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高音質を追求したマスタークロック専用水晶発振ICスマホ搭載可能な小型SPXOで低位相雑音を実現(1/2 ページ)

新日本無線は、デジタルオーディオのマスタークロック用水晶発振器の位相雑音を抑えることのできる発振用IC「NJU6222」を開発した。

» 2016年04月14日 15時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

 新日本無線は、デジタルオーディオのマスタークロック用水晶発振器の位相雑音を抑えることのできる発振用IC「NJU6222」を開発した。SPXO(Simple Package Crystal Oscillator)向け発振用ICとして「世界最高水準の低位相雑音を実現した」(同社)とし、同ICを用いた発振器を用いることでデジタルオーディオの音質向上が実現できるという。

 デジタルオーディオのマスタークロックとは、デジタル信号をアナログ信号に変換するD-Aコンバーター(DAC)の動作用クロックのことを指す。このマスタークロックの精度が、DACの精度を大きく左右し、強いてはオーディオシステムの音質を左右する要素になっている*)。音質を向上させるには、マスタークロック用発振デバイスの位相雑音を抑えることが有効とされる。オーディオ信号のサンプリング周波数に応じたクロックのみを正確に発することが理想的で、この理想的なクロック以外の周波数成分である位相雑音を排除することが求められる。

*)参考記事:誤解していませんか!? クロックジッタの「真実」を解説

 スマートフォンなどモバイル機器や据え置き型オーディオ機器まで、幅広くオーディオ機能を持つ機器のマスタークロックとして使用される水晶発振器の位相雑音を低減するには、発振器を構成する水晶振動子と発振回路(発振用IC)、双方の特性を向上させることが有効であるが、「従来は、どちらかと言えば、水晶振動子の改良に重点が置かれた」とし、低位相雑音を重視したオーディオ特化型発振用ICはあまり存在していなかった。

オーディオに特化することで

 高級オーディオ向けオペアンプなどの音質重視型半導体製品ブランド「MUSES(ミューズ)」を展開し、オーディオ向け半導体に注力する新日本無線では、発振用ICのオーディオ特化型製品を企画し、開発に着手。このほど、NJU6222を製品化し、主に水晶発振器メーカーに対して、サンプル出荷を開始した。

 NJU6222を使用し、一般的な公称周波数49.152MHzのATカット水晶振動子と組み合わせた電源電圧1.8VのSPXOの位相雑音特性は、1kHzオフセット時−158dBc/Hz、電源電圧3.3VのSPXOでは、同−162dBc/Hzを実現し、「これまでオーディオ向けに展開されているSPXOに比べ、位相雑音を50分の1以下に抑えられる」とする。

NJU6222を用いたSPXOの位相雑音特性。左が電源電圧1.8V時、右が同3.3V時。なお、NJU6222の動作電源電圧範囲は1.62〜3.63Vとなっている (クリックで拡大) 出典:新日本無線

 RMSジッタについても、電源電圧1.8Vの49.152MHz SPXOで、0.13ピコ秒(12kHz〜20MHz範囲)、同3.3Vの49.152MHz SPXOで0.05ピコ秒(同)と、「従来SPXOの3分の1程度のRMSジッタを実現できる」とする。

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