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40nm世代マイコンの出荷も開始――積極的な新製品攻勢を仕掛けるCypressの車載半導体戦略「競合の28nm世代に匹敵するフラッシュ技術」

Cypress(サイプレス)は、車載半導体事業を注力事業に位置付け、積極的な技術/製品開発を展開している。2016年1月には、車載マイコンでは最先端となる40nmプロセスを採用した製品の出荷をスタートさせた。注目を集める40nm世代車載マイコンや今後の車載向け製品開発戦略について、サイプレス自動車事業本部自動車事業部長を務める赤坂伸彦氏に聞いた。

» 2016年04月28日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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 2015年3月に、Spansion(スパンション)とCypress(サイプレス)が統合し発足した新生Cypress。メモリ、マイコン、アナログICを扱うより総合的な半導体メーカーとして、事業規模を拡大させつつある。なかでも、車載向け半導体事業は、成長の柱として位置付け、積極的な投資を展開している。

新生Cypressは自動車に対し、広範な製品群を提供している

 車載マイコン製品群をはじめ、フラッシュ、SRAM、FRAMなどのメモリ、プログラマブルSoC、アナログICと、他に類をみないほどの広範な車載向け製品ポートフォリオがそろう。こうした充実の製品群をさらに強化し、世界車載半導体市場での存在感を高めようとしている。

 2016年1月には、車載マイコンでは最先端プロセス世代となる40nmプロセスを採用した車載マイコンを開始するなど、新生Cypressとして一段と車載半導体開発を加速させつつある。

 サイプレスで、車載向けマイコン事業を担当する自動車事業本部自動車事業部長の赤坂伸彦氏に、注目を集める40nm世代車載マイコン製品や、今後のCypressの車載半導体製品戦略などについて聞いた。


世界シェア3位のサプライヤー

――Cypress/Spansionの統合、新生Cypressの発足から1年が経過しました。

赤坂伸彦氏 統合により、車載半導体の製品ポートフォリオが大幅に広がりました。マイコン、メモリ、プログラマブルSoC(PSoC)、パワーマネジメントなどのアナログICといった製品をワンストップで提供できる体制になりました。事業規模自体も、車載マイコン&メモリ市場において、世界シェア3位のサプライヤーとなり、より強い競争力を発揮できるようになりました。

――統合による相乗効果は発揮できていますか。

赤坂氏 はい。製品ポートフォリオ/事業規模の拡大に伴う競争力が増しただけでなく、互いの製品開発および品質管理ノウハウを融合させることで、より高い設計・製造品質の車載半導体を実現できています。例えば、これまでどちらかと言えば民生機器向け中心でしたPSoCやTrueTouch(=静電容量式タッチボタンコントローラIC)といった製品の車載品質対応製品が増え、車載情報機器/車載空調(HVAC)用途を中心に採用も伸びてきています。

Cypressの車載製品ポートフォリオ

競合の28nmに匹敵するテクノロジー

――新製品開発も順調のようです。

赤坂氏 2016年1月に、Cypressとして初めて40nmプロセスを用いた車載マイコン「Traveo」のサンプル出荷を開始することができました。40nm Traveoは、Spansion時代から計画、開発してきた製品です。Cypressとなった後も、これまでの開発ロードマップを維持し、車載半導体領域への積極的な投資を続ける中で、40nm Traveoも製品化に至りました。40nm Traveo以外にも、車載半導体製品ラインアップは今後も強化し続けます。

――40nm世代のTraveoについて詳しく教えてください。

赤坂氏 Traveoファミリーは、CPUコアにARM Cortex-R5を採用した車載マイコンファミリーで、2014年に90nmプロセスを用いたEV(電気自動車)/HEV(ハイブリッド車)向けの第1弾製品を出荷しました。その後、55nmプロセスを用いてクラスタ向け製品を中心にラインアップし、そして、このほど、40nmプロセスの採用に至りました。

駆動用モーターやメータークラスタ/ボディー/ゲートウェイ向けに展開してきた「Traveoファミリー」のラインアップ。右側に示されている2シリーズが40nmプロセスで製造する新製品

 40nm世代品の大きな特長の1つに、車載マイコンの重要な要素である内蔵フラッシュメモリが優れている点が挙げられます。先ほどもお話した通り、40nm世代品はSpansion時代から企画、開発してきた製品であり、NOR型フラッシュメモリのトップベンダーとしての技術、具体的には、実績あるSpansion独自のチャージトラップ技術「MirrorBit」をベースに開発しています。それにより、最大150℃のジャンクション温度、−40〜+125℃の動作温度範囲という車載グレードの信頼性を実現しながら、業界最小クラスのメモリセルサイズを実現したと自負しています。恐らく、競合メーカーの28nm世代車載マイコンの内蔵フラッシュメモリセルと比べても、ほとんど変わらないでしょう。

40nm世代エンベデットチャージトラップ(eCT)フラッシュ技術

 車載マイコンの微細化は、より大容量フラッシュを内蔵してほしいという市場ニーズに応える面が強いです。そうした中で、少なくとも8Mバイト以上のフラッシュを40nm世代で内蔵できるCypressのエンベデットチャージトラップ(eCT)フラッシュ技術は、高い競争力を備えているといえます。

 この40nm eCT技術を使った最初の製品として、小型TFT液晶パネルを搭載するクラスタ向け製品「S6J331X/S6J332X/S6J333X/S6J334X」の4シリーズと、車載ゲートウェイ向けの「S6J335X」の1シリーズのサンプル出荷を開始しました。

あらゆるクラスタのカテゴリーをサポート

――クラスタ向け製品は、微細プロセス導入第1弾ですが、大型液晶搭載のハイエンドクラスタではなく、ミドル/ローエンド向けの小型液晶搭載クラスタ向けとして製品化されました。その狙いは?

赤坂氏 当社では、クラスタを5つのカテゴリーに分類し、それぞれに応じたマイコンを展開する方針を採っています。5つのカテゴリーとは、機械式メーターを一切搭載しない「フルTFT液晶クラスタ」、3Dグラフィックス表示に対応する「大型TFT搭載クラスタ」、7型パネルまでの「中型TFT搭載クラスタ」、4.2型パネルまでの「小型TFT搭載クラスタ」、そしてセグメント表示に特化した「ドットマトリックス液晶搭載クラスタ」の5つです。

Traveoファミリーがサポートするクラスタカテゴリー

 これまで55nm世代Traveoでは、大型TFT搭載クラスタ、中型TFT搭載クラスタ、そしてドットマトリックス液晶搭載クラスタと3つのカテゴリーに向けた製品をラインアップしてきました。そして、残る小型TFT搭載クラスタカテゴリーの開発に着手した段階で、40nm eCT技術が構築できたため、結果的に、小型TFT搭載クラスタ向けが40nm世代の第1弾製品となったわけです。

 ちなみに、フルTFT液晶クラスタについては、マイコンとは別にグラフィックス専用LSIを必要とする市場であり、Cypressでは、グラフィックス機能を搭載しないドットマトリックス液晶搭載クラスタ向けマイコンをグラフィックス専用LSIのコンパニオンマイコンとして提案し、サポートしています。

40nm eCT技術で将来ニーズに対応

――S6J331X/S6J332X/S6J333X/S6J334Xシリーズは、小型TFT搭載クラスタ向けですが、かなり性能、機能が充実しているようですね。

赤坂氏 はい、40nmプロセスの利点を生かし、将来的なニーズを取り込みました。性能面では、動作周波数は最大240MHzと2Dディスプレイコントローラ搭載クラスタマイコンとして最速クラスで、最大4Mバイトの大容量フラッシュを搭載しています。インタフェースもEthernetAVB、MOSTなど基本的なものは全てカバーし、CAN FDについては6チャンネル対応となっています。また外部メモリとの接続用インタフェースとしては、Cypressが開発し、クラスタ用途で普及が進んでいる「HyperBus」にも対応しています。

「S6J331x/S6J332x/S6J333x/S6J334xシリーズ」の機能イメージ

 今後は、小型TFT搭載クラスタ以外のカテゴリーでも、こうした高い性能、多くのメモリ/ペリフェラルを搭載できる40nmプロセス技術を使用した最新クラスタマイコンを投入していく予定です。

車載ゲートウェイに対し、いち早く専用マイコンも

――同じく40nm世代第1弾製品である車載ゲートウェイ向けのS6J335Xについて教えてください。

赤坂氏 さまざまな車載ネットワークを多用するようになり、これまで高級車やバス・トラックのような大型車で見られた車載ネットワーク制御に特化した「ゲートウェイシステム」を、大衆車でも採用する動きが出始めています。そうしたニーズに対応して、ゲートウェイ専用のマイコンとしてS6J335Xを開発しました。

 CAN FD8チャンネルをはじめ、LIN12チャンネル、EthernetAVB、MOSTなど、他には見当たらない豊富な車載ネットワークインタフェースを搭載しています。

多様化する複雑な車載ネットワークをサポートした「S6J335xシリーズ」

 内蔵フラッシュも最大4Mバイトあり、ゲートウェイ向けながらHyperBusにも対応させています。HyperBusにより、ファームウェアを無線通信経由で更新するFOTA(Firmware Over-The-Air)を外付けメモリでも実現できるようになるためです。他にもASIL-Bクラスのセキュリティ/機能安全機能も備え、これからの車載ゲートウェイを実現する専用マイコンに仕上がっています。

――車載ネットワークとしては、新たにCXPIも登場してきました。

赤坂氏 S6J335Xの製品化に合せて、CXPIのトランシーバーIC「S6BT11Xシリーズ」も製品化しました。S6J335Xと組み合わせて使用することで、CXPIに対応したゲートウェイを構築することも可能です。

 CXPIに限らず、Cypressは今後も、最新の車載ネットワーク規格に対応したトランシーバーやトランシーバー内蔵マイコンを業界に先駆けて提供していく方針です。

車載アナログICも継続的に強化中

――車載マイコン、車載メモリの製品展開が目立ちますが、車載向けアナログICの展開も継続されるのですか。

赤坂氏 これまで通り、継続します。特に、パワーマネジメント領域は、微細プロセスの車載マイコンが登場するなど、より高度な技術が必要とされています。そこで、最新のマイコンを使用した場合にでも、手軽に、小型、高効率な電源を実現できるパワーマネジメントICを展開していきます。

 例えば、最新パワーマネジメントIC「S6BP50Xファミリー」は、40nm世代TraveoベースのECUの電源に適したスペック仕様となっています。2.5〜42Vという広い範囲の入力電圧から、5V系、3.3V系、そして1.11Vないし1.2V系の3系統の電圧を1チップで高効率に出力できるようになっています。

「Traveo」ファミリに最適な電源IC「S6BP50x」

 車載アナログ製品としては、パワーマネジメントIC以外にも、LEDドライバなどの展開を予定しています。

あらゆる車載マイコンを

――今後のCypressの車載半導体製品開発方針をお聞かせください。

赤坂氏 マイコン、メモリ、アナログICの強化を継続していきます。

 マイコンについては、現状、世界シェア40%程度とみているクラスタ向けマイコンの強化を続け、シェア50%超を実現したいと考えています。

 クラスタ向け以外にも、ゲートウェイ、EV/HEV用モーター制御など、新たな自動車市場ニーズに対応するマイコン製品の展開を40nm eCT技術を駆使ししながら積極的に進め、Traveoのラインアップ強化する予定です。

 さらにCypressは、16ビット/32ビットの独自コアを採用した「F2MC」「FR」ファミリーも展開しており、これらの後継となる新しい製品ファミリーの提供も検討しています。当社は、ARM Cortex-R4を採用した「FCR4」ファミリーを皮切りに、Cortex-R5搭載のTraveoと、業界に先駆け、ARMコア搭載マイコンを車載用途に展開し、実績を挙げてきました。「F2MC」や「FR」の後継製品でも、ARMコアの採用を1つの選択肢として開発を進めていくことになるでしょう。

 いずれにしろ、PSoCを含め、Cypressはより幅広い用途に対応する車載マイコン製品ラインアップを構築していきます。


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提供:日本サイプレス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月3日

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