特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
特集
» 2016年05月10日 11時30分 UPDATE

「GoogleやFacebookに勝つのは厳しい」:日本は「子どもの人工知能」で世界と戦え (1/3)

人工知能(AI)に関わる研究者らは2016年4月、東京都内で「これからの技術開発の方向」についてパネルディスカッションを行った。本記事では、その議論の一部を紹介する。

[庄司智昭,EE Times Japan]

「稼ぐ仕組みを作ることが重要」

 総務省、文部科学省、経済産業省、科学技術振興機構(JST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年4月、「第1回 次世代の人工知能技術に関する合同シンポジウム」を都内で開催した。パネルディスカッションでは、「これからのAI技術開発の方向」と題して、人工知能(AI)に関わる研究者が議論を交わした。

 コーディネーターを務めたのは、ヤフーでチーフストラテジーオフィサー(CSO)を務める安宅和人氏。パネリストには、以下の6人が登壇している。

  • 松尾豊氏(産業技術総合研究所 人工知能研究センター(AIRC)企画チーム長/東京大学 大学院工学系研究科 特任准教授)
  • 宮尾祐介氏(情報システム研究機構 国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系准教授)
  • 鳥澤健太郎氏(情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所 データ駆動知能システム研究センター センター長)
  • 柳田敏雄氏(情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター(CiNet) センター長)
  • 杉山将氏氏(理化学研究所 革新知能統合研究センター センター長内定者)
  • 辻井 潤一氏(産業技術総合研究所 人工知能研究センター(AIRC) センター長)

 本記事では、松尾氏が提案した“子どもの人工知能”についての議論を紹介する。

パネルディスカッションの様子 (クリックで拡大)

 松尾氏によると、AIに関する日本政府の取り組みは活発となり、予算は数十億円規模に及ぶ。一方で、米国のAI関連予算の規模は数兆円であり、桁が違う。この違いが生まれたのは、「直近10〜20年、技術をベースとして産業化し、そこで得られた利益を再投資する循環を作ったところが勝つことがはっきりとした」(松尾氏)と語る。

 Googleは2004年にIPO(株式公開)、2016年2月には時価総額69兆円でAppleを抜き世界首位となった。Facebookの時価総額は30兆円を超し、設立約10年でトヨタ自動車を抜いている。つまり、国の予算はシードマネーにすぎず、シードマネーをもとに“稼ぐ仕組み”を作らなければ、GoogleやFacebookなどに勝つことはできないとする。

IoTやビッグデータで勝つのは難しい

 そこで、松尾氏が日本にとって戦略的なチャンスと掲げるのが子どもの人工知能である。大人の人工知能がIoTやビッグデータなど情報技術が重要な分野を指すのに対して、子どもの人工知能はディープラーニング技術を指すという。ディープラーニングの研究が進んだことによって、画像や映像の認識が初めて可能となった。

 認識技術は、強化学習と結び付けることでロボットや機械が上手に動くことができる“運動能力の向上”につながる。また、運動能力の向上だけでなく、将来的には“言葉の意味理解”も実現できると松尾氏は考えており、ディープラーニングによる認識精度の向上によって、今までの人工知能研究がもう1度再構築されるとする。

 子どもの人工知能は実世界に近く、農業や介護、防災など日本が抱える社会課題に適用される。これらの社会課題は人手が足りておらず、人工知能を搭載したロボットや機械の助けが必要不可欠だ。日本が他国と比べて技術開発のニーズが高い分野なのだ。

松尾氏が提案する「子どもの人工知能に投資すべき」の概要 (クリックで拡大) 出典:松尾豊氏

 「もちろん、IoTやビッグデータなどを指す“大人の人工知能”も大事だ。しかし、日本にとって、戦略的なチャンスにすることは厳しいと考える。どうやっても、GoogleやFacebookに勝てないからだ。理由はシンプルで、英語圏じゃないためユーザーとデータの数が圧倒的に足りない。一方で、子どもの人工知能は実世界に近く、日本で技術開発のニーズが高い分野のため、世界と戦える領域かもしれない」(松尾氏)

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

All material on this site Copyright © 2005 - 2017 ITmedia Inc. All rights reserved.
This site contains articles under license from UBM Electronics, a division of United Business Media LLC.