けた。しかし2008年、2010年、2011年の3回、マイナス成長の苦杯を味わっている。上記のようなターンキーモデルは、携帯電話機という市場では有効であったが、2000年代の後半に登場したスマートフォン市場に完全に乗り遅れたことで苦杯をなめたのだ。MediaTekは、スマートフォンでの遅れを挽回するのに、以下の3つの点で若干の時間を要した。

  1. スマートフォン用のソフトウェア(ないしAndroidなどOSに対応した最新プロセッサ)を持っていなかった。(AndroidなどOSは最新のプロセッサへの対応に限られた)
  2. LTEなど高速データ通信技術のターンキーは持っていなかった。
  3. 欧米などスマートフォン市場の立ち上がり時期をけん引したユーザーを持っていなかった。

 それまでMediaTekがターンキーモデルで使ってきたCPUはARM7などのクラシックCPUだった。それに対しスマートフォンはCortex-AなどのハイエンドCPUを必要とした。

 通信はQualcommらがLTEモデルを続々と出荷するなかでMediaTekは3Gにとどまらざるを得なかった。NTTドコモからLTEを導入したのは2010年。2012年にはLTEの開発加速のためにDSPを得意とするスウェーデンCoresonic ABを買収している。

 ターンキーモデルで使われたMediaTekのチップセットは180nmなど2000年代後半時点でもレガシーとなっていたプロセステクノロジーであった。当時QualcommやSamsung Electronicsらは65nm、45nm化を進めておりプロセス世代では、180nm/130nm/90nmというステップがあったので、おおよそ4~5世代遅れていた。プロセス世代の差は微細化の遅れなので、搭載できる機能や性能差(周波数や電力)となっていた。

 安価なレガシープロセス、クラシックCPU……これらがスマートフォン市場の開花時期にMediaTekの成長の急激なブレーキになってしまった。そしてスマートフォンの市場拡大とともに山寨機は一気に消えていく。

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