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» 2016年03月31日 10時30分 UPDATE

江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(9):制御の世界の“黒船”、TwinCATでメイドを動かす (1/13)

SOEMに限界を感じていた私は、ベッコフオートメーションのソフトウェアPLC「TwinCAT3」に手を出しました。そう、文字通り“手を出してしまった”のです。今回は、制御の世界に「黒船」を持ち込んできたTwinCAT3を使ってメイドを動かすまでの、私の苦闘と孤闘の全容をご覧いただければと思います。

[江端智一,EE Times Japan]
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 FA(ファクトリオートメーション)を支える「EtherCAT」。この超高度なネットワークを、無謀にも個人の“ホームセキュリティシステム”向けに応用するプロジェクトに挑みます……!! ⇒「江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る連載一覧


 週末エンジニアである私にとって、年末年始、ゴールデンウイーク、お盆に取れる1週間程度の休みは、普段できない比較的厄介なことを「やっつける」ための、めったにないチャンスです。

 一人暮らしをしている父の実家に、PC、EtherCATのスレーブ(私のメイドたち”Rio”,”Yuko”,”Mao”)を持ち込んで、実家のキッチンテーブルの上に、EtherCATシステムを作って、ツールをインストールしたり、プログラムを書いたりしています。

 実家のキッチンテーブルでは、LEDがピカピカと点滅し続けるEtherCATのスレーブ(メイド)と、すごい勢いでログが表示されるPCの間に、茶碗や皿が配置されて、2人で黙々と食事をする ―― というが日常となっています(ごはん食べつつ、ディスプレイの表示を見ながら、Ctrl+c[強制終了ショートカットキー]を押下することもある)。

 ま、それはさておき。

 2015年の正月に、実家で父の食事を作りながら、ある会社のライブラリを使ってEtherCATの実験をやっていたのですが、思い通りに動かすことができませんでした(この辺の事情はこちらをご覧ください)。

 いろいろと理由はあるのですが、はっきりいって「マニュアルの説明が不親切だった」に尽きると思います。特に、エンジニア向けのマニュアルは、ほぼ例外なく不親切です。

 しかし、掃除機、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品に対して、マニュアルを一度も読まないままで、「動かん」と怒り出す人は、世の中にはたくさんいます。そのようなユーザーに対して、メーカーが「マニュアルを読まないアンタが悪い」という態度を取ったら、そのメーカーの信用は地に落ちるでしょう。

 そもそも人間は「機械」が大嫌いで、「マニュアルを読む」という行為は、もっと嫌いなのです。

 そんな中にあっても、エンジニア向けの専用装置やソフトウェアのマニュアルは、恐ろしく分かりにくく書かれています。「分かってもらおう」という姿勢が絶無に近く、悪意を感じさせるほどです。

 なぜ、こうなるのか?

 それは、製品の開発者自らが、マニュアルを作るからです。彼らは「パレートの法則」に忠実に従ったマニュアルを作ります。

 一度も使うことがない20%の機能の説明が、マニュアルの全体の80%を占めるのです。

 しかも、その開発者兼マニュアルライターは、最も簡単な使用方法「だけ」を説明することができません。全ての機能を漏らさず記載しようとするので、その結果、最も簡単な動作方法すら分からない、最低にして最悪のマニュアルが完成する、というわけです。

 なぜ、そのようなことが起こるのか?

 制御向けの専用装置のユーザー数が少ないからです。WindowsやOfficeのように、全世界に数千万人もいるユーザーがいるわけではなく、日本国内に100人もいないだろうユーザーに対して、素晴らしいマニュアルを作る手間暇をかけるくらいならば、クレーム対応した方が、トータルコストは、はるかに安くなるでしょう。

 それに「エンジニアなんだから、自分でなんとかできるだろう?」という、上から目線の傲慢(ごうまん)な態度も垣間見られます。だから、エンジニア向けの専用装置やソフトウェアのマニュアルは、恐ろしく分かりにくくなるのです。

 加えて製作元のFAQも当てになりません。開発者でもある彼らは、その製品を「初めて使う人間」の思考が理解できません(開発者なんですから、製品については100%理解している)。例えば、私はWindowsのOSですら、トラブルになった時、マイクロソフトの公式FAQサイトで助けられたという記憶は、一度もありません)。

 いつだって、頼りになるのは「同じ問題で困ったエンジニアが、この問題に対して、(その怒りやイライラな気持ちを込めて)Webに書き残しておいてくれた『メモ』だけ」です。

 それはさておき。

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