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» 2016年05月31日 13時30分 UPDATE

強磁性や超伝導の物性を持つ量子デバイスに道:遷移金属酸化物で量子ホール効果の観測に成功 (1/3)

理化学研究所などの研究グループは2016年5月、遷移金属酸化物であるチタン酸ストロンチウムの単結晶薄膜を用いた2次元電子構造で量子ホール効果の観察に成功したと発表した。

[竹本達哉,EE Times Japan]

 理化学研究所、東京大学、東北大学の共同研究グループは2016年5月、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の高品質単結晶薄膜を作製し、電子を平面上に閉じ込めた2次元電子構造において量子ホール効果の観察に成功したと発表した。2次元電子と強磁性や超伝導とが融合した新しい物性の開拓につながる成果とし、エネルギーをほとんど使用しない論理回路やメモリ応用へと発展する可能性があるという。

GaAsやグラフェンなどに限られたが

 量子ホール効果とは、通常はミクロな世界だけで発現する量子効果が、特定の条件を満たすことで巨視的なスケールで生じる現象である。量子ホール効果は、高い移動度を示す2次元電子においてのみ実現するため、電子相関(電子同士の反発力)の弱く移動度の高いガリウムヒ素(GaAs)系化合物半導体やグラフェンなどの限られた材料でのみ観察されていた。

 今回、共同研究グループが量子ホール効果を観察したチタン酸ストロンチウムなどの遷移金属酸化物は、強い電子相関を持つため、超伝導や強磁性など多彩な物性を示す。遷移金属酸化物の電子相関は、その物性を支配するd軌道由来の電子(d電子)が強い電子相関を持つためだ。仮に、このd電子を2次元に閉じ込め、量子ホール効果を実現すれば、新しい二次元電子量子物性の開拓につながるとされてきた。

 そうした中で、チタン酸ストロンチウムは、電子を添加(ドープ)すると、伝導電子がd電子でありながら例外的に移動度が高くなるため、量子ホール効果の実現を目指した2次元電子構造の作製が試みられてきたが、量子ホール効果が発現する条件である「低電子密度で高移動度」を同時に満たすことができていなかった。

ガスソース分子エピタキシー装置を開発

 これに対し、共同研究グループは、純度の高い原料を用い、結晶性の高い遷移金属酸化物薄膜を作製できる「ガスソース分子エピタキシー(MBE)装置」を開発。このMBE装置を用いて高品質な量子井戸構造である「デルタドープSrTiO3構想」を作製。整数量子ホール効果を観察した。

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