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GoogleやAppleは車載市場の“トリガー役”にルネサス欧州法人の車載部門責任者が語る(2/3 ページ)

» 2016年03月18日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

GoogleやAppleは、車載市場の“トリガー”になる可能性も

REEのElsner氏 Renesas Electronics EuropeのGünther Elsner氏

 Elsner氏は、米国、日本、欧州における現在の車載市場をどのように考えているのだろうか。同氏は「米国では、GoogleやAppleといった、これまで車載市場には参入していなかったメーカーが、積極的に自動運転車の開発に取り組み始めている。これは、欧州の車載市場とは大きく異なるところだ。欧州には、そういった“非自動車メーカー”の台頭はない。ただし、自動運転車の実現に向かっているという、市場の方向性は欧州も同じだと感じている」と語る。米運輸省道路交通安全局や日本の国土交通省などは、自動運転の度合いに合わせてレベルを1〜4まで設定している。「このレベルに沿って1歩ずつ技術革新を進めていっている。R-Carの第4世代では、自動運転技術をさらに1歩進めるような機能が搭載される見込みだ」(Elsner氏)。第4世代のR-Carについてルネサスは、人工知能(AI)に対応したSoCを目指す方針を示している。

 Elsner氏は、自動運転車の実現の見通しについて、「10年後には、高速道路を走行し、レーンの変更ができるような自動運転車が登場するかもしれない。だが、例えば人間が後部座席に座り、『自宅まで』と言うと何の問題もなく自宅まで運んでくれるような完全な自動運転車が実現するには、まだまだ時間がかかるだろう」と述べた。同氏は「ただし、自動運転技術は、自動車の進化を促す要因としては非常に重要だ。安全性や快適性も向上するだろう。ドイツ政府は、ADASなどの導入により命にかかわる自動車事故が明らかに減少したという見解を発表している」と続け、自動車に搭載されるエレクトロニクス技術によって事故を減らせるという認識が広まっていることを示した。

 Elsner氏は、GoogleやAppleが車載市場に影響をもたらすかどうかについて、「新しいアイデアをもたらす“トリガー”の役目を果たすという意味では、影響はあるだろう。ただ、いわゆる一般的な自動車メーカーのように、“自動車を製造したい”というわけではないのではないか。個人的には、GoogleやAppleは、自分たちの技術で自動運転を実現できるかどうかを知りたいという気持ちが強いのではと感じる。いずれにしても、彼らが新しい考え方を自動車業界にもたらしているのは確か」と語った。

車載製品にも、「Synergy」のようなプラットフォームは必要か

 IoT機器向けのSynergyは、ARMコアのマイコンと、動作保証されたソフトウェアをワンストップで提供するものだ。Elsner氏は、Synergyのような自動車向けプラットフォームを検討していると話す。「Synergyのチームがどのように動いているのかを注視している。ただ、Synergyがターゲットにする業界と自動車業界は、製品の販売の仕方がまったく異なるものだ」(同氏)。Synergyでは、動作保証されたソフトウェアを提供したり、ソフトウェアライセンス取得をルネサスが代行したりすることで、IoT機器設計のハードルを下げ、ターゲットとなる顧客層を広げた。一方で、車載部品を販売する場合は、ある特定の顧客に少量を提供するというものだとElsner氏は話す。「いずれにしても、Synergyにかかわる動きを注意深く見守り、車載向けプラットフォームに生かせる要素を学びたいと思っている」(Elsner氏)。

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